世界終末戦争

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (712ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105145071

作品紹介・あらすじ

19世紀末、大旱魃に苦しむブラジル北部の辺境を遍歴する説教者と、彼を聖者と仰ぐ者たち。やがて遍歴の終着地に世界の終りを迎えるための安住の楽園を築いた彼らに、叛逆者の烙印を押した中央政府が陸続と送り込む軍隊。かくて徹底的に繰返された過酷で不寛容な死闘の果てに、人々が見たものは…。'81年発表、円熟の巨篇。

感想・レビュー・書評

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    内容(「BOOK」データベースより)
    『19世紀末、大旱魃に苦しむブラジル北部の辺境を遍歴する説教者と、彼を聖者と仰ぐ者たち。やがて遍歴の終着地に世界の終りを迎えるための安住の楽園を築いた彼らに、叛逆者の烙印を押した中央政府が陸続と送り込む軍隊。かくて徹底的に繰返された過酷で不寛容な死闘の果てに、人々が見たものは…。’81年発表、円熟の巨篇。』

    冒頭
    『男は長身でひどくやせていた。正面から見てもいつも横を向いているように見えた。肌は黒く、体は骨ばって、瞳には永遠の炎が燃えていた。羊飼いのサンダルをはき、大きくたるんだ長衣を身にまとっていた。』

    原書名:『La guerra del fin del mundo』(英語版:『The War of the End of the World』
    著者:マリオ バルガス=リョサ (Mario Vargas Llosa )
    訳者:旦 敬介
    出版社 ‏: ‎新潮社
    ハードカバー : ‎712ページ

  • 19世紀末に実際にブラジルで起きた、カヌードスの反乱を題材とした作品です。多数の登場人物の視点と時間から構成された物語なので、最初は戸惑いましたが、すぐに物語の世界に引き込まれました。
    この本を読みながら、様々なことを考えさせられました。宗教とは何なのか、救いとは何なのか。争い戦う人間の醜さと残虐さ。世界の複雑さと奥深さ。etc.
    ハードカバー二段組み700ページの大作ですが、読み応えのある内容でした。

  • 2012.10記。

    バルガス・リョサ、完全にハマり三作目に突入。

    本作はブラジルの辺境の地に「救世主」が現れ、政府に対して信徒たちが反乱を起こした、という19世紀末の実話に基づくストーリー(日本で言えば「島原の乱」みたいなものだろうか)。

    救世主の下に集う貧しき人々の群れ。帝政時代を懐かしむ大地主たち。反乱軍鎮圧に向かう将校、戦場をさすらうサーカス団、そしてすべてを書きとめようとする従軍記者。
    こうした登場人物が入れ代わり立ち代わり主人公となって登場し、読者は同じ場面、時間を異なる視点で追いかけることになる。

    救世主コンセリェイロの説く「救済」にすがり、奇跡を見たと信じる人たち。彼らの作る楽園は、しかし地主たちから徴税権を取り戻し、近代国家形成を進める共和制政府とは相いれない。
    「ここの畑と牧場が今のようになるまでには、すごく多くの人間が信仰だけを頼りに必死に働き、献身的な努力を傾けねばならなかったのだ。それなのに今、砲弾は畑も囲い場もめちゃくちゃにしており、しかもやがて兵隊が入ってきて、これまで誰も助けをさしのべてくれなかったからおたがいに助け合いながら神を愛して暮らそうとここに集まった人たちを皆殺しにしようとしているのだ。」
    この思いは胸に突き刺さるが、想像を絶するゲリラ戦に苦しむ政府軍の立場からの描写を見れば、容易にどちらか一方に肩入れして読み進めることもできなくなる。

    圧巻なのは、元盗賊として村々の襲撃など暴虐の限りを尽くし「サタン」と恐れられながら、コンセリェイロに帰依して反乱軍の統率者となるジョアン・アバージの活躍であろう。その類まれなリーダーシップ、戦闘能力、頭脳、そして残虐さ。その彼を巡るラスト一文、信徒の生き残りである老婆の一言が猛烈な感動を呼ぶ。

     しかしこれほどまでに長大で重厚で重層的で、救いのない対立を描きながらそれでいてすべての登場人物への共感に満ち溢れ、しかもエンタテインメント性にも優れた作品を作り出す著者の想像力とはいったい如何なるものなのであろうか・・・
    それに引き替え常に物事のごく一部しか見ずに白黒を断定してしまう我が想像力はなんと貧困なものなのであろうか。

  • すごい筆力。ページ数かなりあるんだけどめくる手がとまらなかった。暗い、重い、暗い。じっとりと穢い生。読んでいる間、宗教とは何か、ではなくて、宗教とは何だ?と疑問が沸いてしょうがなかった。1900年前後、地球の反対側はこんな感じだったのか…

  • やっと読めました!2ヶ月かかった!
    とはいえ読みにくいわけでも難しいわけでもなく、寝る前にちょっとずつ読む本にしてたら時間がかかってしまった。

    学生時代に一応やったブラジル史(必修だったかも)の中でもカヌードスの反乱は名前は有名でもいまひとつピンと来てなかった事件でした。近代に対する前近代の決死の抵抗なのか、ただの狂信者の集団なのかよくわかんなかったし、教室でもあえて簡単にまとめることはしなかったと思います。

    この小説では多くの登場人物がそれぞれの立場でカヌードスを見て、参加して(巻き込まれて)、語っていて、わかりやすくて立体的なカヌードス像を表すことに成功しているわけですが、全て楽しんで読んで分かったつもりになった上で「やっぱりよくわかんない」に戻って来てしまう。これこそがもしかしてバルガス=リョサの狙いなのではという気がしてなりません。

    自らの中にある他者(この小説ではブラジルという国の中にあるセルタンゥ、コンセリェイロ率いるカヌードス)と向き合えば向き合うほど、正義と罪の、狂信と救いの、幸せと不幸の、健康と不具の、正気と狂気の境界がどんどん曖昧になっていく。
    しかし私たちはこの自らの中にある他者と本当に向き合うこと無しには決して未来に歩み出すことができない。結局孤立したカヌードスは全滅し、カヌードスを理解できなかった共和国もほとんど敗北に等しい被害を出して終わるこの悲劇を歴史の糧とできるのかどうか。

    内なる他者と向かい合い続けて来た多民族国家ブラジルにはできて、見て見ぬフリをし続けてる日本にはできないのかな、という気がしてますが
    やっぱりよくわかんない。

  • オリンピックは関係なく面白そうだったので読んでみた。最初のうちは桃太郎みたいに聖者様に家来が集まってくる話だが後半鬼退治されることに。共和制vs帝政の対立が幕末の倒幕派vs幕府側の対立に思える。ブラジルも日本のように近代化の苦しみを味わっていたのか。(日本が近代国家なのかどうかはさておいて)。さほど難解な表現もなく事実が淡々と述べられているので長い割には読みやすい。最後のあたりが9.11的な気がした。

  • 1人の聖人がブラジルを放浪する中で徐々に信者を獲得し、巡礼団は奥地に宗教的なコミューンを組成する。対して、近代的軍隊を備えたブラジル共和国政府は、軍隊を派遣し鎮圧に向かうが、何故か何度も打ち破れ、悲惨な戦いが両者の間で繰り広げられ最後にはー。

    極めて奇想天外でドラマティックな物語であるが、これが歴史的史実ということに驚かされる。ノーベル文学賞作家、マリオ・バルガス=リョサの代表作であり、歴史的史実を題材として、ブラジルという国家が近代化する中で生じた宗教と国家の軋轢が豊穣な語り口で描かれる。

    ハードカバー700ページ、さらに二段組みという大作であり、叙述は様々な登場人物の視点が複雑に入り混じり、時系列もバラバラであることから、最初は取っつきにくい印象を受ける。しかしながら、徐々に物語の骨子がつかめてくると、登場人物が語るそれぞれの物語が重層的に響き合い、極めて骨太な世界が立ち現れてきて、読み手を飽きさせないあたり、天才的な叙述の才能を感じる。

  • 読み終わるのに一ヶ月かかった。長いが「緑の家」に比べればかなり読みやすく、あまり苦労せずに集中することができた。

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