奇跡も語る者がいなければ (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900434

作品紹介・あらすじ

イングランド北部のある通り。夏の最後の一日がはじまる。夕刻に起こる凶事を、誰ひとり知る由もないまま-。22番地の小さな眼鏡をかけた女子学生。彼女を密かに恋する18番地のドライアイの青年。19番地の双子の兄弟。20番地の口ひげの老人。そして、16番地の大やけどを負った男と、その小さな娘…。通りの住人たちの普段どおりの一日がことこまかに記され、そこに、22番地の女の子の、3年後の日常が撚りあわされてゆく。無名の人びとの生と死を、斬新な文体と恐るべき完成度で結晶させた現代の聖なる物語。

感想・レビュー・書評

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  • ひとつの通りの人々の一日を、丹念に描写することによって、綺麗な小説にしてしまうとは!
    スコットランドがぽろぽろでてきて嬉しかった。

    でもなんかとても悲しい話だったんだけど!
    いや確かに奇跡はおきたけど悲劇も語るものがいなければって感じだった・・・

  • 文学ラジオ空飛び猫たち第99回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/nq7TRJV3hwb 詩的な小説が好きな人や、過去と現在が交差するような小説が好きな人には読んでもらいたい。 こんなに静かな小説なのに複雑な感情が巻き起こる小説はそう多くないはず。タイトルに負けない素敵な内容。

  • ある通りの人々の一日を書き連ねているだけで、こんなに詩的になるのはこの著者の不思議な文体のためだろうか。帯に書いてあった天使のように書く、と言うのは素敵な表現だとおもう。似ているようで違う言葉で語り、見えているようで見えてないものを見せてくれる。そんな本だ。奇跡も語る者がいなければ奇跡とは呼べないし、事実も語る者がいなければまぼろしになる。そんな本だ。たくさん出てくる人たちの中でも、20番地の老夫婦が好き。怒鳴ることないわ、すぐ後ろにいるんだもの。

  • 私が呼吸をすれば酸素が減る。私が歩けば足跡ができる。私がなすことはそうして世界に影響を与え、確実に世界を変える。そんなミクロな交流がマクロに世界を動かし、カオスを生み出している……と大上段に構えてしまったが、著者が訴えたいのはそうした世界が豊かなカオスである事実(そして、その事実こそが「奇跡」であること)なのではないだろうかと思った。イギリス映画を連想しながら読んだ。例えば『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のような映画とこの本は似ていないだろうか。「いぶし銀のヒューマン・ドラマ」と片付けると安っぽくなるが

  • この本で起こる奇跡は、死んだ男が超自然的な力で生き返るとか、消えたはずの村が突如現れたとか、そういった派手なものではない。普通の日常の中にあるごくありふれた出来事が、語り手によって同じ場所に並べられて初めて「あれ、これって?」と気付くような奇跡だ。つまり
    、語り手抜きでは成立しない奇跡。
    もし、私の生きる毎日を、この語り手の目でもって見つめてみたとしたら。ものすごく近くで、ちょっとした奇跡が起こっているのかもしれない! そう思うとこの世の全てが素敵を隠しているみたいでワクワクしてくる。

  • 不思議な読み心地な作品だ。イギリスのある通りで「事件」が起きる。その日の朝から通りに住む人々の詳細が取り留めもなく綴られて、読者は「神」目線で通りを眺める感じ。一方で、その事件の数年後の住民の一人である「わたし」の現在パートもあるのだが、そちらは彼女一人の心情を綿密に語っていて読者も彼女の感情をリアルに味わうのだ。過去と現在を行ったり来たりでいまいちのめりこめないのだが、それが不快ではない。誰かに記憶される奇跡と、誰にも知られずひっそり起きる奇跡。どちらも等分に愛しく価値のあるものに思える。

  • 地方都市のなかで流れている時間(とき)……。
    あるいは、流れが止まってしまっていると感じる時間もありますね……

    ドラマティックな出来事があってもなくても、
    素晴らしいものも素晴らしくないものも、
    見るべきものはたくさんある。

    丁寧に丁寧にしか読めない小説。頭蓋骨のなかで言葉を反響させるように。

  • 4-10-590043-9 366p 2004・11・25  ?

  • なによりも、そのタイトルが気に入って読んでみたものの、Remarkable Things は奇跡じゃないし、それが素晴しいものであることに変わりはないものの、本当のことを表してはいない。

    処女作がブッカー賞候補にもなったという話題の作品で、邦訳も何かと趣味のよいシリーズから出版されていて、そのシリーズは新潮クレストなのだけれど、正直あんまり好きになれない。

    こういう精密なデッサンのような小説は嫌いではなくて、その独自の文体は、原文からしてかなり特異で詩的なものらしいけれど、それが翻訳によってどの程度再現され、失われているかも判らなくて、でもそういう文体が今一つ響いてこない感触で、実際のところも実験小説の域を出ないのではないか、とわたしは思う。

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