- Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105090043
感想・レビュー・書評
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G. G.マルケスの作品は、私にとってふたつめとなる。『百年の孤独』に続いて読んだのは、作家本人がその長編以上だと自賛するこちら。
共同体の崩落という共通項があるのだが、その発端となる男に抱いたイメージを説明しようとするとき、僕はすぐに「ギャツビー氏」を挙げたい。異端なふるまい・人々を手玉にとる魅力・出自へのミステリー・奇抜な衣装・・・そうして最大の共通する点は、二人は愛に狂ったことである。
さて、ルポルタージュ風の筆致で繰り広げられた「予告された殺人」において読者を引き付けるのは、時間軸の交錯から感じられるスリルである。大団円として殺害の場面が描写されるまでの間、語り手をかえ、場所をかえ、そして語られる時が入れ代わる。
何度も何度も描写される事件に対して読者が抱くのは、まるで自らが捜査・聞き込みをしているような興奮であろう。この点においてはカポーティの『冷血』と似た感覚に陥った。
『百年の孤独』のような魔術性はみられないものの、リアリスティックな描写の随所にみられる、頑ななまでの「習慣・男らしさ」は、二十一世紀をいきる我々にとって、もはや想像のほかに出てしまった所業である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
その祝祭の翌朝、町中の誰もが知っていた、サンティアゴ・ナサールが殺されることを。
ただひとり、当のサンティアゴだけを除いて・・・。
結末のわかっている推理小説なんて言語道断だという読者にさえ、
著者ガルシア・マルケスは冷徹に有無を言わさず言い渡す、
これは最初から決められた結末の物語だと。
推理小説とも少し異なるが、しかし町のすべての人が知りながら止められなかった殺人事件など、起こりうるのだろうか?絡まった網をさまざまに解きほぐすように、事件にまつわる、町のあらゆる人々の思惑、想像、無意識が語られていく。だがそのこころみも、結局は時間と空間という別の網目にとらえられてしまうのだ。
読む人はしだいに不安に駆られる。あまりに不条理な現実。
しかし抵抗もできないまま、衝撃的な最後のシーンにぶちあたるのだ。
1982年のノーベル文学賞に輝き、小説の在り方を覆す、まごうかたなき傑作。
この作家は、本物の怪物だと思う。それも、比類ない怪物だ。 -
2023年度【国際学部】入学前知トラ「課題図書」推薦作品
OPAC(附属図書館蔵書検索)リンク
https://opac.lib.hiroshima-cu.ac.jp/opac/volume/207338?locale=ja&target=l -
読みやすい
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ガルシアマルケスの物語は噎せ返るような土埃と乾いた血の匂いと死臭にまみれた生で溢れている 。生命力。読んでてえげつないな〜と思いつつ笑わせられるのが凄い。
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(1983.05.05読了)(1983.05.02購入)
(「BOOK」データベースより)
町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。 -
大学生の頃、読んだ。
モザイクのような時間構成。 -
読んでいない手紙をトランクに詰めてかつて1日だけ妻だった女のもとへ会いに行く年老いた男というイメージの美しさにくらくらする。