ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

制作 : 沼野 恭子 
  • 新潮社
3.72
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本棚登録 : 1334
レビュー : 185
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900410

作品紹介・あらすじ

恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々に死んでいく。舞台はソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。そしてペンギンの運命は…。欧米各国で翻訳され絶大な賞賛と人気を得た、不条理で物語にみちた長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • ソ連政権崩壊後のウクライナ、キエフ。情勢は未だ不安定。マフィアも暗躍するそんな街で、作家を目指すヴィクトルは恋人に去られ、憂鬱症のペンギンと二人(?)きりで暮らしていた。そんな彼が短編を持ち込んだ新聞社から、要人の死亡記事を書かないかとの打診が来る。まだ存命の有名人の追悼記事も書き溜めるようにまでなった頃には、彼が記事を書いた要人が、ことごとく不審な死を遂げている事に気付く。そして、彼に近しい人達も一人、また一人、と姿を消していきー。

    舞台となっているキエフについ最近行ってきたばかりだったのでとてもタイムリーな作品だった。ソ連崩壊後の不穏な空気が充満するキエフと、先日行ったロシアとの緊張感漂うキエフ、程度の差こそあれど得もいえぬ不安感が付き纏うのは同じか。ペンギンのミーシャが緩衝材として一役買っているものの、ヴィクトルの一見平和な生活にも終始暗い影が落ち、緊張感が拭えない。最後のヴィクトルの運命には「えーっ」と声を出してしまった程。マジでミーシャがいなければとんだダークな作品になってた所だ…。日常の中の非日常を味わいたい方は、是非。

  • ペンギンと金髪の女の子のかわいらしい表紙と憂鬱症のペンギンと暮らす作家という設定に惹かれ読んでみたいと思っていた。文庫化されるのを待っていたけれど、本屋さんで見かけて表紙だけで購入決定。まさにジャケ買い。

    動物園から引き取ったペンギンと暮らす作家。
    売れない作家である主人公は新聞の死亡記事を書く仕事を引き受ける。
    それをきっかけに事件に巻き込まれていく。

    こう書くとミステリーという感じがするが、本書はそういう面白味よりもペンギンと暮らす主人公が預かった少女と共に暮らしていく様を読ませる作品といったほうが正しいように感じる。

    ペンギンの描写がかわいらしく、少女の描写も愛らしい。
    やはり動物と子供という組み合わせは最強。間違いなし。

    物語と直接関係はないが、作中でコーヒーを淹れて飲むシーンがある。
    わたしはコーヒーが余り好きではないが、たまに飲むときはカップにインスタントコーヒーを入れ温めたミルクをドバドバ入れて作る。一般では湯を入れて作るのだと思う。
    作中で主人公は、コーヒー沸かしにコーヒー粉と水を入れて火にかけ沸騰して泡立ったら火を止めてカップに移すとある。
    本書の原作者はウクライナのひとらしいので、ウクライナではこうやってコーヒーを淹れるのだろうかと面白く感じた。

    ひとり暮らしの主人公が引き取ったペンギンと暮らす。
    ペンギンは群れで生きる動物であるのにたった一匹で人間と暮らすものだが、そういう動物と孤独な男が暮らすところで、群れからはぐれたペンギンと社会からはぐれた男という設定が生きてくると感じた。
    そこへ更に親と離れた孤独な少女が加わるため、どこにも属さない孤立したものたちという状況が際立つ。

    この作家は他にも動物の出てくる作品を書いているらしいが、他の作品も読んでみたいと思わせる一冊だった。

  • だいぶ前に途中までになってたのを初めから読んで読了。

    ペンギンとの共同生活を送る男に降りかかる不条理な出来事の数々。ペンギンのミーシャがかわいいという意見をちらほら見ていたけれど、私はソーニャのあどけないセリフたちがなんとなくかわいく思えた。ミーシャに冷凍シャケを与えるという描写がなんとなく好きだ。

    ロシアの人はなぜか安部公房が好きだ、となんとなく聞いたことがあったが、醸し出される雰囲気は似ているような気がする。引っ越し前にがらんどうになった空き部屋を見た時のような寂しさともなんともつかない気持ちが不思議と呼び起こされる。他人がいちいち新鮮に見えたり、不気味なものに見えたりする不思議な感覚である。

  • ファンシーな感じの表紙に、どんなアンニュイなペンギンが出てくるのかと思いきや、とんでもなくダークな小説だった。

    売れない作家と憂鬱症のペンギン、作家の友人の娘。
    ペンギンと娘のシーンがなければ、本当にダークな小説で終わっていたと思う。
    当時の情勢は、私にはよく分からないが、不穏な空気が醸し出されていて、どんよりとした気分でページを捲っていた。

    ペンギンの元気がないから(自分の周りもおかしいことばかりだし、暗殺的な意味で)、どうにかして南極に返してやろうと、作家は色々手を尽くすけど、最後の最後で…結局作家はどうなったんだろう、ペンギンと娘は??

    どんよりとした気分で、と書いたが、それでも作家はどうなるんだろうと、ハラハラした気持ちで読み進めていた。
    ダークグレーのような、鈍色のような雰囲気の小説だった。

    こんなこと書いたら、村上春樹の愛読者には怒られるだろうが、どことなく村上作品に通ずるような読後感だった。
    でも私も村上春樹作品は好きである。

    続編はあるが、原典と英訳しかないので、英語がよく分からない私は読めない。くやしい。

  • 売れない小説家のヴィクトルとペンギンは、共に孤独を抱えて同居していた。新聞社で「まだ生きている人物の追悼文」を書く仕事を得たが、間も無くその人物が不可解な死を遂げるのに気付く。4歳の少女を預かり、ベビーシッターとも親しい間柄となり、政治的なキナ臭さを感じる中で不安定な関係を築いていくが、彼の周りは徐々に死の影が濃くなっていく。衝撃でありながら飄々としたラストが面白い!部屋を愛らしく歩き回り、時にはヴィクトルに身を預けて甘えるペンギンがホッとさせてくれる。ストーリーも雰囲気も楽しませてくれる小説でした。

  • 不条理サスペンスだとは思わなかったから驚いてしまった。途中ドナーの話になり、これは疑似家族殺人事件で終わるのかとはらはらした。思い入れのある本だけど、正直いまいちよく分からなかった。とても憂鬱な気持ち

  • 追悼記事をあらかじめ書く仕事を始めたヴィクトル。動物園からもらいうけたペンギンのミーシャ、知り合いから或る日突然預かった幼い少女ソーニャ、そのベビーシッターのために雇ったニーナとの暮らしは擬似家族のようでいて、物語はずっと大きな何かの片隅で巻き込まれているようないないようなところで始まり、終わっていく。

    ミーシャとソーニャが出てくるところはかわいらしくて好き。

  • 切迫感がページをめくる手を止めさせなかった、殺伐とした面白さでした
    最後のページが長い物語を受け止めるには少し消化不良なので星4つ

  • 飄々とした文章で語られる、不穏な物語。
    生きている人間の死亡記事を(勝手に)準備しておく仕事の依頼、という冒頭から引き込まれる。
    主人公と同居しているペンギンは、鬱という設定からも比喩を負っているのだろうけれど、閉塞感が増していく状況の中で、ユーモラスなペンギンの様子は空気穴になっていて、苦しい現実の救いというフィクションの能力を思った。
    物語の設定は軽くないけれど、個々のエピソードやキャラクターが面白く、ざっくり斬られるようなラストの後も読後感は悪くない。
    また手に取りたい作品。

  • 図書館で。
    ウクライナの情勢を思うと何気なく書かれているようで何か政治的意図とかがあるのではないか?とか勘ぐってしまうお話。色々な民族が居て、争いの歴史がある統一国家って大変なんだろうなぁ…。

    ペンギンの手術に子供の心臓が必要かどうかはよくわかりませんがそういう話ではないんだろうな。それほど面白い、と思う訳でもないのですがなんとなく引き込まれて読んでしまいました。
    この主人公みたいなタイプはキライなタイプだけれどもああいう場所だと流されてしまうのかなぁと思ったり。でも主人公みたいな優柔不断で自己中心的な人物は苦手だ。自分の面倒も見きれない人間がその時だけの感情で子供やらペットやらを引き取るのはどうなんだろうか?とは言えじゃあ引き取らなかったペットや子供はどうなるんだ?と思うと引き取られて良かったのか、とも思う訳ですが。どうなんだろう。

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