- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900632
作品紹介・あらすじ
ある土曜日の朝4時。ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。テロか?まさか?弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちていた-。名匠が優美かつ鮮やかに切り取るロンドンの一日、「あの日」を越えて生きるすべての人に贈る、静かなる手紙。ブッカー賞候補作、ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
何気なく手に取ったが、今この時読んでいると書かれている言葉の意味が重く感じる。
特にイラク戦争反対の娘と、消極的賛成の父親の言い争いのシーンが・・・
読んだのが刊行直後なら、政治的な問題で言い争う親子の描写を欧州独特の描写として興味深く読んだろうが、SNSで政治思想がシェアされてくるこの時代、再会を喜んだ次の瞬間険悪な雰囲気に、というのはなんとなくこの身に引き寄せて考えてしまう。さすがに実生活で政治思想を争うことはないが、職場でふとした瞬間相手の思想を察してしまうことはあるからね・・・ -
40代男性脳神経外科医が主人公のある土曜日の様子が丸々一冊。真夜中とも早朝ともいえる時間に目覚めて窓の外の出来事を目撃するまででもページを重ねる。外出して車で角を曲がるだけでも少なくとも2ページは使う。記憶に纏わる描写や現在の心情描写が細かに豊富に記されているわけで、クドイ!とは思ったけれど放り投げる気にはならなかった。展開にちょっとだけ起伏はあったけれど破壊的なものはなく主人公も変わりなく、だった。奥さんのパートがあれば読んでみたかった。朝からうるせーな!だと思うけど。解説で幸福な主人公や家族のことを描くのはどうかと揶揄されていたとされていたけれど、むしろ小説にしかできないのでは、と思った。テレビドラマとか映画じゃつまらなすぎるし。総じて、頑張って読みました!
-
現代の、それもブルジョアのジェームズジョイス、といった風情。とても楽しく読めた。
-
途中放棄 2013.09図書館
-
静謐な文章の中に、不穏さを孕んだ物語。主人公が幸福な人間というのが、マキューアンにしては珍しい。
-
遠くにぼんやりとしていた不安が、恵まれた中流家庭に少しずつ近づいてくる。そして事件。たった一日の出来事をすごく緻密に描写していて素晴らしいけど、ほんの少し退屈でした。
-
格の地位を誇る英文学界の手練れマキューアンが贈る最新作、全英ベストセラー。
突発的なテロ、見知らぬ若者の激発、親友との仲違い。なにが起こっても起こらなくとも不思議ではないその日、ヘンリーの周囲は危機の予兆に満ちていた。そう、世界はあの日以来変容してしまったから――。果たして安息の日曜日は訪れるのか -
サスペンスタッチはなりをひそめていますが、登場人物たちをちょっと突き放したようなマーキュアン調は健在でした。ただなかなか物語に入り込めなかったです。もう少し老成してから再読したらいいかもと思いました。
-
98年のAmsterdamでブッカー賞受賞、イギリスの作家。六本木の青山ブックセンターで平積みしてあって、気になって帰りに図書館で見つけたので即借りました。
--- -
一人の男性とその家族の土曜日を通して、911後の世界とその問題をとりあげた小説。
主人公ヘンリーは優秀な脳外科医、妻ロザリンドは弁護士、娘デイジーは詩人、息子シーオはミュージシャンとして満足した生活を送っている。
しかし、その生活も一つの大きな事件によって……あとは略。
マキューアンの緻密な描写に圧倒されます。
義理の父で詩人のグラマティカス、痴呆状態の実母のリリーの描写も深い。 -
日曜の朝をいかに素敵に迎えるか。これは土曜日にかかっています。土曜の波乱が、日曜の朝を幸福にするのです。波乱といっても、日常の波乱でかまいません。読んでいて、そういう感慨に耽っていました。このはなし、終わりかたがなかなかよく、余韻をのこします。(たぶん、訳者のあとがきは目にしないほうが…)
睡眠不足がつづいた平日。それをのりこえた土曜の朝。そんなときにこの本を開くと、いいことがあるかもしれません。日曜の朝、珈琲でも飲みながら、この小説について誰かに話したくなるかもしれません。
ついでながら、マシュー・アーノルドの詩がでてきます。これから読む人は、アーノルドの有名な詩をちょっとだけ勉強しておくと、より楽しめることでしょう。Dover Beach。
The sea is calm to-night.
The tide is full, the moon lies fair… -
P184
<<あまり説得力は感じられない。けれども、概して人間は信じるほうに
傾くものだ。そして、間違っていたと証明されたときには、見解を変える。
あるいは信仰を持って、信じ続ける。時代が移り、世代が変わっても、
これがいちばん効率的だったのかもしれないー一応は信じておけ、という
態度が。
●『神の名のもとに』にも同じことが書いてあったことを思い出した。
P335~P337
<<母は死んでいない、と、ペロウンは自分に言い聞かせ続けた。しかし、
全ての飾り、一生かかって積み上げた細部のすべてがこれほどあっさり
簡単に包まれてどこかに送られたり二束三文の店に下げ渡されたりする
のを見ると、リリーの人生は-いや、誰の人生も-あまりに希薄なもの
に思えた。物は持ち主とその過去から切り離されると、がらくたに
なってしまうのだった。・・・そうして、土曜日が日曜日になる。>>
●人生の"土曜日"から"安息の日曜日"に向かいつつあるペロウンの思い。
昨晩からは想像もできないような事件があっても、遠い未来や近い
将来の生活を予想することをやめられず、不安に苛まされる。
バクスターの生死を管理したいという願望もまた不安の裏返しである。
一つだけ確かな"訪れる日曜日"に対するペロウンの不安には共感できる。
P341
<<今回は忘却の縁へと沈むのを邪魔するものはなく、誰も自分を止める
ことはできない。眠りはもはやひとつの概念ではなく実態的なもの、
いにしえからの移動手段、自分をゆっくりと日曜日へ運んでいく
コンベアベルトである。ロザリンドにぴったり寄り添う。シルクの
パジャマ、彼女の匂い、温かさ、愛する姿態。さらに身を合わせる。
闇の中、うなじにキスする。いつでもこれがある、というのが、
最後に残った思いのひとつだ。それから、これしかないのだ、と考える。
そうしておしまいに、眠りに落ちながらのかすかな思い。一日の終わりだ。>>
●綺麗な終わり方だと思う。妻のことを確かなものに感じながら眠りに
つく姿は美しい。
☆きっかけは本読みHP
読了日:2010/06/06 -
[ 内容 ]
ある土曜日の朝4時。
ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。
テロか?
まさか?
弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちていた―。
名匠が優美かつ鮮やかに切り取るロンドンの一日、「あの日」を越えて生きるすべての人に贈る、静かなる手紙。
ブッカー賞候補作、ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
さすがマキューアンと言いたくなるような、ざらりとした嫌な読後感の残る一冊(笑)
小説としてはすごいと思いますが、あまりに後を引きずる重さがあるので読むときを注意して選ぶべき。
書評で脳外科手術のシーンが絶賛されていましたがそれには同意です。小説を執筆するに当たり脳外科手術の様子を2年間(!)見学しただけあって、本職の外科医かと思わせるような精緻かつ美しい描写。
この外科シーンだけでも読む価値のある本です。
そしてこのレビューを読むあなたもこの外科シーンにつられてこの本を手に取り、残りも読んで、私と同じ嫌な読後感を共有してほしいものです(笑) -
「9.11以降変容してしまった世界のありようを一人の男の一日の出来事と意識を追うことで描いた」って感じなんだろうか。その世界観というか肌触りを共有できなかった。
別に小説世界を共有することが絶対に必要とは思わないし、むしろ共感を強要するようなタイプの作品は敬遠したい。でもここで前提にされているのは欧米人の感覚なのだと思う。これは、二度と再び以前の世界にはならないという痛切な痛みをもって9.11以降を生きる人のための小説だ。そして多くの日本人は(少なくとも私は)そうではないのだと思う。
確かにあれは衝撃だった。いったい世界はどうなるのかと思った。でもよくよく考えてみれば、どこまで実感しているかはともかく、それはアメリカ人に成り代わって、アメリカの受けた打撃に引きずられて多めに見積もられていた感覚ではなかったんだろうか。もとから世界は不愉快で理解できない隣人で満ちている。それは9.11に始まったわけじゃない。 -
眠い、何故こんなに読み出すと眠くなるのか。眠い。
-
たまにはこういうの読みたくなる
-
脳神経外科医のヘンリー・ペロウンが夜明けの数時間前に目を覚ましたとき,身体はすでに活動を開始している。ベッドに起き上がった姿勢でシーツを押しのけ,立ち上がろうとしているのだ。いつから意識があったのかは定かでないが,それはたいした問題とも思われない。こんなことは初めてなのだが,そのことには驚愕どころか軽い驚きさえなくて,動作は軽く,四肢が愉快であり,背中や脚はひどく力に満ちているようだ。ベッドのそばに裸で立ちーー寝るときはいつも裸だーーしゃきっと背を伸ばしつつ,妻のひそやかな息づかいと,膚に触れる冬の寝室の空気を感じている。これもまた愉しい感覚だ。ベッドサイドの時計は四時半をさしている。
(本文p.5)
※ひとこと※
土曜日の午前4時半から,一日の終わりまでを描いた小説。幸せそのものに見える日常生活に,じわじわと不穏な影が近づく。 -
帰省した時に購入予定
-
イアン・マキューアンは初めて読んだ。この手の内省的な小説はあまり好みではないのだが、意外にスンナリと入ってきたような読後感。主人公のペウロンは脳外科医としての仕事はうまくいっており、理想的な家庭にも恵まれている。ある土曜日、火を噴きながら着陸する飛行機、イラク戦争反対のデモ行進、痴呆で施設入所中の母などを見ながら、自分と家族にこれらがもたらす危険をつらつらと(これが長い)考える。未来の可能性を恐れ、これに備える性向は、職業上は役に立っているが、老いによる衰えを自覚するにつれ、御しがたい雰囲気を醸し出してゆく。家族がそろっての晩餐にやってきた押し込み強盗を辛くも撃退し、救急車で運ばれた犯人の手術を無事終え、妻とのベッドの中で、長かった一日を安らかに終える。■あまり説得力は感じられない。けれども、概して人間は信じるように傾くものだ。そして、間違っていたと証明されたときには、見解を変える。あるいは信仰を持って、信じ続ける。■なんと幸運なことだろう、自分の愛する女が自分の妻でもあるというのは。■ヘンリーにとっては、これもなじみの要素だ。眼に見えないものの恐怖。安全な距離から目撃する惨事。■何事にも、大した意味はないのだ。自分を悩ませていた事柄はすべて平穏に解決された。
-
何が評価されてるのか分からない本
上手くいきすぎー