停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社 (2000年8月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784105900199

みんなの感想まとめ

日常生活の中で感じる喜びや悲しみを丁寧に描いた短編集は、インドにルーツを持つ人々のアメリカでの暮らしを通じて、等身大の登場人物たちの心の揺らぎを映し出しています。大きな出来事がない中にも、日常のささや...

感想・レビュー・書評

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  • インドにルーツを持つ人々のインドやアメリカでの暮らしを丁寧に描いた短編集。

    等身大の登場人物たちが織りなす、余韻が残る奥深い物語であった。
    大した出来事が起こるわけではないけれど、現実にはそういうことがほとんどである。そんな何気ない日常生活の中で胸の内にわきおこる名前のつけられない感情を見事に描き出している。異国が舞台ではあるけれど、とても身近に感じられる物語。

    私もこんな風に、日常生活で感じる喜びや悲しみを表現できるようになりたいと思った。

  • アメリカが舞台でもインドが舞台でも、インド系移民が登場する話でも、ラヒリが自らと向き合っている姿が垣間見えるようだった。

    ピュリッツァー賞受賞のデビュー短篇集だが、既に何作か書いてきているかのような熟練さを感じた。
    そう感じた理由は、物語の設定の目の付け所がささやかで、よくそんな所をみたいな細やかさがあったからだ。

    そこにラヒリ自身の人生が反映されている様が加わっており、これだけ作家自身のパーソナリティーが小説に表れる方も、珍しいのではないかと思った。
    視点を変えれば、それだけ自らと真摯に相対していることにもなる。

    日常生活における、異国、移民、異文化間で起こる、悲喜こもごもな出来事。そして結末は、一見やりきれない哀しさだけが残るようにも感じられるが、そこはラヒリの視点が素晴らしく、ちょっとしたシニカルさで切り抜けたり、おしゃれな喜劇になったり、母国の人がインド系移民の人に大切なことを教えられたりとなるところに、ラヒリ独特のしたたかさを感じるのである。教えられる結末に関しては、ラヒリ自身の望みなのかもしれないと思うと、なんだか切なくなる。

  • 内容が似てるとかではなく、ヤマシタトモコさんの漫画とか、関係性や雰囲気を描く小説や漫画を好む方はこれも好きなんじゃないかと思うほどの描き方……文化の違いや国際性を振りかざす小説ではない。小説や海外の作品をそもそもそんなにという方も短編集だし読んで欲しいよ……。

    幸せなだけでも悲しいだけでもない、心の揺れ動きやすれ違いや思い合う関係性を描写した繊細さと大胆さというか。
    表題作がいちばん好きだったかな……。以下、心に残った「ここをこういう風に描写するのか……」とセンスにうっとりしてしまったところを書いておきます。解釈が拙いのは気にせずに。
    表題作『停電の夜』では、かつての妻の作り置き料理(とても凝っていた)を消費し作らなくなった妻に代わって作ってみたりする夫、という描写で2人それぞれと、関係性や時間の変化を描くところ。実際の時間の経過より遥かな時が経ったような。そして停電とそこでの打ち明け話という非日常に対する向き合い方の2人の違い。ネタバレしたくないけど安易にしないところが好き。
    『ピルザダさんが食事に来たころ』は、ピルザダさんの描写が、その当時のわたしの幼い目線にきちんと合った印象しか語られないこと。もちろん多少の補足はあっても、ピルザダさんの真意が多く伝わってくるわけでもないし、始まりについても終わりについても感傷に浸りすぎてない。もらったお菓子、自分がコートをかけていたこと。その描写で語るところ。
    『病気の通訳』は、登場人物のかっこわるさ。仲の悪さ。極悪でもなく善でもないままならなさ。動物も子供も可愛く描かないところ。
    『本物の門番』と『ビビ・ハルダーの治療』は、どちらもメインになる人物がやっぱり決していかにも性格が良いタイプではないところ。こういう話を、性格の悪さ?を地の文章で感じさせず味がある話にできるのは書き手が決してキャラクターを見下していないからだなと思う。
    『セクシー』『神の恵みの家』あたりは大人女性向けの漫画とかであっても不思議じゃないくらいだよね………家に置いてあるもの、服装、2人が食べるもの。一緒に過ごすこと、恋愛をすることの滑稽さと悲哀。大人っぽく振る舞っていても傍から見たら質の悪いおもちゃみたいな不倫での喜び。逆にどんなに子供っぽくても暮らしの匂いがする夫婦の喜び。そのどちらの描写も絶妙。
    『セン夫人の家』『三度目で最後の大陸』は、夫婦の間での上手くいかないこと、他人とぎこちなく知りあったりすること、とかそういう描き方がお上手だなと思った。

    どれも好きだけど、やっぱり表題作が好きだな。号泣してしまった。久しぶりに、胸がぎゅーーーっと苦しくなりました。絶対他の作品も読む。

  • ラヒリの作品を初めて読んだ。
    時間の流れ方が美しい。
    人の心の揺らぎの描写も独特で引き込まれた。
    それぞれインドがルーツでアメリカに暮らす筆者の背景もあるのだろうか。癖になりそう。

  • まさしく私の読書の原点となった本。何年経ってもこれがベスト本です。知的で悲しくて不条理で愛おしい。立ち読みして胸が震えて抱えて買ったのを今でも忘れられない。こんな出会いを求めてずっと本を読んでます。

  • 美しくて味わい深い文章。異国で暮らす日常の心理描写が素晴らしい。
    たまたま図書館で手に取ったけど、一気に作者のファンになりました。読書好きの友だちに教えたほど。

  • いい映画を見た後のような読後感。
    説明的ではない無駄のない文章で、登場人物の心の機微が描写されている。これがデビュー作とは!

    『ビビ・ハルダーの治療』奇病持ちで身内から厄介者扱いされている29歳のビビ。どんな治療も薬も効果がなく、失意の日々を送っていた。そんな時ある医師から「結婚すれば病気は治る」と告げられ、婚活に奔走するもよい結果は得られず。結局は出産を経て病を克服するのだが、妊娠に至る経緯は一切語られていない。その意外な展開に驚き、想像力を掻き立てられた。

  • インドとイギリスやアメリカの距離に相似するようにして、家族間、夫婦間の心の距離が丁寧に描写されている。言葉の端々から感じる、作者自身の、その距離へのいとしさ。読後感が格別に良い。暗闇の中でさぐる境界線と、知ってはならなかったなにかの存在を、泣き笑いともつかない表情で見つめている登場人物たち。読者もきっと同じ表情をして、人間という存在をいつくしんでいくのではなかろうか。
    原題がA Temporary Matterである表題作には、特に心をつかまれた。決して”一時的”では済まないようなバウンダリーの危機の描かれ方、こまごまとした風景のひとつひとつが作り出す世界の調和が素晴らしいし、何より題名の語の選択がにくい。『ピルサダさんが食事に来たころ』に登場するキャンディーの少女の淡い記憶、『神の恵みの家』で発掘されるキリスト像、『病気の通訳』で交わされる、丁度良い距離感での会話に、飛んでゆく紙切れ。そんな、言葉にされない些細でどきどきする秘密が、短編全体に流れる寄せては返す人との距離を象徴しているように思う。
    ハッピーエンドと言えるエンディングは少ない。しかしなにか読者に慰みとなるような光の粒が、見ず知らずの土地の空気にちらつくのが、見える。それが幸せなのだ。
    無性にこの本を読んだだれかと、暗闇の中で語り明かしたくなった。見えないけれどおんなじ顔をして、ふっと溜息をつきながら。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「心の距離が丁寧に描写されている。」
      時折、胸に痛みを感じつつ、感情の流れが上手く表現されているので、頷きながら読みました。。。
      「心の距離が丁寧に描写されている。」
      時折、胸に痛みを感じつつ、感情の流れが上手く表現されているので、頷きながら読みました。。。
      2013/02/27
    • 4oclock-hazelさん
      ありがとうございます。
      ありがとうございます。
      2023/04/05
  • とてもとても評価の高い作品だけどやはり短編は苦手だった。半分しか読んでないけどセクシーは好き。

  • 両親とも、カルカッタの出身。様々な視点、立場から人生の悲喜こもごもを見ている。
    お涙ちょうだいというよりは、人生を客観的に見ており、不思議な感じがする。

  • 人生初のインド文学(短編)。
    希望は続かない。愛は真実じゃない。分かってるようで分かりたくないことを耳元でそっと囁いてくれるような、そして慰めてくれるようなお話がつまっています。停電――とまではいかなくとも、ひっそりとした夜に読みたい一冊。

  • 今年のマイベスト小説

    人間はこんなにも悲しみと切なさに満ちあふれているんだな、としみじみ思いました。

    切り取られた場面は、どれも何気ない日常なのに。

    それでいて、読み終わった後
    自分の周りの景色が少し変わったような気がします。

    既婚者におすすめ

  • いわゆる「叢書」という括りでみたときに新潮クレスト・ブックスは飛びぬけてイカス。センスの良さ、嗅覚の良さが他と比較にならない。本当に本が大好きで大好きでしょうがないという語学堪能な人間をバイヤーとして世界中に飛ばしているのだろうか、、。短編集では個人的にサリンジャーのナインストーリーズより優れていると思う。エスプリでも負けていない。よく出来たシチューのように一つ一つの素材が全体の調和を作っているし、全体が個を殺していない。文字で物事を表現する上で99.99%の人間が決して越えられない壁をあっさりと越えてしまう才能が稀にあるが、ここにそれが、ある。翻訳を通してさえそれがうかがえる。訳者の力量も相当なものだけど。暖かく、やさしく、やわらか。世に蔓延する意味のわからない「癒し」というカルチャーが本当にあるとするのならばこういうものを指して言うべきだ。

  • インド人の両親を持ちロンドン生まれアメリカ育ちの女性作家の短編集。良かった! 新人にしてピュリツァー賞を取ったり他にも色んな賞を取っていて、読む前はちょっと構えてしまってたんだけど。というのは、最近物々しい「受賞作」でわたし的には大外れってのが多かったもんで; でもこれは額面通りに良かったなぁ。単調な日常を淡々と描写する、というどっちかというとわたしの苦手なストーリー立てなんだけど、文章の肌触りがなんとはなしに気持ちよくて、ちょっとほろ苦くて、、訳文でなくて原著が読めたらもっといいんだろなぁ、と久し振りに思いました。余韻。。。

  • インドの人々をやさしくあたたかくコミカルに描いた、
    不思議な魅力のある短編集。
    洋書も購入。さっそく読んでいるところです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「洋書も購入。」
      日本語の本も読み切れないので、外国語から直接読んだりはしないのですが、、、やっぱり直に触れると世界が広がるでしょうね!
      ク...
      「洋書も購入。」
      日本語の本も読み切れないので、外国語から直接読んだりはしないのですが、、、やっぱり直に触れると世界が広がるでしょうね!
      クレスト・ブックスの創刊15周年PR誌にインタヴューが載っていたので、この3連休に読みます(でも前半で、後半は来年の夏に掲載されるらしい)。。。
      2013/09/20
  •  +++
     ろうそくの灯されたキッチンで、停電の夜ごと、
     秘密を打ちあけあう若い夫婦。
     病院での通訳を本業とするタクシー運転手の、ささやかな「意訳」。
     ボストンとカルカッタ、はるかな二都を舞台に、
     遠近法どおりにはゆかないひとの心を、細密画さながらの筆致で描きだす。
     ピュリツァー賞、O・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞ほか独占。
     インド系新人作家の鮮烈なデビュー短編集。
                         (単行本見返しより)
    +++

     「言えなかったこと。
     言ってはいけないこと。」

    と、裏表紙にはある。
    近しい関係にあっても遠く感じること、言えないこと、言わなかったこと、言ってはいけないこと、言わなければいけなかったことは、おそらく誰にでもあるだろう。
    ラヒリの描く世界は、インド系の移民であるということを脇においては語れない事々だと思う。そして同時に、どこの国でも、どんな境遇の人々にも当てはまることでもあるのだ。
    生きていくということは、予想通りになることや、理想的であることとは対極にあって、哀しみや苦しみ、不条理に溢れているが、そんな中にあっても、胸を熱くすることに囲まれてもいるのだ、という想いがじんわりと染みてくるようだ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そんな中にあっても、胸を熱くすることに」
      生きる。ってそう言うコトなんだろうな。と思ってしんまいんますね。
      そうじゃない人も居るでしょうけ...
      「そんな中にあっても、胸を熱くすることに」
      生きる。ってそう言うコトなんだろうな。と思ってしんまいんますね。
      そうじゃない人も居るでしょうけど、違う世界に溶け込むために、静かにしているような感じが、とても好感が持てました。。。
      2013/02/08
    • あまぐもさん
      >違う世界に溶け込むために、静かにしているような感じ
      とてもよくわかる気がします。
      独特の――とても好ましい――静けさですね。
      >違う世界に溶け込むために、静かにしているような感じ
      とてもよくわかる気がします。
      独特の――とても好ましい――静けさですね。
      2013/02/09
  • 蜂蜜入りのドロップや、ラズベリー風味のトリュフチョコ、細長い酸味の焼き菓子などが、絶えずこちらへ流れてきたのだが、それでもわたしは静かなままで、とりたてて応ずる態度を見せたわけではない。ありがとうさえ言いづらかった。うっかり言ったときには──ひらひらした紫色のセロファンにくるまれたとびきりのペパーミント味ロリポップをもらったから言ったのだが、かえって「ああ、またサンキューか」と逆襲されてしまった。「銀行でも、商店のレジでも、図書館に期限切れの本を返しても、サンキューと言われる。ダッカへ国際電話をかけようとして結局つながらなくたって交換手がサンキューだ。この国で死んだら、きっとサンキューと言われながら土に埋まるんだろうね」
    ──『ピルザダさんが食事に来たころ』

  • 20年前か
    初めて「私が好きな1冊」とすすめられて読んだ時は ⭐️3ぐらいの感想を持っていた。文章と、そこから感じる空気感が良かったが、言わんとしていることに いまひとつピンと来なかったからだ。

    しかし20年経って手元に置きたいと思い 単行本を購入。ふとした時に読み返している。
     作品の雰囲気、歳を重ね人生の経験を多少は積んだ自分、少し古くなった紙の匂いがするこの1冊の本が相まって ⭐️5のお気に入りになった。

  • ラジオかなにかでこの小説の存在を知って、やっと読めた。
    表題作「停電の夜に」では、あえてすれ違いの生活を送っていた夫婦が停電の夜だけロウソクの光の中でおなじ時を過ごす。おなじ時を過ごしていたはずなのに、そこにはやっぱり違う時間が流れていて、ラストはとても切なかった。
    他の短編はなかなか自分の理解力というか感情がついていかなくて、あまり楽しめなかった。

  • 停電の夜に、セン夫人の家、病気の通訳が良かった
    大体全部の話で夫婦仲とかがうまく行ってなくてちょっと気分が落ち込む

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