トマス・ピンチョン全小説 スロー・ラーナー (Thomas Pynchon Complete Collection)

  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105372064

感想・レビュー・書評

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  • トマス・ピンチョンの今から50年も前の初期短編5作の集。帯にはかいぶつ出現とある。どれも登場人物のキャラクターがいい。まるで映画のような友人との会話はリアル。

    「スモール・レイン」は陽気な軍医の映画「マッシュ」を思いだす。

    「ロウ・ランド」は1つの物語の登場人物が話すもう一つの物語があったりしてもうこの頃から物語が交差するピンチョンの作風が形成されていた。

    「エントロピー」これぞピンチョン節といったところであろうか?アパートを出る記念パーティーに友人達が集まりドンチャン騒ぎ。ハチャメチャ混沌ストーリーの中に小さな命の終焉がある。マックスウェルの悪魔の話が登場すると理系には嬉しい。

    「シークレット・インテグレーション」は天才少年が登場したりして愛すべきガキ共の悪戯物語。

    どれも面白く読め、珠玉の短編集であった。ますますピンチョンに嵌まっていく・・・

  • ピンチョン唯一の短編集だが入門書に非ず。1編を除き全てデビュー前に書かれたものであり、序文では著者自らが収められた作品に対して駄目出しを始める始末である。いいのか。しかし理不尽な社会への抵抗とノスタルジアの入り混じる「シークレット・インテグレーション」は白眉の出来だし、序文の回想からは彼がビート以降ヒッピー以前という立ち位置に自覚的であったことが読み取れる興味深い内容となっている。ピンチョン・マニア向けの作品な気もするのだが、そもそもピンチョンを読もうと思う人は全員マニアな訳だから問題ないのかもしれない。

  • アメリカの覆面作家ピンチョンの初期短編集。熱力学、スパイ、少年、ポップカルチャー、そして愛すべきダメ人間たち…。
    情報密度が濃く一筋縄ではいかないが、お得意の悪ふざけはこの頃から健在。後の豊穣な文学作品の萌芽が味わえる。

    特に「イントロダクション」は傑作で、ピンチョンによる自作の解説なのだが、めちゃくちゃにこき下ろしながら文学論を展開しておりファンなら必読級。たまんねえぜピンチョン。

  • 初期短編集。ピンチョン初です。知識、教養の深さを感じます。フィクションとノンフィクションの間をさまよう感じが気に入ります。他のピンチョン作品も読んでみようとモチベーションが出来ました。合わせて、パワーズも読もうかなと。

  • 前書きで本人がダメだと言ってるので他の作品を全部読んだ上でまだ読みたかったらよもう

  • 若手時代の習作とは思えない非常に出来のいい短編集。象徴的に出てくるゴミの山のイメージはやはりエントロピーに対する意識が窺える。難解に思われがちな著者の作品だが、シークレット・インテグレーションは子供目線で切り取ったせいか、非常に読みやすく、また読後感も心地のいい名作になっています。子供目線での大人社会の歪、それを覆い隠す実態の無いシステムなど、語り口がとにかく良い。

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  • 過去の短編に対してのイントロダクションが素晴らしい。世界へ飛び出す前の助走(序奏)。

  • ピンチョン初期の短編集。
    エントロピーとアンダーザローズは結構すき。
    人物描写の美しさや巧妙性は同時にたくさんの偏見を生み出すかなとも思う。彼自身も最初の章でいっているように。

    一番最初の序文(自分の若き頃の作品への自虐ネタ)が一番よかったとおもう。ピンチョンの後期の作品を読みたい。

  • アメリカを代表するカルト作家の唯一の短篇集 
    本書は2年前に刊行された新訳(佐藤良明)です。作者のトマス・ピンチョンは謎の作家(公式の場に現れない)にして寡作(時には10数年のブランク)、しかし待ちあぐねた作品はどれも長篇(どちらかといえば超長篇)で期待に違わぬ良質なもの(彼の先鋭的な読者は失敗作という基準を放棄している)、ゆえに本書はピンチョンの学生時代(1950年代後半)の習作が読めるということで貴重なものとなっています。
    処女作にはその後の作品で開花する要素のすべてが胚胎してると言われますが、解説によればピンチョンにとってこれらの小品は本番前のリハーサルのようなものだったそうで、事実、本書の最初に掲げられる「イントロダクション」(作者自身による言い訳)には、これらは徒弟による試し書きで、今読むのは当人にプライドにとってたいへん辛いことだ、と書かれています。「学習遅滞者」というタイトル自体が自虐的です。
    「スモール・レイン」や「ロウ・ランド」は当時流行の実存主義的な香りのする文学志向の作品です。「エントロピー」はその題名と共に長篇を除けば、ピンチョンにとって最も有名作品。訳者によれば、アメリカの名高き文芸誌に掲載(1960年春)され、後の年間ベスト・ストーリーの一遍にも選ばれたそうだ。ピンチョンの作品のを読むのに別に物理学や化学、情報工学、量子力学といった知識は必要ありません。それらは他の多くのオタク的サブ・カルチャーへの言及と同じような扱いでよろしいかと思います。あくまでも記号として分っているつもりで読み進めばよろしい。
    「アンダー・ザ・ローズ」はある国のさほど遠くない過去における出来事、スパイやエージェントがうごめく歴史の表舞台、錯綜する思惑、ゆえにことはシナリオ通りには進まない。
    「シークレット・インテグレーション」はピンチョンにしてはビックリするくらい真面目で正統な作品。凝っているのは題名くらいか。これは雇われ職人が注文に応じて作ったものらしい。雇い主は「サタデー・イブニング・ポスト」。これを通俗と片づけるほど僕はシニカルにはなれません。素直に楽しめるし泣けました。イマジナリー・フレンドを中心とした少年たちの、ささやかな反抗のためのはかなき紐帯。僕にとってはスティーヴン・キングの「THE BODY(死体)」(映画スタンド・バイ・ミーの原作)に匹敵する思春期小説です。

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