アムステルダム 新潮クレストブックス

制作 : Ian McEwan  小山 太一 
  • 新潮社
3.46
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本棚登録 : 139
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900090

作品紹介・あらすじ

ひとりの魅惑的な女性が死んだ。選ばれた男たちとの遍歴を重ねた途上で。元恋人の三人が葬儀に参列する。イギリスを代表する作曲家、辣腕の新聞編集長、強面の外務大臣。そして、生前の彼女が交際の最中に戯れに撮った一枚の写真が露見する。写真はやがて火種となり、彼らを奇妙な三角関係に追い込んでゆく。才能と出世と女に恵まれた者は、やがて身を滅ぼす、のか。98年度ブッカー賞受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  •  “それぞれの過ちに―”

     ロンドン社交界の花形モリーが亡くなった。痴呆状態で迎えた哀れな最期だった。夫のいる身で奔放な性生活をおくった彼女の葬儀には、三人の元恋人たちも参列。やがて彼らは、モリーが遺したスキャンダラスな写真のために過酷な運命に巻き込まれてゆく。


     「悲しみだけのメロディーではなかった」クライヴ

     英国を代表する作曲家。道徳性を重んじ、故人の意思を尊重しようとする彼は、見つかった写真が世間の目に触れないよう事を運ぼうとする。彼の思う、モリーが本当に望んだこととは一体何なのか。

     「癌の万能薬というのは意味をなさない」ヴァーノン

     辣腕の新聞編集長。厳格で仕事第一の彼にとっては、今回の事件は他に類を見ない特ダネ。周囲の意見を押しのけ、是が非でも写真を手に入れようとする中で、彼は旧友のクライヴとも対立を余儀なくされていく。

     「われわれ全員がだまされていたんだ」ガーモニー

     強面の外務大臣。次期首相候補であり、政権交代を間近に控えた彼は、自らの保身のためなんとあっても醜聞は避けなければならない。あらゆる権力を行使して写真の存在を葬ろうと画策するが。

     イギリス文学の奇才、イアン・マキューアンによる洗練の極みの長編。一歩でも間違えば身を滅ぼす細い綱の上、果たして最後に笑うのは誰なのか。98年ブッカー賞受賞作。


     そんなお話。

  • イアン・マキューアンという名前のイギリスの作家が書いたイギリスが舞台の小説です。一人の死んだ女性と、その恋人だった3人の男性の関わり合いの物語です。

    最後のぎりぎりまで題名の「アムステルダム」の意味が分からずに読んでいました。イギリスなのになんでオランダの首都が題名なのか、気になりながら、物語の途中のそこここに、そのヒントは散りばめられていたのに、それに気付かずに読み進んでいた自分の浅読みを読後に思い知らされました。読んでいる途中は、そんなに面白いとは思わないというか、よくわからず読んでいたのですが、読み終わってああそうだったのかという感覚が、かえって快い読後感になりました。オランダってやっぱり異質な国なのですね、イギリス人にとっても。
    一筋縄ではいかない奥行きの深いイギリスの変態馬鹿男たちの立ち居振る舞いが、笑えると言えば笑えます。ビートルズにしても、英国王室にしても、多分似たり寄ったりの変態馬鹿男は跋扈しているはずです。私的には、他人事ではないとも言えなくもありません。一言でいえば変な小説です。いかにもイギリスです。お時間があればぜひご一読を。
    (自分のブログから転載)

  • 他の作品よりユーモア分がかなり多め。
    これでブッカー賞を取ったのも、代表作とされるのも、うーん、というかんじ。
    面白いことは確かなので、他の人におすすめしたい一冊です。

  • テンポよく読み進められる物語。言葉が流れるように出てくる。

  • この作品の3年後に作者が発表した『贖罪』を読んだとき、「これはすごいものを読んだぞ」という気持ちになったし、すぐ前に書いた『愛の続き』では「じっと黙って理解したい」という気持ちになった。

    今作には『贖罪』のような骨太な読書体験はないし、『愛の続き』のようなピリピリしたスリルもない。
    あるのは「華やかでいて、その実空虚な都会の成功者たち」という類型的で平凡なテーマ。破滅の予感まで既知のものとして描くこの世俗にまみれたストーリーが、けれども、読んでいるうちにどんどん質量を持ってこちらに迫る。

    つまらない自己保身、実のないやり取り、おべっかや当てこすり、取るに足らない憂鬱、無意識の正当化、自己欺瞞。
    それと同時に描かれる、一瞬の美の訪れ、この世界は信用に足るものだという喜び、完全なものへの憧れ、計算も保身もない、心からの愛情。
    マキューアンが淀みない筆致で描く、ドロリとして身動きのできない世界の感触も、愚かしいほど純粋に「善いもの・正しいもの」を乞い求めるその姿も、どちらもよく親しみ、嫌悪してきた感情。

    シニカルで軽妙で、ふっと笑った後に溜息をつきたくなる小説。
    社会的成功も、気の置けない友人も、充実した人生も、すべては薄氷の上で成り立っていて、割れた氷の下には薄汚れた世界しか広がっていないとしたら、いったい何に依って生きていけばいいんだろう。

  • 新潮クレスト・ブックスは、サイト(http://www.shinchosha.co.jp/crest/)でチェックしてみると、なかなかそそられる本ばかりで、魅力的。
    あと、ソフトカバーなので、普通の単行本(ハードカバー)より小さめで軽くて、通勤読書族としてはありがたい。

    ある女性の葬儀で、元恋人の二人の男性が彼女の死を悼み、静かに悲しみを分け合っていた。一人は作曲家のクライヴ。もう一人は大衆紙の編集長ヴァーノン。
    そして、葬儀にはもう一人の元恋人、外務大臣のガーモニーもいた。
    社会的にも地位を確立した3人の男たち。
    一人の女性の死をきっかけにして、それぞれの人生が奇妙な回転を始める。

    いつの間にかひきこまれている、というタイプの話で、話自体も大人向けの雰囲気。
    サスペンスと言えるんだけど、こてこてのサスペンスでないところが好ましい。
    大人の男の見栄とか、言い訳とか、欲とかが、なんだかリアルで、生々しいんだけど、文章は抑制がきいていてさらりとしている、そのバランスが絶妙。

  • Amazon.co.jp

    プレイガールでならしたモリー・レインが、謎の退行性の病気がもとで40代にして亡くなり、集まった多くの友人や恋人たちは自分もやがて死ぬ運命であることを自覚する。高級紙「ジャッジ」の編集長ヴァーノン・ハリデイは、有名にして放埓(ほうらつ)な作曲家クライヴ・リンリーを説得し、安楽死協定を結ぶ。万が一彼ら2人のうちどちらかがモリーのような病にかかったときには、もう1人が死なせてやる約束である。この先、読者は『Amsterdam』(邦題『アムステルダム』)の結末はどうなるか―― 要するに誰が誰を殺すかという問題―― を考えながら読み進むことになる。 やがてモリーの恋人のなかでも最も有名な男、外務大臣ジュリアン・ガーモニーのスキャンダラスな写真が新聞社の手に渡り、さまざまな憶測のなかでガーモニーには罷免の危機が迫る。しかしこの後がマキューアンらしいところで、どちらかといえば不愉快な印象を与えるキャラクターのガーモニーが勝利を収める展開も不思議ではない。 イアン・マキューアンは卓越した小説の技巧の持ち主で、この作品は賞を総なめにしてもおかしくない。しかも、登場人物は次から次へとめぐらされる策略のなかで、妙に無機的な雰囲気を漂わせ続ける。

    メタローグ
    新潮社から刊行されるクレスト・シリーズで最も人気ある本作は、98年度のブッカー賞にも輝いた。冒頭のシーンは、モリーという恋多き女性の葬儀。そこに参列する彼女と恋仲だった、新聞の編集者ヴァーモンと作曲家クライヴの間に、いつしか男の友情が生まれ、お互いの運命を支配する奇妙な約束を取り交わすようになる。政治家のセックス・スキャンダルや、マス・メディアの行き過ぎた報道など現実社会の歪みと人間のエゴを浮き彫りにし、名作『黒い犬』などで見せた、辛口のユーモアと洗練された文章が、特異な性格の登場人物たちの人生を見事に彩る。この前年にブッカー賞を取り損ねた、秀作『永久の愛』の翻訳化も待たれる。(新元良一)
    『ことし読む本いち押しガイド2000』 Copyright© メタローグ. All rights reserved.

    内容(「BOOK」データベースより)
    ひとりの魅惑的な女性が死んだ。選ばれた男たちとの遍歴を重ねた途上で。元恋人の三人が葬儀に参列する。イギリスを代表する作曲家、辣腕の新聞編集長、強面の外務大臣。そして、生前の彼女が交際の最中に戯れに撮った一枚の写真が露見する。写真はやがて火種となり、彼らを奇妙な三角関係に追い込んでゆく。才能と出世と女に恵まれた者は、やがて身を滅ぼす、のか。98年度ブッカー賞受賞作品。

    内容(「MARC」データベースより)
    一人の魅惑的な女性が死んだ。選ばれた男たちとの遍歴を重ねた途上で。元恋人の三人が葬儀に参列。だが、生前の彼女が撮った写真が元で、彼らは奇妙な三角関係へと追い込まれてゆく。ブッカー賞受賞作。〈ソフトカバー〉

  • 重い余韻を残す「贖罪」とはかなり違って、皮肉な味わいの小品。惹句にあったように映画化すればおもしろいだろう。冒頭で埋葬されてしまうヒロイン(?)の存在感が全編に漂っていて、これもまた「不在」と「喪失」の物語だ。既にないものにしか意味を見いだせない登場人物達が醜く愚かで哀れだ。

  • 無駄な描写や修飾がないからか、読みやすくかつしっかりとした文体。翻訳もとても上手なのだろうと思う。
    なによりも、モリー・レインのような女性は、男性がひとりは持っていたいと思う理想の女友だちだ。
    彼女の元恋人3人の思想が交錯する。そして、死もしくは事実上の死(職業的に)に追いやられる彼ら。それぞれの善が持つ「仮面」を剥がすような内容だが、現実に生きている私たちも完全無欠ではないから、それだけにとてもリアルさを感じる。

    <a href="http://manderin.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_764c.html">ブログ「Cafe Manderin」の該当エントリも参照してください。</a>

  • ひとりの魅惑的な女性が死んだ。選ばれた男たちとの遍歴を重ねた途上で。元恋人の三人が葬儀に参列する。イギリスを代表する作曲家、辣腕の新聞編集長、強面の外務大臣。そして、生前の彼女が交際の最中に戯れに撮った一枚の写真が露見する。写真はやがて火種となり、彼らを奇妙な三角関係に追い込んでゆく。才能と出世と女に恵まれた者は、やがて身を滅ぼす、のか。98年度ブッカー賞受賞作品。

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