名誉の戦場

制作 : Jean Rouaud  北代 美和子 
  • 新潮社
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本棚登録 : 10
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105294014

感想・レビュー・書評

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  • 図書館本です。池澤夏樹さん編・世界文学全集にもニザン『アデン、アラビア』とカップリングされて入っていますが、『アデン―』は有名な邦訳で読んだし、こちらの訳は同じ北代美和子さんのものなので、単体でいいや、と(笑)。1990年のゴンクール賞受賞作と、意外と古くないのに、表紙データが出てこない…。

    おんぼろのシトロエン2CVに乗るおじいちゃんとおばあちゃん、敬虔なカトリックのマリーおばちゃんと、その周りの物語。語り手の「ぼく」との関係が見えにくいけど、そこは持久戦(笑)。冒頭でノれるかどうかが結構大博打なところもありますが、この、下ロワール地方の雨が降る風景描写の細やかさと美しさは見事です。思わず引き込まれる!

    軸になる人物のうちでは、マリーおばちゃんの印象が強いです。疎まれぎみながらも隣人たちに世話を焼き、病気にはお医者さんよりも守護聖人さまを優先する、彼女の信心深さと土地柄を表すのか、聖書関連+仏文古典の引用がいたるところに出てきて、「やべぇ、置いてかれる!」と一瞬あせる(笑)。もちろん、詳細な訳注がつけられており、両者に疎い私もノープロブレム。

    抑制の効いた滑らかな文章も好みです。この、独白のような長々としたセンテンスは、やっぱり仏文ならでは、って感じでしょうか。ピリオド、どこよ(笑)?それに、フランス人はロマンスよりも、こういう、「おじさん」「おばさん」といった、ちょっとだけ離れた身内を細やかに描くのが実にうまいなぁと思います。タイトルはいきなり感があるものの、秘められた感情とともにボディーブローのように効いてくるし。

    河出の世界文学全集に入っていなければ、おそらく一生読まなかった作品です。池澤さん、ありがとうございました。訳者さんのあとがきによれば、著者さんには連作の構想もあるけど、今のところ続編の邦訳もないし…。もったいないなぁ。

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