ひとりの体で 上

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105191153

作品紹介・あらすじ

美しい図書館司書に恋をした少年は、ハンサムで冷酷なレスリング選手にも惹かれていた――。小さな田舎町に生まれ、バイセクシャルとしての自分を葛藤の後に受け入れた少年。やがて彼は、友人たちも、そして自らの父親も、それぞれに性の秘密を抱えていたことを知る――。ある多情な作家と彼が愛したセクシャル・マイノリティーたちの、半世紀にわたる性の物語。切なくあたたかな、欲望と秘密をめぐる傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 語り手はビリー。ヴァーモントの田舎町出身、70歳を目前にし、バイセクシュアルの自分の人生を振り返る。

    13歳で親子ほど年の離れた美人図書館司書ミス・フロストに惹かれ、本嫌いだったビリーは本の虫となり、ディケンズの「大いなる遺産」を読んで作家を志す。彼女に憧れる一方でレスリング部の美しく残忍な少年キトリッジにも惹かれ、バイセクシュアルの自覚を持つ。

    セクシャル・マイノリティな彼を取り巻く人々の混乱や反発、非難や受容、そして愛。
    ミス・フロストによる文学の手引き。
    思春期の彼の初恋・初体験を軸に展開する上巻。

  • 差別や偏見、劣等感、愛する人との不和や別れ、そして親しい人々の老いや病気、死など、性的マイノリティである主人公の人生が描かれる。作家である主人公の回想という形で構成されている点が面白い。わたしは、多くの性的マイノリティの人々が自分自身の性の不確かな時期に感じる恐怖や葛藤について考えた事はなかったし、バイセクシャルであるが故の疎外感にも思い到ることはなかったし、80年代のエイズという病気がゲイの人々に対する差別をも孕む社会問題であったことも知らなかった。小説の魅力は様々あるけれど、時代も年齢も性別も環境も異なる人々の経験や思いを知る、気付くことが出来るという点は大きい。その意味で、この小説を読むことが出来て本当に良かった。多様性に対して寛容な社会をつくるために、小説はとても良い働きをするだろうと思う。
    「きっとすぐに本がどっと流れ込んでくるんじゃないかな」
    「この三つの小説がこの子をどこへ導くか、とにかく見てみましょうよ、ね?」

  • 性的な嗜好が他人と異なると、その自己発見が人生を通じたテーマにもなりうるのだ、ということが発見だった。
    その点は目新しく、しばらく楽しめたが、この分厚い本全体がずっとえんえんその話なので、
    人生それだけじゃないだろうという思いが募ってきた。もし1/3の長さに圧縮されていたら、楽しかっただろうと思う。

  • 70歳の作家が倒錯的な性癖の遍歴を振り返る物語。

    基本的には時系列に物語は語られているが、所々時間がスキップして先走るエピソードが挟まれて読みにくいのはいつもの通りです。
    今回はバイセクシャルな主人公とその周りの同性愛者やニューハーフや異性装愛者を描くことで、真実の恋愛を描こうとしているように思います。
    主人公の父親はいつものように疾走していますが、上巻では主人公は放浪していません。
    古い考えを持ち町から離れられない人たちがいるアメリカの田舎町の設定も作者の真骨頂です。
    読みにくいのに惹きつけられる文章力に圧倒されつつ、下巻を楽しみにします。

  • セクシャルマイノリティを扱った小説(単純にゲイが出てくるとかだけでなく、さまざまな、違ったタイプのマイノリティが同時に出てくる小説)と言えば松浦理英子『親指Pの修行時代』が浮かぶ(勿論他にも同様のテーマを扱っている作品はあるのだろうけど)が、それに比べると随分静かな小説だと思う。図書館が舞台だったりするからだろうか。バイセクシャルは中途半端でずるい、という意見は、実際に聞いたことがあるのではっとした。

  • とある田舎町、男の子も、「それに」女の子も好きだった68歳の「私」。私の少年時代のという回想から始まる物語は、時間も空間もあちこちに飛び、家族の秘密、異性の親友、トランスセクシュアル(トランスジェンダー)の美しい図書館司書と宿敵にして禁断の恋の対象だったレスラーとの奇妙な三角関係、複雑に絡み合う人間関係に物語的に起伏も相まって、結構な重量感。途中でこれはダメだと思い相関図を作成。初アーヴィング。不思議な読み心地を味わいながら下巻へ。

  • 翻訳最新作。美しい図書館司書と同級生の同性に恋する少年。アーヴィング作品ではお馴染みの場所やモチーフが散りばめらつつ、ジェンダーを題材にした異色作かもしれない。上巻では少年を取り囲む人間関係から性の目覚めが浮かび上がる。

  • ハリーお祖父ちゃんが本当に素敵な人です。愛してる人が誰を愛そうと見守ってくれるお祖父ちゃんの優しさやミス・フロストなどの素敵な人に出会いながら主人公が自分のセクシュアリティに向き合い、成長する物語。私自身の性自認について熟考する機会を与えてくれた本。下巻楽しみ!

  • #傷ついて渇く体でもっと知るイヤーブックのページ繰る指

  • ミス・フロストもトランスジェンダーだったのにはたまげた・・・

  • まだ上巻なので、どういった話に落ち着くのかはわからないけど、「ひとりの体で」というタイトルが全てを表わしているような気がする。

    ひとりの体の中にあるいくつもの感情。
    愛というのか、性欲なのか。
    自分のなかでも整理がつかない、しかし決して人に相談のできない思い。

    思春期の、出口のないもやもや。
    自分の知らない広い世界を知りたい気持ち。

    ミス・フロストが図書館司書として、必要な時に必要な本を手渡してあげる。
    ビルの読書は実に幸福な体験だったと思う。
    そして図書館の地下室にあるベッドとバス・トイレだけのミス・フロストの部屋。
    悲しい理由で作られた部屋だけど、羨ましい。

  • ジョン・アーヴィングの作品は全部読んでいるはずだが、この人は「語りなおす」のだなと再認識。セクシャルマイノリティ、ディケンズ、レスリング、不条理な大量の死、熊も少し。これらを織り込みながら、主人公の人生と成長を饒舌に綴りながら、テーマを浮かび上がらせる。村上春樹もこのタイプだと思っている。既読感はあるのだが、作家は言いたいことを伝えるために何度でも語りなおす。
    本書のテーマはLGBT(あー私もアルファベットの正しい順番を考えてしまった)。しかし本来的には、愛に翻弄される人間のクロニクルだ。バイセクシュアルの作家となった主人公は、田舎町で美しい司書に、トランスセクシュアルと知らず恋をする少年時代から、数々の出会いや別れを経た現在までを振り返る。
    時制が自由に行き来し、親友や父を巡るミステリー的な謎解きも含み、そのストーリーテリングのうまさが上質の読書体験を保証する。田舎町のLGBTへの偏見、エイズによる死は禍々しいが、アーヴィング流の暖かいユーモアで包まれている。

  • アーヴィング「ひとりの体で」http://www.shinchosha.co.jp/book/519115/ 読んだ。よかったけど辛い。アーヴィングの小説でおなじみの要素、父の不在、死と暴力、レスリング、弱き者、は同じだけど、ここまで死が怒濤に描かれたものはあるか。身内友人知人愛した人までが次々に死ぬ(つづく

    上巻のエピソードが下巻で別の形になり重みを持って再登場する。無数の伏線とそれを結実させる構成力は見事だけど読んでいて本当に辛い。泣いてしまうので電車の中では読めなかった。老作家の一人称文体は手記ではなく人生話を吐露するような口語体で、相手の想定が気になる、読者ではなさそう(つづく

    女装、同性愛、バイ、身体上精神上の性転換、構音障害、とマイノリティが次々に登場する。キリスト教由来のソドミ法、自由を謳いつつマッチョで硬直したアメリカという国におけるエイズ。冒頭の、大嵐の船上でボヴァリー夫人を読み続ける本好きのエピソードと、ラストのジーの存在が唯一明るい(おわり

  • アーヴィング「ひとりの体で」http://www.shinchosha.co.jp/book/519115/ 読んだ。よかったけど辛い。アーヴィングの小説でおなじみの要素、父の不在、死と暴力、レスリング、弱き者、は同じだけど、ここまで死が怒濤に描かれたものはあるか。身内友人知人愛した人までが次々に死ぬ(つづく

    上巻のエピソードが下巻で別の形になり重みを持って再登場する。無数の伏線とそれを結実させる構成力は見事だけど読んでいて本当に辛い。泣いてしまうので電車の中では読めなかった。老作家の一人称文体は手記ではなく人生話を吐露するような口語体で、相手の想定が気になる、読者ではなさそう(つづく

    女装、同性愛、バイ、身体上精神上の性転換、構音障害、とマイノリティが次々に登場する。キリスト教由来のソドミ法、自由を謳いつつマッチョで硬直したアメリカという国におけるエイズ。冒頭の、大嵐の船上でボヴァリー夫人を読み続ける本好きのエピソードと、ラストのジーの存在が唯一明るい(おわり

  • 【選書者コメント】セクシャルマイノリティーに興味があったため

  • ミス・フロストは何者かまだよくわからない。年上のソプラノ歌手と付き合ったり、レスラーの美少年に惹かれたり展開が早くて面白かった。下巻も楽しみ!

  • これ以上の赤裸々な文章を読むことはもうないだろうな。主人公のビルみたいに思春期の頃にミス・フロストの様な司書に出会っていたらなと少しビルが羨ましく感じた。

  • ある作家の問わず語り。アメリカの小さな町で、離婚した母と祖父母の家で暮らす少年時代から話は始まる。構音障害で時々発音ができない単語があったり父親を知らなかったりと、ちょっと複雑な様子。母の再婚相手や図書館の美しい司書と教養ある大人に惹かれるのが自然に感じた。そして私立高校で出会う冷酷なレスラーの魅力的な少年。自分とどこが似た少女にも惹かれながらも、ある人が大変な犠牲を払いつつも彼を受け止めてくれる。瑞々しい思春期の上巻であった。

  • あらすじだけでどストライク。アーヴィングは2作目。
    何故か今まで女性やと思い込んでた。ジョンやのに…。
    下巻へ続く。

  • 「ひとりの体」…なるほど、そういうことね。

  • 簡単に分類しちゃダメですな。

  • 失踪したプレイボーイの父親、神経質な母親、女装癖のある祖父、シェイクスピアの演技指導をする義父。
    少年期は貧乳の司書に惹かれ、思春期はレスリング部の男性に惹かれながらもガールフレンドと関係を持ち、バイセクシャルと言えないままゲイのフリをする主人公は作家になる。
    主人公の母親の「プロンプター」という役割(立ち位置を指示したり台詞忘れのサポートをする)、なにか補足があればよかった。メジャーな言葉だろうか?

  • 社会に関わっていくよ! と宣言しています。
    まだまだ小説界をリードして下さいね。

  • この命題はちょっと苦手。やっと上巻が終わって、下巻が待っています。

  • 少しずつ読んでるけど、なんかいい。ユーモアも忘れないし。下巻も楽しみ。

  • 演劇、シェークスピア、同性愛…どれも興味のない題材で入り込むまでが大変だし、これは自伝なのだろうかと戸惑いながら読んでいる。それでも読ませてしまうアーヴィングの小説は、やはり面白いのだと思う。しかし上巻で繰り広げられるシェークスピア劇の解釈などは退屈。

  • 舞台を観ていても、舞台ではなく観客をみていたり
    本を読みながら他の本を考えたり、そういう視線のずれを持つ主人公にグイグイ引き寄せられる。さあ盛り上がってきたところで下巻へ。

  • ミス・フロストという美人司書が冒頭から。

  • 相変わらずって感じだなぁ、、、

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    「美しい図書館司書に恋した少年は、ハンサムなレスリング選手にも惹かれていた。多情な作家の性の記憶をめぐる切なく温かな傑作長篇。 」

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