スタン・ゲッツ 音楽を生きる

  • 新潮社 (2019年8月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (596ページ) / ISBN・EAN: 9784105071318

作品紹介・あらすじ

フィッツジェラルドこそが小説であり、スタン・ゲッツこそがジャズであった。ボサノヴァなど新しいスタイルを常に取り入れ、第一線で半世紀近く活躍したスタン・ゲッツ。酒やクスリに溺れていても、ひとたびステージに上がれば自由自在な即興が冴えわたり、どんな楽曲も美しく演奏せずにはいられない。その音楽を愛し続けてきた村上春樹が、いつの日か翻訳したいと願っていた傑作評伝、ついに完訳。

感想・レビュー・書評

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  • ▼2段組み、587ページ。なかなかなボリューム感。そして個人的には2段組みってなんとなく嫌いなんです。ですが、これはもう、読み終わりたくないくらいにオモシロかったです。評伝の傑作です。幸福な読書でした‥‥。(いわゆるモダン・ジャズ好きな人、そしてスタン・ゲッツを多少は聴いたことがある人、そういった方々以外の人が読んで面白いのかと問われると、自信ありませんが)

    ▼ジャズ・アーティスト(テナーサックス奏者)の、スタン・ゲッツさんの評伝です。多くの人がそうでしょうが、村上春樹影響が大きいです(笑)。村上春樹さんはジャズ喫茶の経営者だったそうで、言ってみればジャズについてはセミプロというかほぼ業界人だったそうです。そして、「スタン・ゲッツ好き」を以前から公言、本作も翻訳を手掛けています。

    ▼個人的には村上春樹さんは昔から読んでるんですが、それとは別線のきっかけでジャズを聴くのはこれまた昔から好きです(楽譜も読めず楽器は一切できませんが)。なんですが、スタン・ゲッツさんはこれまでそれほど好きではなかったんです。むしろここ数年はズート・シムズさん(テナー・サックス)が大好きで‥‥。ズートさんとスタンさんはほぼ同年代で、恐らくは大まか友人関係で、若い頃に同じ楽団で働いています。そんなことから、この本も読んでみようかな、と。

    ▼ちゃんと調べてあって、ちゃんとジャズの歴史を横断的に把握して描いており、かつスタン・ゲッツの周囲の生存者にきっちり聞き取りしている感じが濃厚です。スタン・ゲッツさんは確かに大スターなんです。天才です。およそ半世紀近くに渡って孤高の領域の演奏を繰り広げました。そして薬物中毒とアルコール中毒と離婚訴訟に苛まれつづけ、警察に逮捕されたり頓死しかけたりしています。つまりは栄光とスキャンダルに溢れ、実に評伝としては美味しい。なんだけど、ただのゴシップではないです(ゴシップ的な楽しみ方も十分できますが)。スタンさんのキャリアと人生から、その背景の

    「アメリカの50年代~80年代」

    みたいなものと、

    「モダン・ジャズと呼ばれる音楽とはどういう音楽で、
    どのような層が演奏し、
    どのような人々が楽しみ、
    黒人と白人の相克があり、差別があり、
    そして演奏者たちは何を考えて音楽を追及して変革して来たのか」

    みたいなことが、スタンさんのスキャンダラスな人生をハラハラと楽しんでいるうちに浮かび上がってくる。

    ▼そして何よりも、じわじわと、わじわじと、スタン・ゲッツの音楽が、ジャズが聴きたくなってくる。本作内で話題になっているアルバムをかけながら、聴きながら、本作を読み進める…。こ、これほどの快楽はなかなかありません。正直言って、鼻血ものの喜悦、弾けるばかりのシアワセな時間でした‥‥。

    ▼同じ村上春樹さん翻訳の「さよならバードランド」が、モダンジャズルポルタージュの青春小説だったするならば、今作はモダンジャズルポルタージュの大河ロマン…と言いたくなる充実度。本当にかけがえのない時間でした‥‥。
    (冒頭に書いたように、モダンジャズに興味なく、特段聴いたこともない人にとって、書籍として力を持つのかと言われると、多分持たないんだろうなあ、と思います。まあでも、内輪受けであればあるほど、それが完成度が高ければヨロコビは深くなる…んでしょうね)

  • 村上春樹の訳によるスタンゲッツの伝記。まずその膨大さと本人以上に詳しい緻密さに驚かされる。あとがきで村上春樹が書いているように、スタン・ゲッツはマイルスやコルトレーンのようなジャズの“革命児”ではなかった。それだけに、こんなにアルコールとドラッグと暴力に満ちた人生だとは知らなかった。人気投票で争い続けたコルトレーンは、“誰もが歌うならゲッツのように歌いたいはずだ”と言ったのが印象的。膨大なセッションの中で、その当時のジャズシーンを“器用に”取り込みながら、軽やかな演奏を残している。村上春樹はそれをフィッツジェラルドの作品と対比する。作品に必ず刻印をきざめるのは、才能だけではない特別なチカラだと。村上がゲッツに惹かれるのは、その1点なのだろうと思った。正気と狂気の行ったり来たりに正直疲れる1冊だけど、ゲッツの人生の重さを知れる1冊だった。

  • 確かに、悪夢と至高。酷い取り合わせで、最初の数章で読むのを止めようと思ったくらいだ。しかし読み終えていま、読んで良かった。彼という人間の中に天才と悪夢が同居している。これは一種の悲劇だと思う。それでも強烈すぎて簡単に肯定が出来ないが、人間臭さが表れている、ともできる。
    凄まじい人生で僕には耐えられない話だ。

  • バレンタインデーに行われた村上JAMの前に、週刊朝日での春樹さんのインタビューの中で、この本やスタン・ゲッツについての記事を読んで、ああ積読してる場合じゃないなと読み始めました。

    いやぁ、この1週間はとにかくスタンのテナーサックスと共にありました。

    前半の若きスタンリーがどんどん才能を開花して行く姿にワクワクと読み進めながらも、あっという間に青春を音楽とドラッグに捧げてしまう姿。。最初の妻のべヴァリーもヤク中だったのがいけない。。
    才能の全てを音楽に捧げたけれど、精神がとにかく脆かった。。それは、母親の過度な期待から始まっていたのだけれど、それにしてもひどい。

    自身でも言っている
    _僕の人生とは音楽だ…
    でもそれと引き替えにしばしば…ぼくは人生のすべてのものを犠牲にすることになった。幸福というのは僕にとっては、その到達と再編成の繰り返しの単なる副産物に過ぎないんだ_

    彼の人生とともに描かれるJAZZのビッグスターたちのエピソードに励まされる。
    レスター・ヤング、ベニー・グッドマン、チェット・ベイカー!(ファンなので)
    スウェーデンで美しく育ちの良い女性モニカと出会ってからの彼もとにかくひどい。

    素晴らしいコンサートや録音の合間の、ひどいアルコール摂取。なぜあんなにもモニカに暴力をふるうんだろう。。子どもたちにさえも。目を覆いたくなる。でも、モニカ自身もこれは酔った時だけなのと自分に言い聞かせるし、スタンも暴力を奮ったことに後悔はするのだ。
    そして翌日にはケロッとして美しい演奏をしている。
    読んでいて辛くなる。

    でも、どうしてもジョアン・ジルベルトとのセッションまではたどり着きたくてがんばって読む。。(ここから長いです)

    ギタリストのチャーリー・バードが、スタンに持ちかけるシーンはワクワクが止まらない!でかしたチャーリー・バード!!って。
    「新しいラテン音楽をみつけたんだが、君にも聴いてもらいたいんだ。君が吹けば、実に素晴らしいサウンドになるだろう…」
    ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビン、彼らもまた、マイルスやスタンの影響をうけながら、サンバの新しいやり方を貫いていく。そのあたり、ぐいぐいひきつけられる。(ジョアンのBIGファンなので)

    スタンとバードのアルバム「ジャズ・サンバ」が産まれる。でも、アメリカにはサンバのリズムセッションを表現できるアーティストがいなくて苦労している様など、なかなか面白い。しかしながら、このアルバムは大ヒットしちゃう!そして、ポップソング界にもなんちゃってボサノヴァが流行ってしまう!なるほどぉ。。

    この一連のボサノヴァムーブメントから、ブラジル外務省の助力を得て、ついにジョビンとジョアンがアメリカに迎えられる。ただ、カーネギーホールでのコンサートの音響がひどかったため、またここでブラジル政府が関わって、2人はニューヨークのナイトクラブでようやくまともな場を得る。このあたり、サラッと書かれているのでジョビンの伝記を読んでみたくなる。

    そしてついに、本場のブラジルのミュージシャンと、スタンの録音がセッティングされ、「ゲッツ・ジルベルト」が!ジョビンのピアノに、ミルトン・バナナのドラム!それにしても知らなかったぁ。アストラッドを歌わせたのは、スタンだったのですねぇ。アストラッドは、ジョアンの妻として同行していたのだけど、唯一英語ができたため、スタンが英語で歌詞を歌ってみてくれと頼み、その声やしぐさの「無防備なまでの官能性」に惹かれ、アルバムのために歌ってくるように要請した。
    でも、もちろんあの下手うまですよ、ジョアンとジョビンはアストラッドはプロの歌手じゃないと反対した。でも、スタンが英語の歌詞が素敵だったので、そのまま推した。。
    いやぁ、知らなかったです。おもしろかった。でもね、やっぱり極度の人間嫌いのジョアン・ジルベルト、彼がホテルの部屋に閉じこもって出てこなかったシーンなど、もう本当に愛おしい(BIGファンなので)

    このボサノヴァムーブメントの後のスタン。この後にゴタゴタのモニカとの離婚調停があり、2人の若き女性と暮らし。。スタンは身をボロボロにしながら美しい演奏と録音を残してゆく。春樹さんのあとがきにもあるように作者がスタンの音楽の真の理解者で、愛を持っていることに助けられながら、なんとか読み進めました。

  • グランツがヴァーヴをMGMに売ったところまで読んだ。
    つまり、これからモードの時代に入り、ゲッツはボサ・ノヴァに活路を求める、ってことになるわけだけど、そっから先はタルいからもういいかな、と。(チック・コリアやゲイリー・バートンを起用した時代の話には興味あるものの)

    ユダヤ人のゲッツの生涯を追うことが、そのままジャズの歴史を追うことになるんだなぁ、と、これはちょっと意外な感じがした。

    面白いのは、登場してしかるべきだろうと思ったアルト奏者が名前すら出てこなかったこと。
    その名は、アート・ペッパー。
    まったく関わらなかった、というのはとても不思議だけど、ポール・デズモンドとも共演がないことからすると、そんなもの、なのかな。

    村上さんの人名表記は、筋は通っているものの、ちょっと独り善がりなんじゃないの、と思わないでもない。
     チャーリー・ヴェンチュラ
     マイルズ・デイヴィス
     ショーティー・ロジャーズ
     サージ・チャーロフ
     チェト・ベイカー
     チャーリー・ヘイドン
     …

  • ブクログの感想は読み終わった本だけ書くのがマイ基本方針なのだけど,あんまりな感想だけが載ってたので,自分の水のように薄いレビューをここにつけ足し,薄めておく.

    ゲッツはどちらかというとジルベルトとセットというか,ボッサなゲッツの一面のみを聴いていた程度だったので,村上春樹のゲッツに対する思いがこうだったのか(気になる方はあとがきをお読みください)というのが村上ファンとしてもまず非常に興味深い.村上春樹というジャズと共に生きてきた御人が言うことなので,個人的な好き嫌いはちょっと横におくにしても,素直にすごい人だったんだなと自分の認識を更新させられました.

    で,ゲッツが神童だったというのを知らなかった人間からすると,本書のはじめの数十ページを割いて描かれる神童っぷりはハンパない.家庭環境も半端ない.そこは割とサラッと描いてあるんだけど.

    読み終わるのだいぶ先になりそうだけど,ロックをちびちびやる感じでゆっくり読むよ.お酒飲めないけど.

  • ひと月掛けてスタンゲッツ評伝を読了。素晴らしい音楽家でありつつ人格的に問題ある事は承知していたが、ここまで酷いお方だったとは。そこを音楽的には微塵も感じさせないのはある意味凄い。
    英語版Wikipediaに掲載されたDiscographyと対比させながら読み進めることで時系列な音楽的キャリアを良く理解できた。訳者のゲッツ愛にも共感。
    因みに以下の個人的ゲッツベスト3曲に変化無し。
    1. Grandfather’s Waltz (Stan Getz&Bill Evans)
    2. E Luxo So (Jazz Samba)
    3. Desafinado (Getz/Gilberto)
    次点 Only Trust Your Heart (Getz Au Go Go)

  • あまりにも分厚いので、気になる曲をyoutubeで聞きながら、ざっと目を通した.村上春樹の翻訳は意気込みが凄いと感じた.

  • 20/11/02。

  • 訳者が村上春樹だったので読んでみた。
    あとがきにあるように、詳細な伝記で暗い事実も多いが、ドナルド・L.マギンの音楽に対する深い理解と愛情が感じられた。ジャズに詳しくない私もジャズの歴史に触れられた気がした。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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