ヴァインランド (トマス・ピンチョン全小説)

制作 : Thomas Pynchon  佐藤 良明 
  • 新潮社 (2011年10月1日発売)
4.14
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  • レビュー :12
  • Amazon.co.jp ・本 (621ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105372101

作品紹介

1984年、夏。別れた妻をいまだ忘れられぬゾイド・ホイーラーは、今年もヴァインランドの町で生活保護目当てに窓ガラスへと突撃する。金もなく、身動きもならず、たゆたうだけの日々。娘のプレーリーはすでに14歳、60年代のあの熱く激しい季節から、どれほど遠くまで来てしまったことか-。だが、日常は過去の亡霊の登場で一変する。昔なじみの麻薬捜査官が示唆したあの闇の男、異様なまでの権能を誇り、かつて妻を、母を、奪い去ったあの男の、再びの蠢動。失われた母を求める少女の、封印された"時"をめぐる旅が始まった。超ポップなのに、この破壊力。作品の真価を示す改訳決定版。

ヴァインランド (トマス・ピンチョン全小説)の感想・レビュー・書評

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  • あ、あ、あほうであるー!読書でこれだけ爆笑したのは何年ぶりだろ。TV番組や映画、音楽など無数の固有記号を散りばめつつハイテンションで突っ走っていく超ポップな物語。とにかく、シャブ中のドスケベジャップ、フミモタ・タケシと怪しい忍術を操るくノ一・DLチェイスティンのコンビが反則級なまでに笑わせてくる。言うもはばかる忍法奥義「チンピラ・ゴジラ」って何なんですか先生。こうした笑いに縦軸としてのアメリカの歴史を組み込んでいく辺りはさすがのピンチョンと言いたい所だけど、まずは単純に快哉を叫びながら楽しむべし。最高だ!

  • いつものピンチョンらしく登場人物が多く、今誰の話なのかも不明瞭なところが一筋縄ではいかない小説なのですが、天邪鬼な私はこの手の小説に惹かれるのです。登場人物が俗語混じりで話すシーンが多く、映画を見ているような感覚で読めた。赤ん坊のプレーリーが可愛く描かれていたのが良かった。

  • ものすごく面白かった。
    場面や視点の変化が目まぐるしくて私の読解力では理解が及ばないところが多々あるのでまた読みたい。
    アメリカのサブカルチャーに詳しければもっと楽しめただろうにと思う。
    先が気になるのに、情報量が多すぎて疲れてしまい毎日少しずつしか読み進められない本だった。
    個性的すぎる設定や登場人物たちのやりとりが軽妙で読んでいて楽しかった。
    くノ一のエピソードが好き。かっこよすぎる。

  • やばすぎる謎の作家トマスピンチョンをこれから読みます。楽しみだ!

    超ポップ、そして感動的。

  •  トマス・ピンチョン著、550Pくらいある長編小説。60~80年代アメリカを舞台に、突き抜けたポップさ持つ人物達やサブカルチャーがこれでもかというほど詰め込まれている。数十年の規模で視点は揺れ動き、記憶のフラッシュバッグが現実に差し込まれ、時系列はかなり入り組んでいる。
     どう評価したらいいのか迷ってしまう小説だった。おそらくこれはアメリカのオタク(日本的に言えば)による小説なのだろう。はっきり言って私はこういうポップな小説が好きではないのだが、これだけの濃さと重量で書かれると、あまりに突き抜けていてかえって嫌気も差してこない。ゴジラや忍者が出てきたり(日本ネタが結構多い)、大学で革命が起きたり、そこら中でロックンロールと麻薬が蔓延していたり、実名のまま映画やテレビ番組やロックの曲が乱発したり(まさに乱発としか言いようのないネタの量)、この時代の特徴を事細かに際立たせ、ギャグなんだか真面目なんだかよく分からない世界が展開している。全てのネタを理解することは日本人の私には到底不可能だった(訳者による分厚い解説があったおかげで、かろうじて六割ぐらいは理解できた)。それでもこの著者の持つ狂気のような下調べの情熱は伝わってくるし、異なる時系列をシームレスに並べる能力は独特だ。

  • ピンチョンの描く「アメリカ」。それは、着色料たっぷりのケーキ。ネオンライトのカウボーイレディ。キャプテン・ビーフハートやフランク・ザッパ。
    そんな、やりすぎちゃっているのに、どこかポップなカルチャー。これが、私は好きだ。

    個人的には、ゾイドはデヴィッド・アレンみたいな風貌かもしれないと思い、ちょっと面白かった。

  • 単純に読んで楽しいというよりは文学っぽいテイストなのだろうけど、最後まで次の展開がまったく想像できないように巧みなストーリーテリングとヒッピー的な要素を大量に投下したキャラクターの型破りな会話の楽しさが重なって最高に楽しい本でした。
    自分はアメリカのサブカルは詳しくないけれど、この本を読むとやはりすごい蓄積があるんだなーと今更ながら意識しましたよ。

  • むずい

  • まるでピンチョン流の「1984」。そのビジョンもセンスも、本家を遥かに凌駕しているだろうけど。

  • 同じ訳者による改訳で河出書房新社の『世界文学全集』に収録された作品に大幅改訂を施した、どうやらこれが決定版となる模様だ。最初の新潮社版で読んだのがはじめてのピンチョン体験だった。当時、傑作だと思った記憶があるが、再読してみてその思いを強くした。訳文は大幅に改訂され面目を一新。全体に漂うグルーヴ感は色あせるどころか、ますますその疾走感を増し、一度その流れに引き込まれると途中で抜け出せなくなる。

    他のピンチョン作品が続々と訳出されることで、それまでこの一作を読むだけでしか知ることのできなかったピンチョン・ワールドともいうべきものが少しずつその姿を明らかにしてきた。『逆光』に登場するウェブ・トラヴァースの子孫が『ヴァインランド』のエンディングを飾る大家族集会に顔を見せるなど、それぞれが小説として独立していながらも奥底に深い根のようなものでつながりあっているピンチョンの作品群には、権力対民衆の構図がいつも透けて見える。

    そう書くといかにもベタな社会派小説のようだが、そこがピンチョンの手にかかると、とんでもなく痛快なエンタテインメントに見えるから不思議だ『ヴァインランド』は、その嚆矢とも呼べるものだ。60年代を忘れられないフラワー・チルドレンの成れの果てが男を作って逃げた女房を忘れられず、一人娘と暮らすヴァインランドに昔なじみの捜査官が現れる。どうやら、元女房の男が手勢を率いて押し寄せてくるらしい。おんぼろ車に乗り込んで娘と逃げ出すゾイドだったが…。

    60年代のアメリカは輝いていた。キューバ危機やヴェトナム戦争が学生や労働者の集会やデモを呼び、世界は変わるのかもしれないという幻想を振りまいていた。ラブ&ピースを合言葉にヒッピー・ムーヴメントが世界を席巻し、ロックに代表される音楽が世界中の若者を結びつけウッドストック・ネイションという言葉さえ生まれた。しかし作品の時代は1984年。村上春樹ではないジョージ・オーウェルの書いた『1984』年だ。

    ピンチョンの固定観念、それは新大陸アメリカが持っていた清新な魅力が、資本主義国家として成長するうちにとんでもない腐りきった国に成り果ててしまったことに対する徹底的なノン(否)を突きつけることではないか。ニクソン、レーガン、ジョージ・ブッシュ・シニアと引き継がれる国家的陰謀。オーウェルが想像した管理社会をより巧妙に成し遂げたその高度管理社会である1984年のアメリカを舞台にしながら、ピンチョンは凄腕のナラティヴ・テクニックを駆使して熱き60年代を紙上に甦らせる。

    重厚長大が敬遠されて軽薄短小がよしとされたのは一昔前だが、ピンチョンのそれは軽薄短小などではない軽厚長大。扱う内容は厚く長く大きいのだが、語り口はとてつもなく軽い。ルーシー・ショー、ローン・レンジャーからハワイ・ファイブ・オーと、アメリカのTVドラマのノリでどこまでも突っ走る。加えてBGMどころではなくガンガンひびいてくるロック&ロール、ヘヴィ・メタ、アシッド・ロック。ドラッグまみれの音楽。

    お上品な世界にそっぽを向きどこまでも悪趣味で過激、顰蹙を買うようなカウンター・カルチャー趣味を押し出しながら、どうしてこんなにピュアでセンチメンタルな話が書けるのだろう。ピンチョンを読んでいると、ここにこんないいものがあった、という気にさせられる。あまりにも無防備な姿勢で社会の不正に挑戦状を叩き付ける若いフレネシとその仲間。自分の持つ純粋さの過剰を持て余すかのようなフレネシの裏切り。同時代に学生運動を経験したものなら、この切なさに覚えがあろう。

    どこまでもダメオヤジぶりを振りまくゾイドにしても、かつて信じたものをそう簡単にあきらめきれない気持ちはこちらも同じで、ダメだと思いながらも肩入れしてしまう。権力を持たないものたちが、暗躍する権力の暴力にそれでもあっけらかんとしてへっちゃらという生き方を示すピンチョン世界の住人たちにスタンディング・オベーションを贈りたい。

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