- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105217198
作品紹介・あらすじ
外見は変わっても、君はまだかつての君なのだ――。心の地層を掘り起こして記す回想録。初めて書いた詩。父の小さな噓。憧れのスポーツ選手たち。心揺さぶられた映画。エジソンとホームズ。ユダヤ人であることとアメリカ人であること。学生運動の記憶。元妻リディア・デイヴィスへの熱い手紙――。現代米文学を代表する作家が、記憶をたぐり寄せ率直に綴った報告書。『冬の日誌』と対を成す、精神をめぐる回想録。
感想・レビュー・書評
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「冬の日誌」と対を為す回想録。
あのとき何を感じたのか、という観点で書いてありますが、幼いまたは若い頃な考えたり感じていたことを思い出し、誰かに聞かせるのはなかなか難しいことだったり恥ずかしいことだったりすると思います。ましてや、恋人に送ったラブレターまで持ち出して。
非常に面白く読みましたが、自分はその頃何を感じ、考えていたのか、思い出しながら読んでみると、けっこう浅く薄かったなあ、と今更ながら後悔しきりです…
自分を見つめ直すときに、ぜひ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冬の日誌の方が好き
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自分が自分であること――すなわちポール・オースターがポール・オースターであること――をめぐる精神史。
これまでの作品(特に「ニューヨーク三部作」などの初期作品)においては、ポール・オースターという名前や存在を装置として活用することで新たな文学を切り拓いてきたオースター。その作者が人生の老いという冬の時代にさしかかった現在、こらまでの精神の変遷を赤裸々に語っています。たとえば、インタビューなどではこれまであまり詳しく語ってこなかったみずからのユダヤ性なども語られています。
とはいっても、単なる回顧録などではなく、みずからを「君」(you)と呼んで語りかけることで生じる自己と自己自身との距離が生み出す緊張感も伝わってきます。そして、その緊張感も含めて見事に日本語へと変換している名訳もうれしいです。 -
先に読んだ『冬の日誌』と対をなす作品。こちらもオースターの半生の回顧録ではあるものの、わたしはより深く切り込んだ感じのこちらの方が好み。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/683723 -
最近のオースターは内省度合いがどんどん強まっていて、一体どこまで行くんだろうと思っていたのだけれど、本書でもって遂にその頂点まで行ってしまった。
前作『冬の日誌』と同じく、若き自分に「君」と語りかける手法は健在。二番目の章「脳天に二発」で展開されるオースター定番のストーリー内ストーリーも健在。
でも、やっぱりいちばん衝撃的なのは、後に最初の妻となる女性に宛てて若きオースターが書いた手紙と、それに関する自らのコメントから成る三番目の章「タイムカプセル」。若き自分をまるで他者のように扱って、読者と一緒に分析しているかの様相なのだけれど、いや、本当によくぞここまで。もし自分が若かりし頃に出したその類の手紙が出てきたとしても、それを誰かと一緒に分析するなんて、とてもとても。。でも、それを何だか嬉しそうにやっている感じが伝わってくるから、たまらない。
オースターの内省、ここに極まれり。 -
少年~青年までの過去を綴る。オースターは大作家になったので(?)自分語りをしたくなったのだろうか?子供の頃のことをこのように鮮明に覚えているのか、フィクションか。
なかなか不思議な作りで、2部では映画について詳細に説明する。さすが作家というかこの語りが非常にうまく、映画パンフレットなどのあらすじに留まらない、まるで読者もその映画を見たようなリアリティがある。巻末のアルバムでは映画のシーンを見ることもできるが脳内に構成できたイメージのままだ。
3部は元妻であり作家のリディア・デイヴィスとやり取りした手紙。これも本物なのかどうか、赤裸々な青年時代の記録となっている。
「冬の日誌」を先に読むべきだったかな。 -
現代アメリカ文学を代表する作家の精神の回想録。子どもの頃から学生時代までの心の記憶や、元妻に書いた手紙も引用されている。
なんだかバラバラとした断片的な印象だったけど、人間の内面には、そもそも統一感などないのかもしれない。
当時のアメリカの社会的問題も興味深かった。