NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105071219

作品紹介・あらすじ

動画配信で世界一位! アマゾン、グーグルら巨大IT勢を脅かす最強王者の全貌。世界中のコンテンツを買い漁り、巨額を投じたオリジナル作品で大ヒットを放ち続けるネットフリックス。彼らはなぜ世界の覇者になりえたのか。テクノロジーとビッグデータを信じ、過酷な競争文化で急成長を続けるテック企業。その知られざる創業秘話から、大胆な業態転換をへて頂点に上り詰めるまでの壮大な物語を初めて描く。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の取材力が光る。細部までリアリティが担保され、のめり込むように読めた。

    ストーリーラインは2本。

    ネットフリックスとブロックバスター。

    ネットフリックスは市場シェア獲得を目指し赤字を垂れ流しながら全力で走り続ける。

    店舗レンタルビデオ業界の巨人ブロックバスターは、ネトフリが仕掛けた業界激変の流れに右往左往しつつも、真っ向から争う。

    ———-
    ネットフリックスは単なるレンタルDVD屋ではなく、その正体は徹底的に数字で考えるシンクタンクである。
    数学的アルゴリズムのみを信奉し、合理性を追求する。

    ———-
    読んでいる途中から私はブロックバスターに肩入れしてしまった。

    廃れゆく店舗レンタル事業を抱えつつ、オンラインシフトを進めなければ生き残れないジレンマ。

    しかも、オンライン化の為のキャッシュは店舗レンタル事業での利益に頼る他ない。

    自らの巨大な店舗展開が足枷となり、素早い意思決定が妨げられる。

    ご存知のとおり、結果的にブロックバスターは破綻するのだが、熾烈な争いを繰り広げた挙句、最終局面ではネットフリックスと「相討ち」の状況にまで持ち込む。
    あと一息でネットフリックスも音を上げる…..。

    何故そこからブロックバスターは敗れたのか、ぜひ読んでみてください。

  • Netfilxの創業期の話をまとめた本!
    「事実は小説より奇なり」を体現した最高の本だと思う。

    ジャーナリストが詳細を徹底的にしらべて書いた本だが、
    そのリアリティと生々しさに驚いた。

    そして、会社の成長フェーズと共にぶち当たる壁とその乗り越え方、またライバルの大企業ブロックバスターとの死闘、そして企業内のいざこざ、別れと成長。。。

    書き口は、ジャーナリスト的だが、その圧倒的リアリティにのめり込むように読んでしまった。
    経営者がそれぞれの手腕を発揮し、壁を乗り越えようとする姿に心を打たれた。

    Nexflixの成長の原点を見た気がする。
    素晴らしかった!!

  • 1997年、シリコンバレーで郵送DVDレンタルビジネスを立ち上げたマーク・ランドルフとリード・ヘイスティングズ。この小さなスタートアップ、ネットフリックスが、その後15年で世界最大のサブスクリプション型映画配信サービス(ストリーミング配信サービス)へとのしあがっていった。アイデアマンのマーク・ランドルフが立ち上げ、冷徹なヘイスティングズが「世界に変革をもたらす存在価値へと飛躍」させたネットフリックス。本書は、ネットフリックスの紆余曲折の創業発展物語。

    店舗を持たないネットフリックス。郵送DVDビジネスネットフリックスのキモは、洗練された物流システムと、契約者の好みに合わせて映画をお薦めするレコメンドエンジン「シネマッチ」。

    本書の読みどころは、リアル店舗中心のDVDレンタルの最大手ブロックバスターとの熾烈な戦い。値下げ決戦やサービス合戦、コンテンツの抱え込み、そしてコピー行為に誹謗中傷。とにかく果てしない潰し合いを繰り広げた両者。一時は敗退寸前まで追い込まれたネットフリックスが結果的に勝利することができたのは、ブロックバスター内の経営陣のゴタゴタ。しかもその原因は、経営に乗り込んできた強欲な投資家と経営トップとの軋轢、というからいかにもアメリカ的だ。

    常に浮き沈みの激しい、綱渡りのビジネスを強いられてきたネットフリックス。そして創業メンバーや功績者をあっさりと切り捨てていくヘイスティングズ。ビジネスとは、かくも冷徹でないと、そしてリスクを負わないと成功を収めることができないのか!

    VHSからDVD、店舗ビジネスから無店舗・ネットビジネス、そしてDVDからストリーミング配信へと、世の中が大きく変革していく中での生き残りをかけた戦いは、読み応え十分だった。

  • Netflixの創業物語。
    昔は4本1000円とかでVHSをレンタルしてた。週1回返却とレンタルするのを楽しみにしてた。
    そんな時代はもう無くなり、ストリーミングサービスなどの【新しい】が【当たり前】に変わる。
    5Gが普及してくれば倍速で世の中が変わる。
    そんな縮図を物語にしてあるような内容。
    終盤になるにつれて、ヘイスティングスもブロックバスター化していったようにも感じる。
    胡座をかかず、しっかり大衆の声に耳を傾けようと思った。

  • ネットフリックスvsブロックバスターの長期にわたる戦いが面白い。読み応えのあるノンフィクション本。

    ただ、日本語訳が出たのは2019年だけど、原著は2012年に出ていて、時間差がだいぶあるのが残念。今やネットフリックスは巨大グローバル企業となっている。

  • アメリカのベンチャーの成功譚を本にしたものには、とても面白いものが多い。ナイキの創業を描いた『SHOE DOG』、Google Mapの元となったキーホール社の創業とGoogleによる買収後の成長を追った『Never Lost Again』、フェイスブックの創業を描き映画化もされた『フェイスブック 若き天才の野望』。いずれも手に汗を握る展開で、数多くの関係者への熱意溢れた取材に裏打ちされたストーリーが自分を含めた読者の気持ちを捉える。

    本書の著者も、情熱と野望をもっており、この本を書くためにロイターの職を辞し、フリーのライターとして数多くの関係者から貴重な話を聞き集めてこの本を上梓した。すでにロイターの記者時代からネットフリックスおよび業界の興亡について取材を重ねており、面白いものになるという確信はあったであろうし、捧げることができる情熱と成功したらそれなりのリターンがあるという目論見があったのだろう。それでも、フリーになって本書の構想を進めるとき、極度の不安で眠れぬ夜を過ごすことが多々あったと告白する。日本でここまで自分の時間を捧げて仕上げるベンチャー成功譚を描いた本が少ないのは、この種の作品に対するリターンがアメリカと比べて少ないことにもその理由はあるだろう。おそらく、LINEでも、楽天でも、DeNAでも、サイバーエージェントでも、同じように胸に迫るストーリーを紡ぐことが可能なはずだ。もしかしたら、探せばあるのかもしれないが、目に入ってくることは少ない(面白い本があるのは孫さんのソフトバンクの物語くらい)。

    内容であるが、本書で物語は、時系列に沿って語られていく。各章のタイトルがすべて過去の名画のタイトルにしてあるのはお洒落。語られる物語は、ネットフリックスの物語であるとともに、ライバルであるブロックバスターの物語でもある。ヘイスティングはカリスマ経営者として知られているが、本書では決して無謬な名経営者として描かれているわけではない。その弱みや、ここまでくる中での社内、社外での大きな失敗も含まれる。特に先を急ぎすぎたクイックスターでの失敗は、他人の言うことを聞かずに進めた傲慢でありえない失敗として描かれている。

    そして何より、ヘイスティングスは決して本書の主役でもない。黎明期を支え、そして追い出されるようにして会社を去った共同創業者のマーク・ランドルフとそのチーム。そして、何といっても最大のライバル、ブロックバスターのアンティオコとエヴァンジェリスト。彼らこそが主役と呼んでよい存在感を示している。

    時系列に並んでいること、ライバルも含めてそれぞれのキャラが立っていること、わかりやすい勝者と敗者があること、などから、すぐにでも映画化ができそうな内容である。ぜひ、ネットフリックスで映画化してほしい...、無理か。いや、これでオリジナル映画を作る気概を見せてほしい。きっと、ネットフリックスのデータもこれは売れるという結果を出すはずだ。

    ある日の何ということもないはずであった取締役会での役員報酬の問題から始まったアンティオコの、ここぞというタイミングでのブロックバスターCEO辞職。乾坤一擲の捨て身の反撃となった店舗とオンラインDVDレンタルを統合したトータルアクセスが功を奏してネットフリックスを追い詰めていた、まさにその時のことであった。そしてブロックバスターの決定的な敗因ともいえるキーズのCEO就任。彼は実店舗に拘り、顧客は来店して映画をUSBでダウンロードすることになるという今となれば眩暈がするようなビジョンを放ったセブンイレブン出身でデジタル音痴なキーズ。対して、ブロックバスターの脅威が薄れる中、DVDレンタルからストリーミングサービスの未来に賭けるネットフリックス。裏では悪役が似合う投資家カール・アイカーンが暗躍しており、アンティオコとアイカーンへの確執がアンティオコの失脚とキーズの就任につながった。ネットフリックスの成功の裏には致命的な敵失という大きな幸運があった(というのが、著者のストーリーだ)。ストリーミングサービスの開始にあたってコンテンツを供給する映画会社がネットフリックスのことを見くびってネットフリックスに有利な契約を結ぶことになったのも幸運であった。

    去り行くアンティオコを前にして、苦労を共してきたブロックバスター社ナンバー2のシェファードはあふれくる涙をぬぐうために送別会の輪から離れて自分のオフィスへ引き返す。シェファードは、そのときにアンティオコと撮った携帯電話の写真を待ち受け画面に使っていたという。何とも絵になるシーン。そしてその後キーズが来た最初の研修会の内容の古色蒼然さにショックを受けてシェファードを含む古参幹部は持ち株を売り、あまつさえその資金でネットフリック株を購入する(インサイダー取引では?)。そして事態は予想されたように、もしくはその予想をはるかに超えてブロックバスターにとって悪い方向に転がる。DVDレンタルから始まった仁義なき戦いは、巨人ブロックバスターの破産を持って終わる。

    そしてDVDレンタルからストリーミングへ時代は移る。TVでネットフリックスを見るために開発されたROKUのプロダクトとしての高い完成度が大いにその助けになったのは間違いない。(STB開発という近い仕事をしていた自分の経験からするとROKUは本当に素晴らしいプロダクトとサービスだ)
    また、ストリーミングサービスの提供により、映画鑑賞中の顧客行動を把握することができるようになり、顧客が何を求めているのかをリアルタイムに把握することができるようになったことが、競争相手に対するサービス優位性を構築できることに気づき、それを最大限活用するように動いたことも大きかった。

    もし、この本でネットフリックスという会社に興味を持ったのであれば、ネットフリックスの中長期ビジョン「Long Term View」を読むことをお勧めする。
    https://www.netflixinvestor.com/ir-overview/long-term-view/default.aspx

    ”Internet entertainment is replacing linear TV”から始まるこのビジョンは、年々少し修正されているのかもしれないが(今読んだものはLast Updateが2018年1月になっていた)、おそらくは今のネットフリックスの精神を表している。Netflix Focus、Competition、ISP & MVPD relationships、など短い文章にはその粋が凝縮されている。そこに書かれていることを読むと、テレビ、映画、放送、というエンタテイメントビジネスは大きく変わることがわかるだろう。

    ビジョンの最後のConclusionには次のように書かれているが、本書の要約を書こうとするともしかしたら同じものになるかもしれない。そして、あっさりと「5年間のブロックバスターとの闘い」の中にいた実際の人物たちこそが本書の魅力でもある。

    We started in 1997 as a DVD-rental-by-mail firm, and spent the first five years struggling to get to a sustainable model that was cash flow positive. We spent most of the next five years fighting with Blockbuster in the US. We began streaming in the US in 2007, and internationally in 2010. Our sobering Qwikster DVD misstep was in 2011. Our first original series debuted in 2013. We became global in 2016, nearly twenty years after starting Netflix. Over the following decades, internet entertainment will replace linear TV, and we hope to keep leading by offering an amazing entertainment experience.


    繰り返しだが、ぜひ映画化を期待する。熱望すると言ってもいいかもしれない。
    面白い。お勧め。

    ---
    『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/481327160X
    『SHOE DOG』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492046178
    『フェイスブック 若き天才の野望』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822248372

  • ネットフリックスの生い立ちが描かれている。文字数も多く読みごたえが有る構成
    ・創業は大学生では無く、全員が元サラリーマン
     大半は大きなソフトウエア会社で管理職を経験したベテランで大幅な年収カットを受け入れて入社
    ・エンターメント企業の覇者をデイズニー、AT&Tと争い 競合が激しい中での現在の立ち位置を正確に表している
    ・優勝劣敗の文化 トップクラスの人材が入社 容赦なく首が飛ぶ
    ・株主は大幅売り越し、買い越しを繰り返す為ボラテイリテイが非常に大きい
    ・既存店舗のブロックバスターの経営戦略の失敗から破綻に追い込まれるまで実名入りで書かれているのは米書らしい
    ・日本のTUTAYAがまだ生き延びている事が不思議
     それなりに店舗の統廃合を進めてはいるが。。。
    ・ライバルのコスト構造をとことんまで調べ上げ提供価格を決定 社員を動員して会員増加数の正確な値を把握
    ・最適なアルゴリズムを作り出す為何と賞金100万ドルのコンテストを開催 (11年の期間で10%以上の精度向上に達成したら)オープンイノベーション 何とライバルのAT&Tのチームが獲得
    ・DVD貸し出しからストリーミング配信への転換も見事
    ・ライバルのISP業界がネット回線を制限しだしたのでロビー活動でそれを静止 ネット中立性の法を作らせた
    ・創業者は、フォーチュン誌の今年のビジネスパーソンに選ばれてから部下のいう事に耳を貸さなくなった

  • ネットフリックス創業の物語。当時のレンタルDVDの雄であるブロックバスターを知恵と執念とビジョナリーで打ち破り、新しい映画鑑賞スタイルを築き上げた。エピローグに良い商品、健全なバランスシート、事業計画の完璧な遂行という経営の基本をきっちり抑えていれば自然と顧客に信頼され、ライバルを追い払える。とあるがこれらをブレずに忠実にやり遂げた結果であり、未来を見通す眼力に長けていたのがよく分かり、やれば出来ると勇気を与えられる一冊だった。

  • 映画鑑賞のスタイルを変えた会社。
    これにつきます

  • 『感想』
    〇ネットフリックスとブロックバスターのレンタルビデオの覇権争いを描いた本。経営者が書いた本ではないので、自分のところの宣伝や成功談ばかりではない。そこがよい。

    〇今や地域に愛されるだけでは生存できない世界。まずは少なくとも国の範囲でトップを取るために赤字上等の初期投資が必要で、こりゃ個人や小さな集団では始められないわ。

    〇競合する会社同士がしのぎを削り、客を奪い合う過程は、サービス利用者にとってはありがたいことだが、渦中の会社にとっては敗れた方は退場しなければならない厳しい世界。

    〇その世界の覇者が決まってしまうと、今までの投資金額を回収すべくサービス利用料金が上がっていく。安さに慣れている利用者にとっては不満もあるが、すでに他に同等のサービスをしてくれるところがなくなっていると、それでも利用し続けるか、やめるかしかない。

    〇競争によってサービス基準が引き上げられ、利用者にとって便利になっていくことは嬉しいが、アメリカなんかでこれがうまくいっているのは人材の流動性があるからかなと思った。一つの会社に居続けることが美学ではなく、他から呼ばれるからこそ箔がついていく。そして失敗が許容されるのだろうな。

    〇日本はここまで厳しい環境にないかもしれないが、余りに過酷な競争や合理性・効率性ばかり求めると、幸せになれるのはごく一握りで不幸な人もたくさん出てくるのかもしれない。人には感情があって、ここを押さえないといけないと、最近強く感じるようになった。

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