NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業

  • 新潮社
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本棚登録 : 478
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105071219

作品紹介・あらすじ

動画配信で世界一位! アマゾン、グーグルら巨大IT勢を脅かす最強王者の全貌。世界中のコンテンツを買い漁り、巨額を投じたオリジナル作品で大ヒットを放ち続けるネットフリックス。彼らはなぜ世界の覇者になりえたのか。テクノロジーとビッグデータを信じ、過酷な競争文化で急成長を続けるテック企業。その知られざる創業秘話から、大胆な業態転換をへて頂点に上り詰めるまでの壮大な物語を初めて描く。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカのベンチャーの成功譚を本にしたものには、とても面白いものが多い。ナイキの創業を描いた『SHOE DOG』、Google Mapの元となったキーホール社の創業とGoogleによる買収後の成長を追った『Never Lost Again』、フェイスブックの創業を描き映画化もされた『フェイスブック 若き天才の野望』。いずれも手に汗を握る展開で、数多くの関係者への熱意溢れた取材に裏打ちされたストーリーが自分を含めた読者の気持ちを捉える。

    本書の著者も、情熱と野望をもっており、この本を書くためにロイターの職を辞し、フリーのライターとして数多くの関係者から貴重な話を聞き集めてこの本を上梓した。すでにロイターの記者時代からネットフリックスおよび業界の興亡について取材を重ねており、面白いものになるという確信はあったであろうし、捧げることができる情熱と成功したらそれなりのリターンがあるという目論見があったのだろう。それでも、フリーになって本書の構想を進めるとき、極度の不安で眠れぬ夜を過ごすことが多々あったと告白する。日本でここまで自分の時間を捧げて仕上げるベンチャー成功譚を描いた本が少ないのは、この種の作品に対するリターンがアメリカと比べて少ないことにもその理由はあるだろう。おそらく、LINEでも、楽天でも、DeNAでも、サイバーエージェントでも、同じように胸に迫るストーリーを紡ぐことが可能なはずだ。もしかしたら、探せばあるのかもしれないが、目に入ってくることは少ない(面白い本があるのは孫さんのソフトバンクの物語くらい)。

    内容であるが、本書で物語は、時系列に沿って語られていく。各章のタイトルがすべて過去の名画のタイトルにしてあるのはお洒落。語られる物語は、ネットフリックスの物語であるとともに、ライバルであるブロックバスターの物語でもある。ヘイスティングはカリスマ経営者として知られているが、本書では決して無謬な名経営者として描かれているわけではない。その弱みや、ここまでくる中での社内、社外での大きな失敗も含まれる。特に先を急ぎすぎたクイックスターでの失敗は、他人の言うことを聞かずに進めた傲慢でありえない失敗として描かれている。

    そして何より、ヘイスティングスは決して本書の主役でもない。黎明期を支え、そして追い出されるようにして会社を去った共同創業者のマーク・ランドルフとそのチーム。そして、何といっても最大のライバル、ブロックバスターのアンティオコとエヴァンジェリスト。彼らこそが主役と呼んでよい存在感を示している。

    時系列に並んでいること、ライバルも含めてそれぞれのキャラが立っていること、わかりやすい勝者と敗者があること、などから、すぐにでも映画化ができそうな内容である。ぜひ、ネットフリックスで映画化してほしい...、無理か。いや、これでオリジナル映画を作る気概を見せてほしい。きっと、ネットフリックスのデータもこれは売れるという結果を出すはずだ。

    ある日の何ということもないはずであった取締役会での役員報酬の問題から始まったアンティオコの、ここぞというタイミングでのブロックバスターCEO辞職。乾坤一擲の捨て身の反撃となった店舗とオンラインDVDレンタルを統合したトータルアクセスが功を奏してネットフリックスを追い詰めていた、まさにその時のことであった。そしてブロックバスターの決定的な敗因ともいえるキーズのCEO就任。彼は実店舗に拘り、顧客は来店して映画をUSBでダウンロードすることになるという今となれば眩暈がするようなビジョンを放ったセブンイレブン出身でデジタル音痴なキーズ。対して、ブロックバスターの脅威が薄れる中、DVDレンタルからストリーミングサービスの未来に賭けるネットフリックス。裏では悪役が似合う投資家カール・アイカーンが暗躍しており、アンティオコとアイカーンへの確執がこの一件につながった。ネットフリックスの成功の裏にも大きな敵失という幸運があった(というのが、著者のストーリーだ)。ストリーミングサービスの開始にあたってコンテンツを供給する映画会社がネットフリックスのことを見くびったことも幸運であった。

    去り行くアンティオコを前にして、苦労を共してきたブロックバスター社ナンバー2のシェファードはあふれくる涙をぬぐうために送別会の輪から離れて自分のオフィスへ引き返す。シェファードは、そのときにアンティオコと撮った携帯電話の写真を待ち受け画面に使ったという。何とも絵になるシーン。そしてその後キーズが来た最初の研修会の内容の古色蒼然さにショックを受けてシェファードを含む古参幹部は持ち株を売り、あまつさえその資金でネットフリック株を購入する(インサイダー取引では?)。そして事態は予想されたように、もしくはその予想を超えてブロックバスターにとって悪い方向に転がる。DVDレンタルから始まった仁義なき戦いは、ブロックバスターの破産を持って終わる。

    そしてDVDレンタルからストリーミングへ時代は移る。TVでネットフリックスを見るために開発されたROKUのプロダクトとしての完成度が非常にその助けになったのは間違いない。STB開発という近い仕事をしていた関係からするとROKUは本当に素晴らしいプロダクトとサービスだ。
    また、ストリーミングサービスの提供により、映画鑑賞中の顧客行動を把握することができるようになり、顧客が何を求めているのかをリアルタイムに把握することができるようになったことが、競争相手に対するサービス優位性を構築できることに気づき、それを最大限活用するように動いたことも大きかった。

    もし、この本でネットフリックスという会社に興味を持ったのであれば、ネットフリックスの中長期ビジョン「Long Term View」を読むことをお勧めする。
    https://www.netflixinvestor.com/ir-overview/long-term-view/default.aspx

    ”Internet entertainment is replacing linear TV”から始まるこのビジョンは、年々少し修正されているのかもしれないが(今読んだものはLast Updateが2018年1月になっていた)、おそらくは今のネットフリックスの精神を表している。Netflix Focus、Competition、ISP & MVPD relationships、など短い文章にはその粋が凝縮されている。そこに書かれていることを読むと、テレビ、映画、放送、というエンタテイメントビジネスは大きく変わることがわかるだろう。

    ビジョンの最後のConclusionには次のように書かれているが、本書の要約を書こうとするともしかしたら同じものになるかもしれない。そして、あっさりとまとめられた流れのその中にいた実際の人物の動きこそが本書の魅力でもある。

    We started in 1997 as a DVD-rental-by-mail firm, and spent the first five years struggling to get to a sustainable model that was cash flow positive. We spent most of the next five years fighting with Blockbuster in the US. We began streaming in the US in 2007, and internationally in 2010. Our sobering Qwikster DVD misstep was in 2011. Our first original series debuted in 2013. We became global in 2016, nearly twenty years after starting Netflix. Over the following decades, internet entertainment will replace linear TV, and we hope to keep leading by offering an amazing entertainment experience.


    繰り返しだが、ぜひ映画化を期待する。熱望すると言ってもいいかもしれない。
    面白い。お勧め。

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    『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/481327160X
    『SHOE DOG』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492046178
    『フェイスブック 若き天才の野望』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822248372

  • 1997年、シリコンバレーで郵送DVDレンタルビジネスを立ち上げたマーク・ランドルフとリード・ヘイスティングズ。この小さなスタートアップ、ネットフリックスが、その後15年で世界最大のサブスクリプション型映画配信サービス(ストリーミング配信サービス)へとのしあがっていった。アイデアマンのマーク・ランドルフが立ち上げ、冷徹なヘイスティングズが「世界に変革をもたらす存在価値へと飛躍」させたネットフリックス。本書は、ネットフリックスの紆余曲折の創業発展物語。

    店舗を持たないネットフリックス。郵送DVDビジネスネットフリックスのキモは、洗練された物流システムと、契約者の好みに合わせて映画をお薦めするレコメンドエンジン「シネマッチ」。

    本書の読みどころは、リアル店舗中心のDVDレンタルの最大手ブロックバスターとの熾烈な戦い。値下げ決戦やサービス合戦、コンテンツの抱え込み、そしてコピー行為に誹謗中傷。とにかく果てしない潰し合いを繰り広げた両者。一時は敗退寸前まで追い込まれたネットフリックスが結果的に勝利することができたのは、ブロックバスター内の経営陣のゴタゴタ。しかもその原因は、経営に乗り込んできた強欲な投資家と経営トップとの軋轢、というからいかにもアメリカ的だ。

    常に浮き沈みの激しい、綱渡りのビジネスを強いられてきたネットフリックス。そして創業メンバーや功績者をあっさりと切り捨てていくヘイスティングズ。ビジネスとは、かくも冷徹でないと、そしてリスクを負わないと成功を収めることができないのか!

    VHSからDVD、店舗ビジネスから無店舗・ネットビジネス、そしてDVDからストリーミング配信へと、世の中が大きく変革していく中での生き残りをかけた戦いは、読み応え十分だった。

  • 読み物として普通に面白い。ノンフィクション小説であり、歴史小説のような面白さ

  • ‪Netflix創業物語。月並みな言い方だけど凡百の小説よりよっぽど面白い!2012年時点までの話のためGAFAに並ぶ規模に成長する部分が無いのが逆に物語の密度を高めている。敵役のブロックバスター側の視点が充実しているのも厚みが増して良かった。あと一歩まで追い詰めていたとは…まさに歴史の分岐点。‬表紙や帯の印象と異なりビジネス書ではないのでその点はミスマッチが起きないように注意が必要。

  • Netflixの話であり、ブロックバスターの話でもある。ストリーミングサービスとしてのNetflixの前、オンラインDVDレンタルでの両社の戦いがメインであるが、非常に楽しめた。
    どちらかと言うと、中盤以降は、レガシーを打ち破り、変革を促そうとするブロックバスター関係者に与したくなる。横槍がなければ、時代は変わっていたかもしれない。

  • 消費者との感情的な繋がりを大切にすること、理屈抜きに特定のブランドに思い入れを持たせること、これらはとても大事なことだと思った。

    小説のようで楽しく読めた。

  • ネットフリックスが多くの場面でデータを活用していることがよくわかる。
    ストーリーの大半はオンラインDVDレンタル時代の話であるが、日本にはないビジネスの裏の部分が書かれており興奮を持って読み進められる。
    例えば、競合が誤った戦略に進むと、素知らぬ顔して称賛してみたり、はたまた競合と共倒れになりそうであれば買収を持ちかけたり。

  • Netflix

    毎週決まった日時に、決まったチャンネルを視聴する「アポイントメントテレビ」の時代は終わった。

    ※日本のカスタマーアンケートでも、「生放送のテレビは途中から始まるのが苦痛」と言われている

    いずれコンテンツ供給側に敵と見なされ、供給が止められるかもしれない。その前に自社でコンテンツを作ろうとしていた。1発目は、監督に、ビッグデータを使って提案。監督と主役の俳優が出ている映画が好きなカスタマーは、監督が作った映画、俳優が出ている映画を全て見ている傾向が強いこと、イギリスの政治番組を見ている共通点もあった。そのイギリスの番組をアメリカ版にリメイクすることにした。

    破格の制作費を用意し、コンテンツは全て監督に委任し、アポイントメントテレビができない「全話一斉配信」を行った。

    この制作を機に、それまでのプロデューサーの直感や過去の常識に縛られず、ビッグデータを通じて監督や俳優を選ぶことにした。

    最初はAmazonのようなECをやろうとしていた。レンタルビデオ業界に目をつけて、ビデオの宅配事業をやろうとしたが、VHSが大きすぎて郵送コストが合わなかった。それがDVDになって、事情が変わった。

    レンタルビデオ業界は、ハリウッドの映画スタジオにとっては天敵。

    映画は、リアルタイムで、劇場で見るもの。劇場の在庫は劇場の数に比例。満席だと見られない。ビデオは、録画しておいて、家で見るもの。ビデオは家の書棚の大きさに比例。売り切れだと見られない。オンラインは、いつでも、どこでも見られるもの。在庫は無制限。売り切れという概念はない。

    最初は、1枚4ドル、送料2ドルで、1枚追加ごとに3ドル、返送の郵送代金は会社負担。レンタル期間は7日間で、そのまま購入したい場合は3割引きで販売した。

    注文処理の人件費が高い、郵送中の破損リスク、DVDプレイヤーが高価、タイトル数の不測などの障壁があったが、それは「それだけ参入障壁が高い」とポジティブに考えた。

    配送の仕組みを知るために、郵便局で働いた。バーコードで機械が振り分けるレーンに乗ると破損するので、自動仕分けされないバーコードの貼り方を、郵便局で働きながら実験した。

    盗難防止のために、社名を書かない方がいいのでは?宛先のステッカーを剥がせば、そのまま返信用封筒になる。レンタルビデオみたいに貸出し中でも空の箱だけ置いてある状態を避けて、借りられるものだけを並べた。

    新作や人気作は在庫が無くなる。たくさん仕入れても流行りが終わると余剰になる。だから旧作をプロモーションすることにした。

    継続率を上げる方法は2つ。毎月定額の見放題か、レンタルした映画を返却するとすぐに次の映画を発送するプラン。前者は、月20ドルで、6本までレンタル可能。延滞金を払わなくていいモデル。

    レンタルビデオで、VHSに依存していたブロックバスターと提携する行動にも出たが、VHSモデルを棄損するリスクのあるブロックバスターが売れ入れなかった。

    ユーザー分析すると、一般客が少なく、契約者の80%は若い男性、高級取り、コンピュータ技能者などのオタクだった。ユーザーインタビューでは、予約リストに入れていたビデオが、3か月たってもレンタルできなかったなどの離脱理由が聞けた。

  • Netflixの創業期、ライバルとの戦い
    現在多くの映像ストリーミングサービスがあるが、何故Netflixがその中でトップを走り続けているのかがわかる作品。
    ストリーミング配信が始まる前のNetflixの闘いが現在の強さに繋がっている。

  • カナダ在住時代からお世話になっているNETFLIXの創業記。
    半分以上は、ライバル会社ブロックバスターの終焉を伝える物語でもある。
    創業にあたっての根本的なビジネスプラン
    VHS→DVDという新しい規格・テクノロジーを活用して、
    既存のビジネスモデルを駆逐するという発想が、まず第一
    続いて、アルゴリズム、Data Drivenな判断、在庫と、視聴者の興味を計算誘導して、旧作へ向かわせるというモデル、そして物流、計算しつくされている感がこの20年代に台頭したふさわしい会社だと思う。
    一方、イノベーションのジレンマを時で行くブロックバスターが、両利きの経営を実現し、NETFLIXをチェックメイト寸前まで追い込んだというのは、すごい物語だった。最後は、物言う株主のせいで、おじゃんになったが、
    それも、イノベーションのジレンマにあるように、ネット企業としての成長率を期待する(赤字は構わない)株主を引き入れたNETFLIXと、既存店舗での利益を期待する株主に対応しなければいけないブロックバスターの違いであり、結局は、イノベーションのジレンマを解決するまでには至らなかったということか。「イノベーションのジレンマ」は、さんざん研究されているにもかかわらず、結局は、その理論を覆せないというのはすさまじい。(結局はヒトの業なのだろうか)

    読み進める中、これは、VHS→DVDの技術変革に伴うイノベーションのジレンマの物語だなと思いながら、読み進めていく中で、DVDレンタル→ストリーミングの技術変革をどうやって、NETFLIXが乗り越えるのか?がみものだったのだが、それは、ブロックバスターがチェックメイト寸前まで追い詰めたことによる、起死回生の一策だったのか、それとも、ヘイスティングらがそもそもストリーミングが世界を統べるという先見性を持っていたからなのか。
    ブロックバスターが追い詰めなかった場合に、どうやってNETFLIXが乗り越えたのか?が、起こったとすれば、イノベーションのジレンマを乗り越える方法が見えたのだろうか?それとも、結局GAFAと対抗するために自然とストリーミングに移行できたのだろうか。

    2012までのNETFLIXの物語であり、その後のストリーミングで、世界進出する部分の物語はまた違うストーリーなのだろうが、この部分はあまり興味がなさそうにも思えたので、個人的にはとても満足。小説を読むかのような魅力的な本で、久々に、手が止まらない本だった。
    Shoe Dogも同様に創業期ではあるが、圧倒的にこちらの方が読みごたえがあった。

    納得の一冊。でも、読み返すことはないかも。面白かった。

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