- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900014
感想・レビュー・書評
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離婚。娘。『洋子さんの本棚』にて。
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新潮クレストブックスすげえ……。
読み始めてすぐ、ずっと現在形の連なってゆく文体に、これはただごとじゃないと感じた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。でも、こうならざるをえなかった。
この作者は戻ってこられたけど、破滅する道もあって、それはこっちの世界には浮かび上がらないでわたしたちの目に届かないところにいくつも沈んでいったのかもしれない。 -
ノンフィクションなのかーと読み終わってから茫然とした。父娘の近親相姦をテーマとしているが、そこに到るまでの祖母、母との関係性のほうが痛々しい。
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異世界のような、共感できるような
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著者の両親は、彼女が一歳になる前に離婚した。母方の祖父母宅で育った著者は、母の愛を求めて得られず、祖父母との関係もどこかぎごちない。そんななか、二十歳になった著者は、父親と三度目で十年ぶりの再会を果たす。牧師の職に就いていた父親は、美しい金髪の娘に目を奪われる。そして別れの日、空港の搭乗口で、父親は娘に、舌を入れるキスをした。そのキスがすべてを変え、父と娘は近親相姦の関係に陥っていく。
硬質で理知的な文章で綴られる、腹の底で燃える怒りと、心の闇。人の娘として生まれたすべての女にとって、人ごとではないのではないでしょうか。わたしは怖くて泣きました。
父と娘の近親相姦を、娘本人が著者となって書いたノンフィクションということになっていますが、中心となるのはむしろ娘と母親の関係。読みおわって、扉に記された「最愛の人」ということばと、モーリヤックの引用を見直すと、しみじみ苦しくなります。
それにしても、第一回配本がこれと『旅の終わりの音楽』だったという新潮クレストブックスの心意気を感じる…。やっぱりこの叢書は読破しなくては。 -
たまたま手にとったら、大昔に読んだ本だった。
読み返してみたら(といっても細かい筋書きとかはすっかり忘れてるんだけど)
陰鬱で濃くって、何回も頓挫した。
難儀な相手への恋愛は、落ちるから仕方ないのか、それとも自分に酔うためにするのか?
多分両方。 -
時々読み返したくなる自伝。
静かな嵐のような、めまいのような、白日夢のような話。
なんでもないように特別なことは始まる。 -
ひりひりした。でも、いい。
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この人の訳が好き。
この本自体、求心力がありすぎて買うのをとまどう。所有せずに読了したい。
よって立ち読み。
父親との近親相姦、引き裂かれるような内面の描写。淡々と。 -
すごく重くて辛くて、でも美しい小説。
なぜか、とりつかれた様に他のことそっちのけで読んでしまった。
家族についてこの人が抱える問題と私の問題は全く異なるけれど、読みながらこの親の元に生まれてこざるを得なかった自分と同時にこの親でなければ存在しなかったであろう今の自分を思って少し泣きそうになった。
誰にでも秘密はある。誰にでも深い闇がある。それでもきっと解放はある。
ささやかではあるが、かすかな希望をもらった作品。