遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)

制作 : 松永 美穂 
  • 新潮社
3.34
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本棚登録 : 221
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900441

作品紹介・あらすじ

婚約指輪を列車のなかに忘れた若い女性があれば、大道芸に使うナイフを忘れた旅芸人がいる。入れ歯が、僧服が、そして現金を縫い込まれた不審な人形が見つかる。舞台は北ドイツの大きな駅の遺失物管理所。巨匠レンツが、温かく繊細な筆致で数々の人間ドラマを描き出す、待望の新作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 初レンツ本です。クレスト・ブックスで翻訳が独文の松永さんといえば、もうそれだけで信頼してしまいます(笑)。装丁も素敵で、ただ飾っておくだけでもいい(笑)。

    鉄道会社の遺失物管理所(「忘れ物センター」よりもごつくていい響きです)に仕事を得たヘンリーと、その同僚たちの物語です。題名からは窓際職場の重い空気の作品を想像したりもしましたが、ぱらぱらっとめくった他のレンツ作品よりも軽やかな作品だと思います。主人公のヘンリーは天然キャラの、明るい雰囲気を持った青年。自分の将来などはあんまり深刻に考えていないようでもあるけれど、日々きちんと仕事をこなしています。でも、それは他の同僚の「きちんとやる」とはちょっと外れたところなんですけど…軽やかに楽しそうです。ダンナがいる同僚の女性(もちろん年上だ)に「好きです」とか直球で言ってみたり。私の中のゲルマン民族とはちょっと遠いキャラクター造形のラブリーさで、思わずくすくす笑ってしまいます。

    もう一人、遺失物のつながりでヘンリーと友人づきあいをするようになるフェードルという数学者が登場しますが、彼のエピソードはきらきらしているようで幕切れがなんだか切ないです。隠れた悪意が表に出る瞬間の鋭さを感じてしまいます。

    とらえどころのない群像劇のように話が進むので、ストロングな作風を好まれるかたにはいまひとつかもしれませんが、私はこの軽やかで、静けさを感じさせる作風も嫌いではないのでこの☆の数です。

  • 題名がいい。新潮のクレストブックはどれも装丁がいいよなあ。その名の通り鉄道での忘れ物を管理している所で働いている青年が主人公。ちょっと予想してたのとは違った話だったけど、これはこれでよい。遺失物をめぐるミステリーみたいな感じかと思っていたのだが。どちらかというと人間関係、どう関わりあっていくかってとこか。丁寧な数学者の「刺さった矢は抜けるけど、言葉は永遠に突き刺さったままだ」という言葉が印象的。そんな言葉を二度と使わずにいられたらいいのだけれど。

  • 2017/01/03

  • ドイツ鉄道のターミナル駅の遺失物管理所が舞台ということで、人間模様が交錯する様子がとても面白い。
    ただし、物語全体としては面白かったけれど、主人公のヘンリーの無邪気すぎるがゆえの邪悪さに、神経を逆なでされるようだった。自分の周りにはいて欲しくない。

  • ドイツの鉄道の遺失物保管所では、大切なものを無くした人が飛び込んできたり、自分のだと証明するために一苦労したり、モノと人とが交錯する。
    最初は苛立ったくらいに子どもっぽい主人公のヘンリーは楽しみながらいろんな課題を解いて行く。彼はどうしようもなく考えなしで子どもっぽく、残酷なほど大人の常識を踏み倒す。けれど、大人の常識として、猜疑、差別などを飲み込むことができない。「大切な友人」だと思っていた人を傷つけられて、今まで自分ごとだったので放っておいたことに、爆発的な怒り、理不尽な大人の矛盾に盾を突く。けれど、彼はヒーローになりたいわけでも義憤にかられたわけでもなく、ただ、許せなかっただけで、彼は何一つとして変わらない。

    個人的には、白人同士の差別というのが新鮮で、同時に気分が悪くなりました。

  • 北ドイツの大きな駅の遺失物管理所に派遣された青年。様々な人間が様々な置物、忘れ物を訪ねにやってくる。街の有力者と縁続きのこの青年は生来のお坊っちゃんで、職務規定や服務規程を正しく理解せずに、訪ねてくる人達と常識はずれのかけあいをやらかす。口答えせず上司や同僚の言うこと聞けよ!と思いつつ、こういう幼いところ、自分にもまだ残っていて嫌になる。駅員さんの物語ではなく、遺失物管理所という設定がミソ。持ち主を特定するために、お客に対して唯一強い態度に出られる場所だから。そんな処にいたら、謙虚さなんて育たないよ。

  • 鉄道の遺失物管理所にやってきた一人のやる気のない青年を巡る話。
    ゆるい話。
    悪事を見ても、通報しないで、様子を見ているゆるい青年。
    青年の姉、客として知り合った外国人教授、年老いた同僚、結婚していても気になる女性同僚とせまい範囲で物語が進む、外国の本にありがちな淡々とした話。
    人それぞれ、大切に思うものが違うということを伝えたいのかな?

  • 鉄道の遺失物管理所を舞台にした物語。

    乗客が忘れた色々なものが届けられるのはどこの国でもいっしょ。

    ただせっかくの面白い題材なのにあまり盛り上がらない。残念。

  • 序盤の僧服の短いくだりでヘンリーに苦手意識を持ってしまいました。
    クリスチャンではないのですが、人の生活と宗教は密接に関係していると日頃から考えています。キリスト教信者は仏教徒、とりわけ日本人とは違って毎週教会に通うほど熱心な人が多いということも聞いたことがあります。
    だからでしょうか、ああも笑いのタネにしてもいいのだろうかと思ってしまったのです。物語りだからとは思います。もしかしたら、ドイツ人渾身のギャグかもとも考えましたが、どうしても納得ができない。
    モヤモヤとしたものを抱えながら読み進めていったが、やはり最後までヘンリーに抱いてしまった軽薄な人間という印象は消えずに読み終わってしまった。
    はたして私は神経質なのでしょうかね。

  • タイトルと、その設定がいいね。
    遺失物管理所…
    惹かれるじゃない。

    にしては、遺失物管理所としての仕事が主に進んでいくでもなく、そこで関わる人達との物語が中心なのかな。小さい出来事や事件がポンポンと、次から次ぎへと起こって、それが、けっこうあっさり次から次ぎへと流れていった印象。
    登場人物も、わりかし交換が持てたし、面白かったと思うけど、なんとなくあっさりし過ぎてたかな、と思った。

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