花粉の部屋 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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本棚登録 : 67
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900120

感想・レビュー・書評

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  • 残念だがあまり楽しめなかった
    久しぶりに読破を断念
    硬筆な文体は好きなはずだったのだけど…
    まぁ、気長に自分の中で次にまた読書欲が来るのを待ちます

  • 評価ほどとは思えず・・・
    読んでいてしんどい

  • 主人公ヨーの両親は、彼女が幼稚園の頃離婚した。通りを2,3本へだてたところに母が引越し、ヨーと父はあとに残った。
    小さな出版社をやっている父は、それだけでは生活できないので夜勤の運転手をしながら出版の仕事を支えた。

    コーヒーを飲んで父は出かける。父の車の音が遠のき、完全に聞こえなくなったらヨーはキッチンの電気をつけ、テーブルに向かって腰を下ろし、まだ温かいコーヒーカップを両手で包みこむ。そしてカップの縁についた茶色のしみを探す。もし父がこれきり戻らなかったら、これが、生きていた最後の証になるのだ。

    最初から最後まで、ヨーの心情が語られることはない。
    ただ事実と、ヨーが考えたことだけが淡々と語られる。

    父が再婚したり、別れたり。
    母が再婚して外国へ行ったり。
    二人はヨーを拒絶することはないが、多分愛してもいるのだろうが、彼らの生活のなかにヨーが必要とされる場所が見つからない。

    高校を卒業し、3度目の父の結婚相手やその連れ子との折り合いが悪いヨーは、母の元へ行く。
    母は喜んで迎えてくれるが、母の生活のなかにやはりヨーの居場所はない。
    母の再婚相手が事故で亡くなったとき、精神的に病んでしまった母を見て、今度こそ自分の出番だと思ったヨーだったが、母が立ち直ったのは新しい恋人のおかげだった。

    花粉の部屋というのは、母が病んでいたとき、かごいっぱいに花の頭だけをつんできては、亡くなった夫の部屋に花粉をばら撒いていたことから来ている。
    何日もそれを繰りかえし、母はその部屋にひきこもった。
    母を、部屋から連れ出したのはヨーなのに、母は言う「あなたの助けは必要ないのよ」

    水に向かって飛び込んでいく蝶の群れ。あるいは、子どもたちに捕まった蝶のたくさんの死骸。
    いくつかの、蝶のモチーフがこの作品に描かれる。蝶とその死が。
    蝶は、花粉の部屋に入れないまま死んでいくヨーの心なのか。

    母を診察する「心の治療者」
    ヨーは思う。
    心って、足を折ったのとおなじように治せるものなの?

    両親といい距離感で付き合えないヨーは、他人と付き合うこともうまくできない。
    男の人と付き合うこともできないし、ようやく親友になりかけたレアとも、結局深く付き合えないまま、父の元に戻るヨー。
    しかし父と継母との間に子どもができたことを知ったヨーは、再び家を去る。

    そんなおはなし。
    ヨーの心が書かれないからこそ、家族への疎外感、両親の愛を求める気持ち、必要とされたい、居場所が欲しい、誰かとつながっていたい、そんな思いを強く感じました。

    ヨーの両親は形だけそばにいても、心がヨーのそばにない。
    だから一緒にいても、一緒にいるからこそ、ヨーの心はいつも孤独。
    じゃあ、どうして私を生んだの?
    そんなことすら、ヨーの心はもう、思わない。

  • 切々と綴られるヨーの語り、思い、抗い、諦め、だが止む事はない儚き夢…。哀しみに満ち溢れたこの流れのままにヨーの語りは澱みなくすべらかに進行してゆく。時に回顧を交えながら。父も母もするりとヨーの手を振りほどき去ってしまう。その姿に追いすがっても彼らはヨーの姿をその瞳に映さない。それのどれだけ哀しいことか。深き哀しみの淵に佇むしかないヨーの健気な姿は静かに、しかし強烈に胸を打つ。

    静謐な文体、描写の美しさ、言葉紡ぎにハッとさせられる。時間に押し流されるかのように急ぎ足で読むのは非常に勿体無い気がして、この作品は丁寧に時間をかけて読んだ。そこに紡がれる言葉ひとつひとつをまるで硝子細工の脆いものを扱うかのように。そこから広がる新たな自身の感情を陽にかざして確かめるように丁寧に丁寧に。
    そしてヨーのような哀しみに突き落とさぬよう、私は子らの手をしっかり握っていこう。そう固く誓ったのであった。

  •  つめたいけどじっとりしてる肌。みたいな印象。
    文脈で読ませる小説。あとからじわじわくる。

  • 冷たい滑らかな金属片を肌に当てられたときのひやりとした感触。
    語感も、短く畳み掛ける文章もかたくなで冷ややかなもの。

    離婚した両親。
    父のもとにも母のもとにも安らぎはなく、それぞれに
    パートナーと義理の家族がいる行き場のない主人公。

    彼女の心の浮遊感覚が印象に残る。
    これはなかったことにしたいという抑制と防御。
    理想の家族は語られることなく物語りが終わり終わりない旅に
    自分から出て行く暗示で終わる。

    彼女にとってのミルウォーキーは、私が探す「行き先」
    としてはどこだろう。

  • ドイツ文学ってのはこんなんばっかりなんかなぁーと。まぁ実際にはこれはドイツ語で書かれた本で、作者はスイスかどっか出身らしい。吉本ばななのファンらしくなんとなくばななと同じ匂いがしないでもない感じ。「朗読者」と文体は似ている。更にこの小説には主人公の感情の動きを表す文章が書かれていないのでもっと感情移入できない。なんていうか宮部みゆきの理由っぽいとでも言おうか。とにかく文章がぼやぁ〜っとしてて読んでてもいつのまにか眺めてるだけで文字が頭の中に入らなかった。そんで、さらに時系列がハチャメチャなんでさらぁ〜にわかりにくいです。とここまでめたくそに書きましたが話の中身自体は嫌いじゃないです。限りなく四個に近い★三つ

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