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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784105217129
みんなの感想まとめ
主人公が妻と子を失った後、無声映画の俳優の人生を追う物語は、深い感情と淡々とした筆致で描かれています。デイヴィッド・ジンガ―の内面は重く、彼のイライラや葛藤がリアルに伝わってきます。物語の中の物語とい...
感想・レビュー・書評
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若い頃、ポールオースターを読むのがかっこいいと思っていた時期があって、著作を読んだような気がするけれど、全然思い出せない…。
『あの本、読みました?』 で激推しされていた本著は、妻と子を亡くした男が無声映画の俳優の人生を追ったもの。
主人公、デイヴィッド・ジンガ―の頭の中の思いが淡々と1人称でひたすら描かれていています。考え方が重くて暗く、イライラしているデイヴィッド。そのイライラぶりや、妻の親友とぶつかるところなど、もどかしさを感じます。
ポールオースターの十八番、物語の中の物語が私はあまり合わなかったけれど、淡々とした文章の中に暗くて強い美しさを感じました。不穏な雰囲気は特別なものでした。 -
ありがとうオースター、安らかに。
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ポール・オースターという作家は本当に不思議だ。理知的な書き手であることは疑いえないのだが、計算ずくで書いているとは思えない「天然」のストーリーテラーとしての才をも同時に感じさせる。この長編でもオースターは、右へ左へと自由自在に転がして私たちを誘導していく(ツッコミどころが多いと言えば多いのだが、それを言い出せばこの物語そのものが語り手の妄想だったという可能性すら考慮しなくてはならなくなる)。誰にも見せないためにわざわざ作られる映画、というカフカばりの喜劇的なモチーフ。オースターのコミカルな側面が一皮剥けた
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『無声映画役者に振り回された人たちの物語の物語』
実在するかのような映画の描写、実際に目の前で起きているかのような回顧録、これらが、入れ子になって重なりあい、ますます物語に引き込まれていく。複雑だけど自然な繋がりを持つ構成と目に浮かぶような細やかな描写は、さすが、オースター! -
はじめてのポール・オースター。
オースターの名は洋書の棚で以前からよく目にしていた。パラパラとめくったこともある。ぱきぱきと乾いた文体が心地よかったのを覚えている。それ以来、いつか英語で読みたいと思っていた。何といっても、現役作家である。新刊の発売と同時に洋書フロアに駆けつけてお買い上げ、一度はやってみたいじゃないか。
で、ある日のこと。
図書館で翻訳文学の棚にオースターの作品を見つけ、その帯に『オースターの最高傑作』の文字を見つけ・・・・・・ふらっと手にとってしまった。ああ、訳書は読まないでおこうと思っていたのに。
読み始めてすぐ、これは訳がいいのだな、と思った。原文の独特な雰囲気を損なわずにここまで読ませるのは翻訳者の技量だろう。日本語訳で読んで作風のイメージが崩れるのを恐れていたのだが、この点に関しては杞憂だったかもしれない。柴田元幸訳ははじめてだったのだが、気に入った。なかでも映像描写の巧みさには感心した。チャップリン、キートン、ロイドなど、無声の喜劇映画は大好き。その味わいが文章でここまで表現できるとは、恐れいった。著者、訳者双方の確かな実力のなせる業だ。
これは是非とも原文で読まなくてはいけないな、そう思った。
また楽しみが増えたなぁ。 -
翻訳小説には、ありがちな拒否反応が私にはあります。幼稚ですが登場人物が、分からなくなってしまう。そんな私が何故が読みました。分かりやすかったです。何層にも重なるストーリーに魅力があります。
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存在の不確かなモノを追う物語
オースターの小説には,このパターンが多いと思うが,その中では,現実味のある読み応えのある内容だった。
主人公が追っていくうちに,存在の不確かなモノの存在がだんだん現実味を帯びてくる。
ふわふわ漂っていた物語が,最後はしっかり着地したような感じで,とても面白く読めた。 -
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読み出したらとまらない。
ストーリーテラーってこういう作家のことを言うのか。
ニューヨーク三部作は、抽象的な部分も大きかったが、この本では、家族を亡くした主人公の話、突然いなくなった俳優の話、映画の中の話などが重なって、完成度が高くなっている。 -
オースターは作中作がとても魅力的な作家のひとりだと思うんだけど、今回の作中作はどれをとっても逸品といえるようなものばかりだった。
飛行機事故で妻と二人の子供を失い、失意の底にいる主人公デイヴィット。そんなある日偶然目にした昔の無声喜劇映画に出演しているヘクター・マンという俳優にほれ込み、彼の出演作や人生を辿り、研究書の執筆に勤しむ(彼は大学教授)。ヘクター・マンはわずか一年半ばかりスクリーンの中で活躍した後、突然表舞台から姿を眩ませ、以降なんの目撃談もない。そののち別の仕事(シャトーブリヤンの翻訳)をしている最中、主人公の著作を読んだヘクター・マンの妻であるという人物から手紙が届き、相手は面会を希望している。
明かされるヘクター・マンの人生、主人公の復活、ヘクター・マンの出演作、ヘクター・マンが人知れず創るためだけに創ったフィルムたち。どれも鮮明。
とりわけ私はヘクター・マンが創るためだけに創ったフィルムが好きだった。
それにしてもどうして映画をこんなに魅力的に描写できるのかと考えていたんだけど、オースターが実は映画の脚本を手掛けていたり監督業の経験もあるということを本作のあとがきで知った。 -
秀逸なストーリーテリング。一つ一つの偶然によって引き寄せられた登場人物の半生がそれぞれに厚みを持ち、それが互いに響き合って大きな物語のうねりとなり壮絶な終着点に行き着く。 おもしろい小説のお手本のような厚みとまとまりとのバランス。
いろんな点で「フリッカー あるいは映画の魔」を始終思い出させられたのは俺だけかな。 -
ポールオースターのなかでは苦手な部類だった
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「世にごく稀にいる、精神が最終的に肉体に勝利を遂げる人物」「年齢はこうした人々を貧しくしない。老いさせはしても、彼らという人間を変えはしない。長生きすればするほど、彼らは自分の本質をますます豊かに、消しがたく体現していく。」
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無声映画の描写が素晴らしい。柴田元幸氏の翻訳の真骨頂だろう。
物語は後半に向かい怒涛の展開を見せ、わずかな希望を残すにとどまるが、起きてしまったことに比べれば読後の絶望感は意外なほど軽かった。
文章が端正さを極めているからだろうか。
「面白い本を読んだ」と心から思えた。 -
はじめて読むポール・オースター。
圧倒された。
「緻密」というしかない記述の濃さ、厚さ。
自然さゼロの、限りなく人工的な展開とそれを支える言葉たち。
はじめは読んでいるつもりが空転していることに気づき、舌打ちしながらページを繰った。が、次第にリズムが合い始めたのか、言葉の海に溺れることなく泳ぎ切れた。
ふうっ!(充足のため息) -
白黒映画時代に失踪した俳優。
そして数十年後にひょんなキッカケから、
その男について本を書いた私。
ある日、俳優の妻を名乗る男から手紙が届いて---
ミステリアスなはじまりに惹きつけられる。
展開も波乱に満ち、人物の心情も深く書き込まれている。
話中に映画が取り込まれており、
登場人物を介して物語を観ることで、
多層的な表現がされている。
話の表層部を浅く読み取ると
男と女の愛について描くのに割かれたページが多かった。
長いもの短いもの深いもの浅いもの。刺激的だった。
究極の償いとは何かについて、
思考実験ともいえるほど張り詰めた条件で行われているな。
という印象を受けた。
(オースターさんの作品はいつも読んでいて思考実験的な趣を感じてしまう) -
ポール・オースターは初めて読みましたが、他の作品も読みたくなった。先の読めない展開、衝撃のラストには凄いと思う。悲劇的な内容的が続き、主人公の生きる希望でさえもどこか悲劇的だ。でもこの終わり方は予想してなかったので新鮮でした。訳も自然で読みやすかった。
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