- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105073619
作品紹介・あらすじ
人工知能とロボット技術が合体する未来。それは敵か? 伴侶か? ChatGPTに恋したらどうなるのか。性欲を定義してロボットに実装することは可能か。スマートセックストイの利用情報は誰のものか。セックスロボットが広まるとヒトは暴力的になり、レイプが増えるか――セックスとAIについて考えることは、ヒトについて考えることだった! 最先端の知見を盛り込んだ刺激的思考実験の書が上陸。
感想・レビュー・書評
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ロボットでレイプがなくなる。
セックスに相手が必要か?
多角的な視点が必要。 -
自称フェミニストの著者が終始冷静な気持ちで綴った好著だ.セックスの定義から始まり、タブー視されていた歴史を繙き、男性視点の論考が多いことに嘆き、結婚自体の動向を考察し、さらに各種統計の杜撰さを糾弾し、できる限りの考察を盛り込んでいるのは素晴らしいと感じた.老齢化社会が全世界で進行する中で、日常生活支援ロボットとしての機能をどのように設定するかは、個人的な問題が絡むだけに、さらに宗教的なバックグラウンドも無視できない状況を考慮すると、非常に丁寧な議論が必要だろう.既にかなりの数のプロトタイプが出現しており、実際に利用され始めている由だが、実際に体験したみたいとは思わない.個人的な思いだが.しかし、時期が来たらトライしたい気持ちもある.それには「不気味の谷現象」をどのように克服するかも重要だと考えている.所謂セックスワーカーとの関連も議論の対象となるだろう.いずれにしても、興味ある事項が満載の本だ.
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タイトルには「生成AI」と書かれているが、本書で主に取り上げられているのはロボティクスの進化と人との関係である。
ロボットは人とコミュニケーションをすることができるのか?そして、ロボットを人間同士のコミュニケーションの代替として私たちの生活の中に位置づけるべきなのか?
このような問いがもっとも多角的な形で問われるのが、本書が取り上げているセックスロボットの領域なのではないかと感じた。
セックスというコミュニケーションは、身体的な領域から精神的な領域まで、非常に重層的な要素から構成されている、高度なコミュニケーションの類型である。そのような行為において人間の相手を務めるということは、ハード、ソフトの両面で非常に難易度の高い開発領域であると思われる。
現在のところ、多くの人々から人間の代替となりうると受け入れられているようなセックスロボットは開発されていない。
そして、そのような状況である今だからこそ、人がロボットとどのような関わりを持つべきか、また持つべきではないか、そしてロボット開発の方向性を考えることが大切であると感じた。
本書ではいろいろな論点が取り上げられている。「本物の」人間ではない相手とのセックスが一般化することによる人間のコミュニケーションへの影響、ロボットは奴隷なのか人間のパートナーなのか、介護や治療への活用への応用可能性といった、人間の精神や人間同士の関係性に対するセックスロボットの影響については、筆者は過度に楽観的ではないものの決して否定的な捉え方はしていないように感じた。
人間は神話の時代から様々な愛の対象やコミュニケーションの形を嗜好してきたし、そのための道具の歴史も非常に深いものがある。そのことを考えると、人間のセックスのあり方が根本的に変わってしまうというより、また新しいバリエーションが増えるようなものなのかもしれない。
一方で、これまでに開発されたセックスロボットの大半が女性を模したものであり、さらに言うと現実より明らかに性的に誇張された形をしている。このことはジェンダーやセクシュアリティの面で、公平、公正さが保たれていないということを示唆していると考えられる。このように、セックスロボットのあり方を通して人間社会そのものの歪みを考えるということも、重要な論点になりうる。
セックスロボットの浸透が性産業のあり方をどのように変えるのか、プライバシーやセキュリティといった観点からセックスロボットの開発に対するルールはどのようにあるべきなのかといった点も、大きな議論になっているということを、本書を読んで認識させられた。
全体として、男女の性に対する意識の差(がそれほど大きくないこと)やロボットだけではなく様々なツールを使うことに対する人々の受容度(がどんどん高くなってきている)といったことがらについて、従来のステレオタイプ的な理解を覆されるような調査結果も多く、考える視点を多く与えてくれる内容になっていると感じた。
この分野は倫理的タブーや社会通念によってなかなか議論が進まない領域ではあるが、ロボティックスやAIなどのコミュニケションツールの進展は非常に速いため、議論をせずに放置をしてよいことではない。社会全体の中で認識を深めていくことは大切であるし、そのような議論の端緒となるために書かれた本であると感じた。 -
なかなか刺激的なタイトルである。とは言え、生成AIは実体を持たないので、人がセックスするためには容れ物が必要になる。それがロボットだ。
著者は大学の準教授で、フェミニストでもある。本書はセックストイの起源に始まり、ロボットの概念、最近喧しい人工知能について真面目に考察する。多少のエロさは感じるかもしれないが、扇情的な内容ではまったくない。
小学生の頃からどっぷりSFに浸かってきたぼくにとって、セクサロイド=セックスロボットの概念はおなじみのもので、ようやく現実が追いついてきた感がある。しかしながらまだまだ実際のパートナーのようにはいかないようだ。まあ、セックス産業は新技術をうまく取り込み、最先端を突っ走ると同時にその技術を発展させていくものだと思っているので、意外とすぐに実用化されるのかもしれない。
刊行日 2023/09/19、NetGalleyにて読了。 -
タイトルからイメージする目からうろこな内容ではなかった
解説文にあるようにスタートラインに立たせる本 -
ぶっちゃけ相当つまらない。
あの新潮社で、この手の海外の科学ノンフィクションは珍しいので期待したが、なんのことはない。
担当者は何に魅かれて翻訳出版を決断したのだろう?
なかなか主題も始まらず、延々と前段階の概説が続く。
お決まりのアシモフの「ロボット三原則」から始まり、「教師あり学習」と「教師なし学習」の違いは何かとか、云々。
知ってるよという話のオンパレード。
半分過ぎた辺りから本題の議論になるのだが、自身の信奉するラディカルフェミニストの視点に落とし込むため、AIやテクノロジーが今後どのように性や生命倫理を変容させていくかがよく見えてこない。
著者自身はそれでも、多様なセックス産業に寛容な立場のようだが、ポルノは性的妄想を具現化した行為で、セックスドールや日本の一部のアニメなどは性を過剰にモノ化していて、性的暴行やレイプの増加など現実に悪影響を与えているといった、お馴染みの偏狭なフェミ議論が展開される。
「スマホなどの音声アシスタントが人間の女性の声をデフォルトとしているのは、シリコンバレーが男どもに支配されているからだ」
「テクノロジーはもっと平等で、多様性を許容するようなものでなければならない」
ごもっとも、だけど、そんな話が読みたいわけじゃないんだよ。
少し前に出たジェニー・クリーマンの『セックスロボットと人造肉』の方がよっぽど面白かった。
こちらにもアビス・クリエーションズのリアルドールが紹介されている。
映画『エクス・マキナ』を下敷きに語られる「AIに性別は必要か?」というテーマ。
「性行為による繁殖など行う必要のないロボットに、わざわざ性的な感情を与える必要などない」ではないか。
それでもなぜ女性の身体をし、性欲を持たせる必要があるのか?
この問いに対し、人間でさえほとんどのセックスは繁殖とは無関係で、快楽のため、社会的交流のために行なわれているのだから、繁殖とは無関係な性感情をロボットも持つべきだ。
じゃないと人間との真の意味での知的交流など生まれないはずだ。
その意味で、「セクシャリティの要素は必要不可欠なダイナミクスのひとつ」だ、と。
「もし情感豊かなロボットをつくりたいのであれば、ロボットも快感を覚えるべきではないか」、いや人間の身の回りを世話するのだから、「痛みを感じるようなロボットを開発し、感情移入できるようにした方がいいのではないか」。
将来的には、人間とロボットの間のレイプも議論されるとまで語られる。
しかし著者は、未来に開発されるだろうセックスロボットが、必ずしも人を模したものにならないだろうとも語っている。
いまはそのような女性の人体を模したものがデザインされているが、単なるスキューモーフィズムに過ぎず、おそらくは介護に使われるケアロボットなどに性的な機能が付加される形になるのではと想像している。
かわいらしい華奢なセックスドールの延長線上ではなく、人を抱え運び世話する逞しい無骨なロボットのその先だと。
人体ではなく全く別の独自のデザインというなら、昔の春画に出てくるタコのような触手動物のような姿かもしれないし、そもそも脳に電極など埋め込むヘッドギアを被れば、実体などなくとも、触れられてる感覚は得られるだろうに。 -
女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000067763
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OPACへのリンク:https://op.lib.kobe-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2002330883【推薦コメント:タイトルのインパクトもさることながら、テクノロジーの視点から「愛」をとらえようとする見方は非常に興味深い。】