逆光 (下) (Thomas Pynchon Complete Collection)
- 新潮社 (2010年9月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (845ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105372057
作品紹介・あらすじ
"侵入者"は実在していた。歪み始める時間と空間、儚き者たちの恋と運命。"不都号"の面々は自分たちの任務に疑問を抱き始める。トラヴァース家の長兄リーフは賭博師として流浪を続け、次兄フランクはメキシコ革命に身を投じた。末っ子キットはヴァイブ家の元を去り大西洋を渡る。そして唯一の娘「嵐の子」レイクは…。膨大に登場する、愚かしくも滑稽な人物の数々。その愛しさと哀しさ。もつれ合う彼らの生は、やがて訪れる驚愕の一瞬を目撃すべく、急速に収斂してゆく-。歴史小説にしてSF、恋愛小説にしてポルノ、テロ小説にして大河家族小説。綿密な史実の積み重ねが現代を照射し、荒唐無稽な挿話が涙を誘う。文学の垣根を超える貪欲さと自由さが(改めて)世界中の絶賛と茫然を呼んだ空前絶後の巨篇、世界への祈り。
感想・レビュー・書評
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上巻が理解出来ないと、やっぱり下巻もさっぱり理解出来なくて、上下巻でたぶん状況を理解できたのは1行もないかも・・・。でもきっと、きちんと読めれば話が色々と絡みあって、すごく面白い小説なんだろうなぁ・・・。
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2013/2/4購入
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上巻読了段階では予想だにしない展開。
19世紀末のアメリカから始まった物語は、下巻において、20世紀初頭の「世界」―ここでいう「世界」は抽象的な世界ではなく、具体的な、いうなれば、大地の香り漂う「世界」!―を描いていく。そして、各登場人物たちの放浪はやがて一つの場所に収斂し――ああ!面白すぎる!!
とにかく、下巻においては彼らのホーボーがやたらと面白く――といってもすんなりアタマに入ってくるわけではありませんが、中盤からグルーヴ出まくりで一気読みでした。この突然ギアがはいってしまう感覚もピンチョン体験。
(加えて、「具体的な世界」と思っていたものに揺さぶりをかけられて、アタマがグラグラするのもピンチョン体験。恐ろしい)。 -
ピンチョン「逆光」の下巻
相変わらずの空間列の飛び具合と各エピソードのぶつぎれ具合炸裂ですが、それもピンチョン小説の個性。最後で意外に収束するんで大丈夫です。まあ相わらずの知識とガラクタのごった煮状態で話はあちこち飛ぶし辛いんですが最後でキチンと風呂敷折り畳まれるので大丈夫です -
3ヶ月近くかけてピンチョンの逆光をようやく読了。疑似科学、SF、ファンタジー、歴史、エロ、テロ、恋愛、家族・・。あらゆる小説のバリエーションをいっしょくたに詰め込んだような物語。ひとつの家族の物語を軸に展開するので、わりとキャッチーな筋のはずなんだけど、感想としては「ちょっと何いってるかわからない」。
独立していたり、互いに関連していたり、意味があったり、なかったりする膨大な関係の網の目がごちゃごちゃのまま語られるからわけわかんない。
たぶん総体だと○年×月、こんなことがありました、てひとくくりの意味にまとめられちゃうんだろうけど、網の目のひとつひとつが、バカバカしいし、悲しいし、笑えるし、美しい。つまりはそういうことなんじゃないかと。だからあえて解きほぐさないんだと。
こういうお話です、と一言ではとても表せないし、表してもしょうがない。統一感のないやたらとたくさんのパーツを積み重ねたいびつな物語だし、その一つ一つが等価で意味がある、あるいは等価で意味がない。
ウェブ・トラヴァースという父親から始まる網をすべて書く、という壮大な試みなんだと思う。細部に至るまで想像して、想像し尽くした上ですべてを書き尽くそうとしているんだと思う。あったことも、あったかもしれなかったことも。だから理不尽に見えるほどわけわからないことで満ち満ちてしまうんだと思う。
でも、M&Dと同様、最後にすばらしい終わりを用意してくれたおかげでやっぱりとても好きな小説だ、て自信もって言える。
しばらくしたらもう一度読み返したいけど、そんな元気出るかなあ。
あ、あと「V.」の読者に朗報です。メラニーは生きています!あれはラズベリージャムだったんだって。よかったね。