密会 (新潮クレスト・ブックス)

制作 : William Trevor  中野 恵津子 
  • 新潮社 (2008年3月1日発売)
3.83
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  • レビュー :26
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900656

作品紹介

早朝のオフィスで、カフェの定席で、離婚した彼女の部屋で、寸暇の密会を重ねる中年男女の愛の逡巡…表題作。孤独な未亡人と、文学作品を通じて心を通わせた図書館員。ある日法外な財産を彼女が自分に遺したことを知って…「グレイリスの遺産」。過って母親の浮気相手を殺してしまった幼い自分のために、全てを捨てて親娘三人の放浪生活を選んだ両親との日々…「孤独」。アイルランドとイギリスを舞台に、執着し、苦悩し、諦め、立て直していく男たち女たち。現役の英語圏最高の短篇作家と称される、W.トレヴァーが、静かなまなざしで人生の苦さ、深みを描いた12篇。

密会 (新潮クレスト・ブックス)の感想・レビュー・書評

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  • 背表紙に「自分はあの時、たしかに愚かだった」とある。
    そう、誰でも過去に思い出したくない記憶、些細なことなのだが自分の愚かさが恥ずかしくてたまらず思い返さないように押し込めているが、夜中にふと蘇ってて頭を抱える記憶がある。トレヴァーはそんな愚かさを淡々と読者の前に差し出す。
    結婚相談所で出会う男女の話が印象的だった。劇場のバーでの待ち合わせも面白い。自称カメラマンで女性に運転させられるかにしか興味がなくタダ飯をせしめようとする男。対する女性はもういい年で、若い男性と二人でレストランにいる姿を知り合いに見せることで「女として終わってはいない」と自尊心を満足させる。救いようのないシチュエーションだが、どちらも淡い満足感を抱いて別れる。

  • この本でウィリアム・トレヴァーを知りました。
    短編の巨匠。
    無駄のない研ぎ澄まされた文章に静けさと奥行きを感じます。特に余韻を残す物語が多く、読んだあと、心の中ではっきりとしないけれど爽やかな淡い感覚が広がってゆくのを感じます。
    ほとんどが悲しかったり、渋い物語なのに、感傷的にならず淡々と、しかしスッキリと読者にゆだねているあたり、感服します。
    彫刻もやっていたらしく、無駄のない文章にらしさを感じました。あとがきに載っていて、あぁやっぱりと納得したのは、まずは登場人物の詳細な情報までたくさん書き出し、削っていくというもの。今、大好きな作家のひとりです。

  • 「外国にいるほうが、自分の国の人間について書きやすい」
    当代切っての短編作家とされるトレヴァーだが、不況のなか職探しでイングランドに住み着き、そこで自国アイルランドなどを舞台にした小説を書いているという。

    なるほど、アイルランドを思わせる気候や風土、決して豊かではなかった頃のアイルランドで暮らす市井の人々の、その生きざまを静かに写し取ったかのような短篇集。

    各編、なぜかどうしようもなくやるせない人々ばかりが登場し、目の前に立ち塞がる人生に、その弱さを露呈しながらも生きざるをえない姿を前にして、ただなすすべもなく読み進む・・・そんな小説ではある。

    だが、ラストにはそんな主人公たちに共感する自分がいて、決して好きにはなれないのではあるが、いつのまにやらその苦しみや孤独に自然に寄りそっている。

    そこにもまた一つ・・・という感じで置かれたなにげないピースが集まって、見えてくる何がしかの人生の真実。生きてゆくというただそのことに、思いがけず尊さなど感じ取ってしまったのかもしれない。

  • ●未読
    ・「クウネル」2008.09.01号 p.62で江国香織が紹介・短編集
    ・短編「孤独」(7歳の子供の架空のお友達の名前(アビゲイルとデヴィ)のラストが意外、とのこと

  • 短篇集。どの作品ももの悲しく、孤独な人々が描かれているのに、読み終わっても憂鬱な気分にならないから不思議。自己憐憫に浸る登場人物がいないからかもしれない。ほんのささいな役でしか登場しない人物さえも、その人生が透けてみえるよう。何が、とうまく言えないのに、何だか好き・・・という、この感じ、子どもの頃、キャサリン・マンスフィールドの短篇を読んだ時に感じたような・・。自らの職業に懐疑的となっている神父と学習障害者の娘との対比が鮮やかな「ジャスティーナの神父」、図書館司書と未亡人との本をめぐる交情とその顛末を描いた「グレイスの遺産」、少女時代から両親と三人で外国を渡り歩いた女性の回想「孤独」、たった一度だけ聴いた音楽を終生、心のなかでよみがえらせ続けた田舎屋敷の召使の「ダンス教師の音楽」が特に心に残った。元夫と、その妄想話を定期的に聞かされる女性との関わりを描いた「路上で」は、男女関係の不可思議さを思う。
    ――A Bit on the Side by William Trevor

  • 「現代のチェーホフ」「英語圏で現存する最高の短編作家」と言われる著者による短編集。
    アイルランドの漁村から一攫千金を夢見てアメリカへ渡った恋人が迎えに来るのを待つ娘は、彼のことを好きなのではなく、アメリカでの暮らしに憧れていただけだった…「大金の夢」
    図書館員が文学作品を通じて心を通わせたことのある女性から遺産を残されて困惑する「グレイリスの遺産」
    母親の浮気相手を階段から突き落としてしまった少女が一家3人で家を捨て、ヨーロッパを転々とする「孤独」
    自分の課外授業の間に若く美しい妻が浮気をしていると知っている老教師とそれを知って生徒としての良心の呵責を感じる「ローズは泣いた」などなど。
    読むほどにじわっと来る。

  • アイルランド出身の作家の短編集。どの主人公たちも孤独や悩みを抱え、解放されるわけではなく受け入れて生きていく。幸せとか不幸とか単純な物差しで計れない、彼ら彼女らのただ一つの人生であることが静かに伝わってくる。特に、心の通い合うことがなかった夫が死んだ夜、訪問者に自らの心情を吐露し、改めて過去と自分を見つめ直す女が主人公の「死者とともに」、不倫の男女の恋が終わっていく様を淡々と鮮やかに描く「密会」が印象に残る。

  • 鋭く胸を抉る話を特徴とするトレヴァーだが、この短編集において老成した著者の筆は鈍い痛みや暖かみを伴った刻印を私の胸に刻みつけるかのよう。一編を読み終わるごとにそれぞれの運命をそれぞれに背負った人物たちを見つめる作者の深いまなざしに圧倒させられる。特に絶品だったのが「孤独」。読み終わった後、不思議と胸に鈍い哀しみ、切なさと暖かさが同居していて、じんわりと心に染み渡っていった。こんな思いをさせてくれる物語はなかなか無い。入門編として国書刊行会の短編集をまず一冊読み、本書に取り掛かることを強くお勧めします。

  • 好きな内容じゃない。でも、ここには何かがある。一言で表現しようとするわたしと違う。一言で言えない、言い切れない何かを短編の形で描いている。来年の藤本義一賞にはこういう話でチャレンジしたい。

  • ひとつひとつ丁寧な短編だと思うが、調子が似ていて、数遍を読んだところで飽きてしまった。たぶん個人的にアイルランド系の文学が合わないのかもしれない。通読していないので評価なし。

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