LAヴァイス (Thomas Pynchon Complete Collection)

制作 : Thomas Pynchon  栩木 玲子  佐藤 良明 
  • 新潮社
3.82
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本棚登録 : 343
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (542ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105372118

作品紹介・あらすじ

目覚めればそこに死体。LAPDの警官の群れ。顔見知りの刑事。んで-おいおいオレが逮捕なの?60年代も終わった直後、街にサーフ・ロックが鳴り響くなか、ロスのラリッ放し私立探偵ドックが巻き込まれた殺人事件。かつて愛した女の面影を胸に、調査を進めるドックが彷徨うは怪しげな土地開発の闇に拉致とドラッグ、洗脳の影。しかも、えーと、"黄金の牙"って?なに?ドックが辿り着いた真実とは-。

感想・レビュー・書評

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  • こんな切ないピンチョン知らない。山積みのガジェットの様に溢れた固有名詞とモクモクと立ち込める煙の向こう側に浮かび上がるのは過ぎ去った文化への追悼であり、高度化すればするほど個人の感情や繋がりがシステムへと回収されてしまう社会への抵抗の証だった。内在する欠陥とはマンソン、そしてニクソンを生んだLA文化そのものに他ならない。警官にはヒッピー崩れと罵られ、仲間からは刑事の小間使いと揶揄される―そんな探偵ドッグが無数の人々の一人として生きながら、誰も否定しようとしない奴なのって最高にグルーヴィだと思わないかい?

  • 久々のピンチョン。最も読みやすい長編と言われているだけあって、筋もあり、ハードボイルド調なのも面白い。だが舞台は70年代の西海岸。ポップな音楽への造詣は目を見張るが、僕らの時代のイーグルスはまだ出てこない。ビーチボーイズ全盛のアメリカってどうだったのだろう、と思いながら読んだ。

  • 500ページ超えの厚さにみあわない、気の抜けたギャグ満載のふわっとした探偵小説。何もかもが巨大組織の陰謀であるかのような妄想的な世界観に呆れつつ、優しくて遠回りなドックのふるまいに心なぐさめられた。元カレがあそこまで奮闘してくれるって、シャスタの立場で読むとたいへん気分がよい。

    ドックがじたばたしていた時代にはヒッピーカルチャーは過去の夢になりつつあって、そのさびしさも物語全体に漂っていたように思う。読み終わってみれば、70年のアメリカ(西海岸)についての小説だった。感傷的すぎるかもしれないけれど、助け合ってゆっくりと生きていくイメージが浮かぶエンディングがとてもよかった。

  • このデカさの本は通勤の満員電車(主な読書時間)で読むことができないのが非常にツラい。読み終わるまでが長かった。

    ピンチョンは2~3年前、小説を再び読み始めた頃に、文庫版「スローラーナー」を買って何度かチャレンジしたものの、どうにも目が滑って文章が全然頭に入って来ず断念した事があり、自分の手には負えないと避けていたという経緯が。海外小説を読むなら一冊くらいは読まないと……とずっと思っていたので、よかった最後まで読み終えることができて!こんなに……登場人物の多い……。人の名前を病的に憶えられないおかげでしばしば話が分からなくなりながらも、主人公ドックの魅力が私を引っ張っていってくれた。最初は「え?こんなにチャラいのってありなの?」とびっくりしたけれど、どんどん好きになっちゃってね。ラヴ&ピース。祭りの後みたいな終わり方も好き。今度は訳者の佐藤良明さんによる新訳「スローラーナー」を試してみようか……。

    恥ずかしながら音楽の知識が全然無いから、雰囲気が掴めなくて残念。そこはP.T.アンダーソンの映画に期待しようかな。

  • 以前、ピンチョンブームだったときには学生だった。『V.』がドラマ化されて「ようわからんなー」と言い、『重力の虹』の邦訳が出て、さらに「ようわからんなー」と言いつつも、それらに「触れた」という実績がカッコよくみえたような気がする。これはそういった思い出話とは別に、アメコミ調の表紙が気に入ったのと、都甲幸治さん『21世紀の世界文学30冊を読む』で、あまりにも面白そうな解説を読み、夏の読書用に買ったもの。原題は“Inherent Vice”と、テクニカルタームがらみ。なかなか訳しにくくてこの邦題になったと思われるけど、『マイアミ・バイス』っぽくて、まあいいでしょう!

    開いてみると、もういろいろコテコテで、元ネタがわからなくても半笑いになってしまう。本筋は王道ミステリをなぞって(いると思う)おり、思ったところで「出た!」と、お約束の展開やモチーフに出会う。物語全体が、ディテクティブ・ストーリーへのオマージュというか、パスティーシュというか、パロディというか…まあ、とにかくそんな感じ。

    謎解きがイカしてるかどうかは別として、ヒッピーな探偵とセクスィーな女友達、スクエアな仕事仲間、葉っぱ友達、腹に一物ある野郎どもとの会話が大半で進み、しかも軽妙におバカで愉しい。しかも、探偵のヘアスタイルがアレで、探偵事務所の名前がコレで、元カノの乗ったクルマがソレ、ドラマに音楽…と、50~60年代アメリカ西海岸カルチャーてんこ盛り。リアルタイムでこの時代を経験し、今でもストライクゾーンのかたは多いだろうし、リバイバルとして知っている世代にも、トリビア満載で面白いかも。翻訳のためのリサーチが大変だったろうとは拝察いたしますが。

    私自身、リアルタイムでこの時代を知らないからいえることかもしれないけれど、物語の本筋よりも、小ネタの物量作戦に軸足を置いて楽しむ小説だと思う。訳者お二人による解説も緻密で、ピンチョン作品へのガイドとしては、少々のネタバレ感に目をつぶれば、ダレ気味になってきたときにつまみ食いしながら読める構成かも。

    『ディスコ探偵水曜日』や『敵は海賊』の軽快なかけ合いがお好きなら、このポップな仕立ての物語はきっと楽しめるだろう。個人的には、時代がちょっと下るけど、『マイアミ・バイス』や『ビバリーヒルズ・コップ』の会話も思い出した。乾いた感じは『私立探偵 濱マイク』だったり、軽やかさに『うぬぼれ刑事』を感じる。それだけ、こういった探偵ものにインスパイアされた作家さんは多いということだと思う。うーん、でも、この感じに近いのは、やっぱり『探偵物語』とか『俺たちは天使だ!』かなあ。「運が悪けりゃ死ぬだけさ」ってのは、いかにもドック・スポーテッロが言いそうな、グルーヴィーなセリフだし。

  • まずはグルービー!と叫んで見る。初ピンチョン。

    主人公の探偵ドグと地元刑事ビッグフットとの言葉の掛け合いが面白い。ドグは減らず口というかへこたれないというか、諧謔を弄してイカしてます。まるでルパン三世と銭型警部の様。そういえばこのLAヴァイスの時代背景は70年台。ルパン三世も60年台後半に初稿。

    ヒッピー文化とラヴ&ピース。どこか軽く明るい雰囲気はこの時代の探偵物の流行なのかもしれない。反逆のアメリカン・ニューシネマの時代だ。

    ドグはスパイ兼エージェントのコーイを助ける。ネイティブアネリカンの諺で「人を助けたらその人を最後まで面倒を見なければならない」というのがあり、面倒をみることに・・・アメリカはベトナムの面倒を最後までみれなかったが・

    原題は「インヒアレント・ヴァイス」直訳すると「内在する欠陥」。

    初ピンチョンであったが、根明の探偵物語と70年代のドラッグ漬けの若者像を通して、実は題名の如く、腐敗している警察とカリフォルニアの政界、しいてはアメリカのベトナム戦争への懐疑性が見え隠れする作者の作風は流石と思った。

  • 映画を見たので初ピンチョンチャレンジ。映画を見ていなかったらくじけていたかもしれないが、Apple Musicでサントラを聞きながらだとすんなり読めて、よくわからないなりに面白かった。失われてしまうものを強くかんじて、なんかどうしようもなく切ない気持ちになったな。

  • 読み始め早い時点で、敬愛する映画「2001年」のHALの文字で上がる。
    読んでる間、ドックの独特な鑑賞眼とともに映画三昧、60年代グラストンベリーさながらロックフェス。新しく世界が開けてサイケデリックな読書ジャーニー。知らないことだらけ、常にググりながら読んだ。
    何だか自分がゼロにされてしまうような、そんな、女なら一度はそうされたい扱いを受けたような。

    シンプルでファニーでヒップ。賑やかなノワール。素っ頓狂にファーラウトに突き抜けてる。いつも、何があってもグルーヴィーなのがドックの信条。ドックは、子供っぽさと子供らしさの違いが分かってはる。
    そう、軽い方が陳腐な深みを装うよりずっとずっといい。

    始まりこそは、オフィスにいる探偵のもとに、美人の元カノがSOSって依頼する。ベタな探偵ものだが、ありえない設定の連続、なのにリアルでジンと来る。
    吸血鬼を仄めかし、狼男だ、ゾンビだと始まり、そして、何かこう精神性なものが底にある。

    とにかく非合法性カオスなのだが、何が良いって、本物の愛の本質も見つけている。ジャンルの崩しっぷりこそピンチョンらしさ。
    「君がいなかったら僕はどうなっていただろう」
    グルーヴィー。野暮な説明はなしにどうぞなテクスト。

  • たしかにピンチョンの他の小説に比べたら読みやすいとは思うんだけど、それでも途中からほとんど内容分かんなかった・・・。でもポップな文体や世界観はむっちゃ好き!

  • 映画をみて原作を読みました。映画は原作を忠実になぞったんだなと確認。映画のほうが断然よかったと思いました。
    ヒッピー仲間だったか助手なのか、デニスってキャラが薄すぎて、最後までちょくちょくでてくるんだけど、どんな人物なのかよくわからなかった。そんな人物がいっぱいいてくせのある小説であった。映画見てなかったら内容についていけなかった。自分語りのシーンなんかは、日本のライトノベルと変わんないなと印象を持った。これがノーベル文学賞候補とかウソだろ?と思う。

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