マインドハッキング: あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105071912

作品紹介・あらすじ

「トランプ大統領誕生」と「ブレグジット」の裏にはこの男がいた! ネット上の行動履歴から利用者の特性を把握し、カスタマイズした情報を流すことで行動に影響を及ぼす「マイクロターゲティング」。フェイスブックから膨大な個人情報を盗みこれを利用したのがケンブリッジ・アナリティカなる組織だ。彼らは何のために国家の分断を煽り、選挙結果を操ったのか。元社員による衝撃の告発。

感想・レビュー・書評

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  • 怖いよね〜マジで。
    こうやってブクログに書く内容も、個人情報のストックになっていくのかな〜
    それにしても「FB胡散臭い」って、FBが登場してきた時から思っていたが、動物の勘!?当たってたな…

  • 人が、初めてネットの海を知り、その世界に漕ぎ出した時は、新しい出会いに胸を膨らませていたと思う。
    たとえ、今、実際に周りにはいなくても、この広い世界には、きっと同じ思いの人がいる、、、って。

    現実ではなかなか出会えない誰かと出会えて、新しい繋がりを生み出してくれる夢のような世界、
    ・・・そんなふうにネットの世界に期待した人はたくさんいるんじゃないのかな?

    それなのに。
    今、ネットでは、個人情報を掴んで、それぞれの人を狭い枠の中にカテゴライズし、それぞれの枠のなかで心地よい情報だけを流すことで、異なるもの同士の深刻な分断を生み出している
    ことを、この本は暴露している。





  • ケンブリッジアナリティカの事件について、事件の背景が丁寧に描かれた良著。当事者の視点により、ブレグジットとアメリカ大統領選へのロシアの関与が生々しく伝わってくる。
    某SNSのアカウントを消したくなった。

  • 最近YoutubeやFacebook、陰謀論的広告出てきて胡散臭いなと思っていたら、その感覚にぴったりの本だった。『ブルシット・ジョブ』に出てきそうなITエリートの話でもあり、マイノリティ目線から見たアメリカ、イギリス(著者はイギリス人でゲイで車椅子経験者だ)論という意味で『壁の向こうの住人たち』が想起され、充実した読書体験になった。

  • 2016年の英国のEU離脱、トランプ大統領当選の一助となったのは、ケンブリッジ・アナリティカという会社でフェイスブックがそのデータ元となった、程度の知識はあった。
    それでも自分自身はSNSに依存していないし、馬鹿げたフェイクニュースを簡単に信じたりしないという妙な自信で、他人事のように感じていた。
    しかし内部告発者による本書で、心理学者とデータ分析の専門家が先端的なツールを使って人の心をコントロールする様を見ると、その恐ろしさが良く理解できる。自身が無縁なんてとても言えない。今までと異なった時代にいることを改めて理解したい。

  • 10代後半から20代前半でどれほどのことができるだろう?
    鼻ピアスに髪を染めた表紙のこの若者は、若くして車椅子での生活を強いられ、プログラミングにのめり込むと同時に政治にも興味を示し、とりわけオバマ陣営の選挙活動に感化され、母国カナダの政党に加わり党の選挙対策を進めるが、あまりの後進性に絶望し、イギリスに渡る。
    大学に通いながら今度は英国の少数政党に参画するが、党勢衰退を予測して煙たがれ辞める。
    次いで軍事コンサルタントのデータ分析官として働き始めるが、ある画期的手法で膨大な個人データを集めることに成功する。
    それを利用して、ターゲットに個別のメッセージを流布し、世論を操作するビジネスモデルを確立する。
    アメリカの大富豪からの資金援助を受け、全世界で明らかな違法行為に手を染める同社に次第に不信感を強め、昇給を固辞して会社を辞める。
    その後に起こったブレグジットや米大統領選でのトランプ当選に同社が深く関与していることを知り、告発を決意し、ガーディアンやニューヨーク・タイムズなどで不正の実態を話し、アメリカやイギリスの議会の公聴会で証言する。
    フェイスブックからは訴えられ、すべてのアカウント停止措置も受けている。

    ここまで15歳から25歳までの出来事で、すべての内幕を暴露した本書出版時もまだ20代だろう。
    おそらく映画化されるだろうし、本書にも出てくるヒュー・グラントは、本人役で出演することになるはずだ。
    映像化も楽しみだが、本書の価値は単なる原作以上のものがある。
    告発内容も凄いのだが、とにかく全編に渡って入る著者の政治・社会学的分析が的確で、専門家も顔負けだ。
    選挙におけるマイクロターゲッティングの対象者の選定や、文化と過激主義の不思議な相関関係など、当事者の視点とは思えない深みがある。
    騒動が落ち着いたら、カナダのトルドー首相は、台湾のオードリー・タンのように、著者をデジタル担当大臣として登用したらいいのではと思わせるほどの有能さ。

    本書で最も意外で印象に残るシーンは、スティーブ・バノンとの初対面の場面だろう。
    いまのように誰もが知る存在になる前のバノンが、同社のターゲティング責任者である二十歳そこそこの若者に会いに、わざわざイギリスを訪れる。
    目は血走りやさぐれた感じの強面の男が矢継ぎ早にする質問に淀みなく答える著者。
    最初のミーティングから波長が合い、オタクな仲間同士、時を忘れ語り合う。
    「文化を変えたいんだ」とバノンが語れば、「では、どう文化を定義しますか?」と合いの手を入れる著者。
    意外に感じたのはこの部分で、短兵急な狂信者のイメージしかなかったバノンが、根本的な変革を志向していたと知り、恐ろしさはかえって倍増した。

    政治とファッションは根源的な部分で共通しているという指摘も面白い。
    他人との関係のなかで自分自身をどう見ているのかという微妙な構成概念に基づいているため、どちらも周期的に変遷する文化とアイデンティティだと捉えられ、同じ現象を違うやり方で明示しているに過ぎない。
    イスラム過激派にしても、ナチやKKKにしても、イデオロギーより彼らが信奉する美学やファッションを分析するほうが遥かに有益だと断言する。
    文化と過激主義はお互いを補完し合える関係なのだから。

    オバマ選対本部がパイオニアとなり、2008年のアメリカ大統領選挙で展開したマイクロターゲッティングは、大量の有権者データを取り込んで細かくカテゴリー化する機械学習アルゴリズムを使い、どの有権者を説得して、どの有権者を投票所へ向かわせるべきなのか、最適なターゲットを予測する。
    ターゲット対象は、「支持者でありながら必ずしも投票しない有権者」と「投票するが支持者ではない有権者」で、「投票所に行かない有権者」や「支持者になりそうもない有権者」はもとより、「支持者で投票もする有権者」でさえ対象から外される。

    ケンブリッジ・アナリティカ(CA)は上記を改変し、「投票所に行かず支持者になりそうもない有権者」も対象者に変えた。
    ターゲットとして最もふさわしいのは、神経症型か自己陶酔型の人間で、ストレスをもたらすナラティブに対して弱く、衝動的怒りや陰謀論に傾きやすい集団と定義する。
    CAは彼らに対して、フェイスブック上の広告や記事経由でナラティブを流し、感情に火をつける。
    フェイスブック上にフェイクページを作り、怒りに火をつけるようなビデオや記事を大量に見せるのだ。

    ただでさえ、ソーシャルメディアの登場で、アメリカ中央部の保守的な白人男性は、田舎者と揶揄され、さらし者にされやすくなっている。
    CAはそれを逆手に取って、「普通のアメリカ人」がからかわれるコンテンツを多用した。
    フォックス・ニュースの視聴者はトランプへの批判を見て、「トランプへの攻撃」ではなく「自分たちのアイデンティーへの攻撃」として内在化したが、この背景には、ポリティカル・コレクトネス=アイデンティティーへの脅威という認識がある。
    そのため、トランプ批判が起きれば起きるほど、ますます視聴者は意固地になった。

    選挙活動は、伝染病に対する公衆衛生対策と同じだ。
    1 個別にカスタマイズしたメッセージに感染しやすいグルーブを見つける。
    例えば、フォックスニュースを見て怒りを溜め込んでいる視聴者などがそれに当たる。
    2 伝染性ナラティブに影響されやすい特性を明らかにする。
    例えば、「医療保険コストが高くて生活が苦しい」など。
    3 ワクチンとして対抗ナラティブを流布させる。
    例えば、「悪いのは不法就労者やオバマケアだ」など。

    ターゲットされた人々は、自分の問題を外在化して、厳しい現実 - 例えば雇用主が社員の福利厚生に無関心であること - から目をそらし、不法就労者やオバマケアへの敵意を募らせていく。
    もともとは左派である民主党側で生まれた手法が、右派の共和党陣営で扇情的な世論操作として形を変えたのだが、特定の有権者に対して特定のメッセージを直接届けるマイクロターゲッティングは、政治的メッセージを世の中に向かって広く発信するのではなく、プライベート空間に閉じ込める格好になる懸念があるため、公共性はどんどん失われていく。

    膨大なデータを使ってコンテンツを作り、ターゲットに向けて流布し、スケールアップして世論を操作するという手法は、必然的にターゲット集団の心理プロファイルへのアクセスが必要となるが、フェイスブック経由で必要なユーザー情報をいくらでも入手できることが判明する。
    同社のユーザーのプライバシーに関する管理体制が緩いことを利用して、たったの100万ドルで、何千万にも上る個人データを入手できたのだ。
    これからは、アンケートや電話による質問は必要ない。

    リアルタイムで自動生成する個人データを活用し、その中から特定のパターンを識別するアルゴリズムを書くだけだ。
    さらにその他のデータとして、国勢調査データ、住宅ローンの申請データ、航空会社のマイレージ情報、健康状態、銃の所持なども加味すれば、家族や友人でさえ伺いしれず、ひょっとすると本人でさえわからない全情報が、クリックひとつで呼び出せるようになる。
    ただ、アメリカでは利用可能なデータセットが海外では乏しいか利用できない問題があること、フェイスブックの穴が塞がれた今、今後も同様の手法が可能なのかさらに知りたいところ。

  • 第八章まで読了。ケンブリッジアナリティカ社がアメリカ大統領選挙に対して行ったことの顛末が記されている。広範で多面的なデータと、データ解析の技術を用いれば民意や風潮といった抽象的なものさえも容易く操れるという部分が恐ろしくも現実的だと思った。居住地や年収などの個人の社会的属性よりも、個人の性格的属性値の方が政治的立場という目的変数に大きな影響をを及ぼしているという点は、データ工学を学ぶ身からしても興味深い知見だと感じた。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50225316

  • 第二次世界大戦と冷戦において、アメリカが自国側の大義名分として掲げてきた「民主主義」は、敵対勢力が弱体化した現在、(新)自由主義にとっても邪魔な理念と化してしまったのではないだろうか。

    弱者が「団結して」社会正義を訴え、政治家を選出して強者(国や独占企業)による力の行使を監視・制限する法を作る。
    法の整備に先行して個人情報という新しい価値を収奪するシステムを作り上げたグローバル企業にとって、自分たちは自由競争を勝ち抜いた優秀な絶対君主であり、「資源」として大人しく搾取されていればよいユーザーが団結して権利を主張するなどは許しがたい反逆行為なのだろう。

    分割統治の手法はますます巧妙に洗練され、貧困層には福祉に「寄生」する集団への憎悪を、非モテには彼らの拠り所を攻撃するポリコレへの怒りを煽り、投票行動を分断させていれば、弱者は「何もできない」。

    知性に優れた研究者にとって、自分以外の有象無象を分類、評価し、行動を操作する行為は密かな喜びであろうし、そこに報酬が提示されれば個人的な倫理観など簡単に押しのけられるだろう。

    著者による内部告発の支援者に性的マイノリティや女性が多いのは決して偶然ではないだろう。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771326

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