- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900632
感想・レビュー・書評
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遠くにぼんやりとしていた不安が、恵まれた中流家庭に少しずつ近づいてくる。そして事件。たった一日の出来事をすごく緻密に描写していて素晴らしいけど、ほんの少し退屈でした。
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日曜の朝をいかに素敵に迎えるか。これは土曜日にかかっています。土曜の波乱が、日曜の朝を幸福にするのです。波乱といっても、日常の波乱でかまいません。読んでいて、そういう感慨に耽っていました。このはなし、終わりかたがなかなかよく、余韻をのこします。(たぶん、訳者のあとがきは目にしないほうが…)
睡眠不足がつづいた平日。それをのりこえた土曜の朝。そんなときにこの本を開くと、いいことがあるかもしれません。日曜の朝、珈琲でも飲みながら、この小説について誰かに話したくなるかもしれません。
ついでながら、マシュー・アーノルドの詩がでてきます。これから読む人は、アーノルドの有名な詩をちょっとだけ勉強しておくと、より楽しめることでしょう。Dover Beach。
The sea is calm to-night.
The tide is full, the moon lies fair… -
たまにはこういうの読みたくなる
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脳神経外科医のヘンリー・ペロウンが夜明けの数時間前に目を覚ましたとき,身体はすでに活動を開始している。ベッドに起き上がった姿勢でシーツを押しのけ,立ち上がろうとしているのだ。いつから意識があったのかは定かでないが,それはたいした問題とも思われない。こんなことは初めてなのだが,そのことには驚愕どころか軽い驚きさえなくて,動作は軽く,四肢が愉快であり,背中や脚はひどく力に満ちているようだ。ベッドのそばに裸で立ちーー寝るときはいつも裸だーーしゃきっと背を伸ばしつつ,妻のひそやかな息づかいと,膚に触れる冬の寝室の空気を感じている。これもまた愉しい感覚だ。ベッドサイドの時計は四時半をさしている。
(本文p.5)
※ひとこと※
土曜日の午前4時半から,一日の終わりまでを描いた小説。幸せそのものに見える日常生活に,じわじわと不穏な影が近づく。 -
帰省した時に購入予定
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イアン・マキューアンは初めて読んだ。この手の内省的な小説はあまり好みではないのだが、意外にスンナリと入ってきたような読後感。主人公のペウロンは脳外科医としての仕事はうまくいっており、理想的な家庭にも恵まれている。ある土曜日、火を噴きながら着陸する飛行機、イラク戦争反対のデモ行進、痴呆で施設入所中の母などを見ながら、自分と家族にこれらがもたらす危険をつらつらと(これが長い)考える。未来の可能性を恐れ、これに備える性向は、職業上は役に立っているが、老いによる衰えを自覚するにつれ、御しがたい雰囲気を醸し出してゆく。家族がそろっての晩餐にやってきた押し込み強盗を辛くも撃退し、救急車で運ばれた犯人の手術を無事終え、妻とのベッドの中で、長かった一日を安らかに終える。■あまり説得力は感じられない。けれども、概して人間は信じるように傾くものだ。そして、間違っていたと証明されたときには、見解を変える。あるいは信仰を持って、信じ続ける。■なんと幸運なことだろう、自分の愛する女が自分の妻でもあるというのは。■ヘンリーにとっては、これもなじみの要素だ。眼に見えないものの恐怖。安全な距離から目撃する惨事。■何事にも、大した意味はないのだ。自分を悩ませていた事柄はすべて平穏に解決された。