ブルックリン・フォリーズ

  • 新潮社
4.15
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105217150

作品紹介・あらすじ

傷ついた犬のように、私は生まれた場所へと這い戻ってきた──
一人で静かに人生を振り返ろうと思っていたネイサンは、ブルックリンならではの自由で気ままな人々と再会し、とんでもない冒険に巻き込まれてゆく。9・11直前までの日々。
オースターならではの、ブルックリンの賛歌、家族の再生の物語。感動の新作長編。翻訳は柴田元幸氏。

感想・レビュー・書評

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  •  31年間勤めた保険会社を定年退職して妻と別れ、静かに死ねる場所を探すうちにブルックリンにたどり着いた「私」と、その周りの人たちが織り成す、おかしくて切ないお話です。

     人間の不完全さや愚かさに対する作者の優しい眼差しを感じます。

     古書店経営者のハリー・ブライトマン、いい味出してますね。ホテル・イグジステンスは美しい夢想だなあ……

  • ニューヨーク3部作のような雰囲気を期待していたらそうではなかった。オースター作品ってなんかもっとクールで都会的なイメージだったんだけど、これはなんだか温かみがある。オースターの書く人間喜劇かな。ラストの畳みかけるような感じが良い。柴田元幸さんの翻訳はほんといいなぁ。2013/180

  • 美しいNYの風景。
    映画化されたら素敵だと思う。
    ブルックリンに住む個性的な人々の群像劇なんだけど、どの登場人物も愛すべきキャラクター。
    人生に不器用ながら成長していく過程に、
    ウィットに富んだ会話に、こちらまで元気づけられるし、読んでいて楽しかった。
    何よりも作者のブルックリンを見つめる眼差しが温かい。
    誰でも文学的なことを考えるときって、多かれ少なかれ、主人公みたいな心境になること(主人公は人生こんなハズじゃなかったと感じてる平凡な中年)が多いので、作者の目の付けどころにもやられた感がある。

  • ポールオースター「ブルックリンフォリーズ」http://t.co/TvmpjZtn 読んだ、良かった。。。オースターには、無機質でひんやりと沈んだ世界と、温かく前向き(でもウェットさは無い)世界との2つがあると思うけど、これは後者。楽天的ってすばらしい。(つづく


    辛い経験や酷い事件や悲しい出来事もあるけれど、全体は暢気。人が生きていく力強さを感じる。「本の力をあなどってはならない」には本無しの生活が考えられないわたしにはぐっときた。で、そのまま終わるのかと思いきや、最後に、ある驚きが。落とされる影に、しばし考え込んでしまった(おわり

  • 新潮社ホームページより引用。
    「六十歳を前に、離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。わが身を振り返り『人間愚行の書』を書く事を思いついたが、街の古本屋で甥のトムと再会してから思いもかけない冒険と幸福な出来事が起こり始める。そして一人の女性と出会って……物語の名手がニューヨークに生きる人間の悲喜劇を温かくウィットに富んだ文章で描いた家族再生の物語。」

    「folly」とは「愚かさ」「愚考」というような意味合いの言葉だそうで、その名のとおり、読み始めて物語が始まってかなり長い時間、なんか冴えない話だし読むのやめようかな・・・と思っていた。

    しかしある人物の登場から突然潮目が変わり、ドライブ感が出てきて、冴えなかった主人公ネイサンも鈍く光ってくる。

    「2、3分のあいだ、私はルーシーが芝の上を駆けめぐり犬に棒を投げるのを見ている。トムは私の左でドン・デリーロの戯曲を読んでいる。私は空を見上げ、過ぎていく雲を眺める。タカが1羽、旋回して視界に入ってきて、また消えていく。タカが戻ってくると、私は目を閉じる。何秒も経たないうちに、私はぐっすり眠っている。」

    小説が始まった時はこのような幸せな描写がなされるとは想像できなかった。

    解説にもあるが、オースターは2000年代に入ってから「自分の人生が何らかの意味で終わってしまったと感じている男の物語」を発表し続けているそうだ。

    僕が読んだのは確か自叙伝『冬の日誌』だった。読むのがなかなか辛かったが心に残った場面がいくつかある。5年ほど前に読んだと思うが、自分も当時の著者の年齢に近づいてきた。

  • 冒頭、半ば、最後と、ハードカバーのイラストを眺めたときの印象が毎回変わる。名もなき人々に思いを馳せる。

  • なぜだろう。本に引き込まれる。
    死に場所を求める60歳の男と期待はずれの甥。
    彼らをとりまく物語。
    生きるとは愚かな行いの連続なのかもしれない。
    その中にこそ、希望や幸福が見出せるのかな。

  • ブルックリンに死に場所をもとめてやってきた初老の男が甥っ子に再開し、彼や近所の住人とちょっとした冒険を経験し、やがて幸せを取り戻していく。

    前向きに人生を切り開いていく主人公は、街から大きな力をもらっている。

    もちろんパラダイスみたいな描きかたではなくて、姪っ子はひどい有為転変をくぐり抜けるし、他のひとも多かれ少なかれ挫折を味わっている。最後に9.11が言及されるのも、楽園が恐ろしい暴力にいつも取り巻かれていることの自覚なんだろう。

    それでも、オースター作品のなかでは、ポジティブで楽天的なトーンがめずらしく支配している。
    作者はこの街が好きなんだな、というのが伝わってくる。

    オースターだから退屈はしないしなかなかいい話だとは思うけど、初期作品にあった、あのドキドキするような不安な輝きはやっぱりこの作品にもない。この後の作品もおんなじなんだろうか。3.5点です。

  • 前評判を聞きつつも、読書がしんどくなることもありまして、しばらく置いておいた本です。
    正月休みに手に取りまして、主人公の語り口に慣れましたら、面白くなって、一気に読んでおりました。

    主人公は、本人曰く「もう人生終わってる」人。生命保険の調査員で長く勤め、妻と子供がいて、子供が巣立ち、その前から夫婦はギクシャクしていて、結局離婚。その後、肺ガンが分かり、手術でしばらく生きれそうになった人。後、何年生きて、何をするか未定でふらりと下町に転居。
    誰とも関わらず、ひっそり・・・
    最初はそんなことを思っていたけれど、数年ぶりに甥に出会い、甥の雇用主に会い、なじみのレストランのウェイトレスと会話するようになり、失踪した姪の子供が転がり込んで・・・と、いろんな人と関わるようになっていきます。
    当たり前だけど、完璧な人はいない。それどころか、さすがブルックリン?ゲイ、ドラァグ・クィーン、人生の迷子等々。
    とんでもない醜悪な事件も起これば、心温まるひとときもありで。
    主人公は、世間に背をそむけるわけでなく、受け入れ関わっていくのが好印象でした。
    前科・前歴色々な人々が、ごったまぜになりながらも、何とか自分たちなりの生活の形ができていく様は、ぱっと明るいハッピーエンドではないですが、アメリカらしい楽天的な人生観を感じます。
    9・11の影が差し込むその日でも、一人一人はそれなりに幸せを味わっていたのさという、とある群像劇。
    よい本です。

  • ポール・オースターはムーン・パレスしか読んだことなかったけどやっぱり読み応えあるなと感じる。
    情景描写もセリフもぎっしり詰まってて好きだ。
    トムが語るカフカの話がとても素敵ですね

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