- Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105069926
作品紹介・あらすじ
あなたに似たどうぶつがきっといます。『ハリネズミの願い』の作家による幻の名作完全版! ブナの樹の上に暮らす忘れっぽくて気のいいリス。知っていることが多すぎて、頭の重みに耐えかねているアリ。始終リスを訪ねてきてはあちこち壊す夢みがちなゾウ。思いとどまってばかりのイカ。チューチュー鳴くことにしたライオン。……不器用で大まじめ、悩めるどうぶつたちが語りだす、テレヘン・ワールドへようこそ!
感想・レビュー・書評
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確かに、51編のみんな 読んで幸せ イラスト眺めて幸せ になれました♪ とりわけアリとリスの交流が気持ちいい。さすがにオランダの作家なので出てくる生き物が豊富ですねぇ、中でもしきりに木から落ちる象は微笑ましい。そして大人だからこそ受け止め方が多分人それぞれでしょうね 笑!大人こそ読んだほうが良いかも知れない童話です。
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原題『ほんとんどみんなひっくり返れたーBijna iedereen kon omvallen』のとおりの、〈反転の物語〉。
ゾウが空を飛び、ハリネズミが宙に浮き、アリは地面に突っ伏して、ライオンがチューチューと鳴き、カメが吠え、イカが涙し、すべてのどうぶつたちが、空に向かって落ちたりする。
まさにやりたい放題のメルヘン童話‥‥
と思う人も多いかもしれないけれど、
子どもにとっては簡単すぎて、大人にとっては難しすぎる、内容の数々でした。
何というか、〈読み方〉〈考え方〉を試されるような作品。
例えば、ゾウ。
何トンもの重量のあるゾウが空に飛べる訳がない。
けれど、飛べてしまうのには、やはり理由があるようで、頭の中がすっからかんのゾウは、普段から、物事をよく考えて行動するアリとは真反対に、考えるより先に手が動くタイプ。
大木に登っては、木のてっぺんから落ちて、たんこぶを作り痛がっているのが常のゾウですが、そんなゾウとは反対に、アリは、〈知っていること〉が多すぎて、頭が重くなってしまい、動けなくなってしまいます。
体重のような質量ではなく、考えたり、思ったりすることでも身体が重くなったり、軽くなったりするのは、程度の差こそあれ、私たちにも十分あり得る話。
比喩的に〈頭が硬い〉というときに、頭皮が硬いのではなくて〈型式ばった、考え方の柔軟性がない〉というように使われますよね。
それと同じように、物事を時には額面通りに受け取ったり、斜めからみたりと、柔らかな視点から51もの短編によって、構成されています。
そのなかでもいちばん好きな編を紹介させてください。
〝「今晩をとっとこうと思うんだけど」アリが言った。「いいかな?」p83〟
いつものようにアリとリスが、二人で夜ご飯を食べているときに、ふとアリが言います。
どうやらアリは、〈今晩〉や〈ツグミの誕生日〉〈音楽〉〈ハチミツの味〉などもとっておける、箱を持っているらしいのです。
その晩、アリが寝ていると、急に箱の蓋が開いて、古い誕生日にゾウと踊り、足を踏まれているシーンが、急に飛び出してきてしまう。
という内容です。
わたしたち人間が、折に触れて、アルバムを見返したり、卒業文集を読み返したり、手紙を読み返したり、写真をみたりするのと同じように。
ときには、いい思い出も、嫌な思い出も、ふと思い出したりします。自分の意志とは、無関係に。
まるで私たちにとっての記憶みたいです。
また、どうぶつたちは、それぞれ〈願い〉や〈悩み〉を抱えていて、健気に生きています。
自分の個性はなんなのだろう、と悩むカメ。
どうしても浮いてみたくて、ついに宙に浮かべたハリネズミ。
旅に出たいのだけど、大親友のリスが、寂しがるので、なかなか旅立てないアリ。
友達を探しているのだけれど、海底に沈んだ桶の中から、助けを呼べず、いつも思いとどまっているイカ。
ひっくり返るのが夢なのに、どうしても片方の足が言うことを聞かない、と悲しむサギ。
どちらが高く跳べるかを競い合う、カエルとキリギリス。そのマウントの取り合いに巻き込まれるカタツムリ。
一度でも、ひたひたと波打つのが、いちばんの願いのタニシ。
明かりがつかなくなるのが心配で堪らないホタルと、世界から明かりが消えてほしいと願うミミズ。
自分の鳴き声が恐ろしくなって、チューチューと鳴くようになったライオン。
自分が変だと気にして、リスと入れ替わろうとするタコ。
固すぎるケーキを作ってしまったがために、誰にも誕生日を祝ってもらえなかったサイ。
ハエに巣の穴の秘密を誰にも言わない約束を破られて落ち込むクモ。
寝てれないほど疲れて、泥の中に沈み込んで行ってしまったカブトムシ。
夏になると冬が待ち遠しく、冬が来ると夏が待ち遠しいコオロギ。
どうぶつたちが、日々暮らして、生きていくなかで、ぶつかる問題や悩みが、他人事ではないように思えてきます。
すぐに答えの出る悩みもあれば、考えれば考えるほど、深みにはまってしまう問題もある。
読む人にとっては、他人事ではないお話に、出会えるかもしれません。
頭が凝り固まった私は、3週間と読解に時間がかかってしまいましたが。。
〝「ほんものっていったいなんだろうね。いろんな解釈があるとぼくはいつも思っているけど‥‥」〟
ゾウのこの言葉をヒントに、自分だけの読み方を探せる一冊です。
読んでいるとき、読み終えたあとの、この温かい気持ち。
心にリスとアリ、どうぶつたちが住み着くようなお話。
ぜひ枕元に置いておいて欲しい一冊でした。
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さまざまな悩みを抱える動物たちの短いお話51篇。誕生日や夜、太陽を箱にしまったり、みんなで空に落ちたり、知っていることが多すぎて頭が重くなったり。哲学的だったりシュールだったりもするけれどみんな仲良く暮らしている。
それぞれの悩みは他愛のないようにみえて、自分の悩みと似ている。
あとがきをみると、もっとたくさんお話があるらしいので他のお話も読みたい。 -
動物たちの不思議な日常。
ハッキリ言って、全く分からない。
リスとアリの会話は可愛い。
面白いとは思わないけど、和む。 -
「ハリネズミの願い」と同じ作者、翻訳家の本。
こちらのほうが、楽な気持ちで読めます。
全部で51章。
スキマ時間に、適当に開いたページを読む、という読み方でもいいかと思います。 -
短い短い、動物たちの日常の詰め合わせ。ひっくり返ることができるか真剣に話し合ったり、く、しかない手紙を書いたり、それにお返事を書いたり、何とかしてはちみつを食べようとしたりします。何かの教訓が得られるとかではないけれど、どんな些事に対しても真剣に向き合う動物たちの日常は読み応えたっぷりです。
きげんのいいリス、というあまりに素晴らしい邦題。(現代は直訳すると「ほとんどみんなひっくり返れた」だそうで、このセンスにも感動。)
ジャンル的には童話ということになろうと思います。童話って、面白いですよね。大人が読んでも一層。
本屋大賞に翻訳部門なんかあるんだぁ、と興味を持って読んでみました。非常に幸せな読書体験でした。