バーデン・バーデンの夏 (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社 (2008年5月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784105900663

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

ドストエフスキーの複雑な人間性とその周囲の人々の影響を描いた物語が展開されます。1867年のバーデンバーデンでの彼のギャンブル依存や精神的な苦悩、妻アンナの献身的な支えが織り交ぜられ、彼の内面に迫る深...

感想・レビュー・書評

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  • 1867年夏、南独のバーデンバーデンで過ごすドストエフスキーの破滅型のギャンブル依存症、シベリアの投獄の精神的後遺症、癲癇、ツルゲーネフとの不仲、妻のアンナ・グリゴリエフナの寛容と献身などの逸話が綴られる。ドストエフスキーのユダヤ人に対する憎悪について、もう一人の語り手は「小説のなかではあれほど他人の苦しみに敏感で、辱められ傷つけられた人たちを熱心に擁護し、生きとし生けるものすべてが存在する権利を熱烈に、いや激烈ともいえるほどに説き、一本一本の草や一枚一枚の葉への賛辞を惜しまなかったドストエフスキーが、数千年にもわたって追い立てられてきた人々を擁護したり庇ったりする言葉をただの一言も思いつかなかったのはいったいどういうことなのかということである。」と疑問を呈する。偉大な作家ドストエフスキーの常軌を逸した日常を垣間見る物語。

  • ソンダグが発掘・絶賛して世に広めたらしい。
    カザルスが見つけたバッハの無伴奏チェロ組曲といい、どんなに埋もれてても、陽の目を見るべきものは紆余曲折を経ても結局出てくるんだね。世界って不思議。
    女房にかかっては文豪も只の博打好き。
    しっかしタチ悪いな〜負けても負けても有り金どころか何でも質につっこんで( ̄▽ ̄)懲りないなあ…どうしようもないわ(≧∇≦)こんなのを見放さずついていくアンナには頭が下がるわ。
    不思議なバランスで、こんなに死にゆく人の丁寧な臨終シーンって余り見かけない。因みにイワン・イリッチとは全然違います。

  • ドストエフスキーを仮想体験できる。本文は章立てはされておらず長い文で書かれていて、独特な読書体験ができた。プルーストに似た感じもする。ドストエフスキーの生涯がある程度把握できるとより楽しめる。

  • 途中放棄

  • 或る年の冬の始めモスクワからレニングラードへ列車の旅をする語り手。車内の様子や車窓から見える風景と同時に、もう一つ語られる物語。それはドストエフスキーの妻アンナが残した日記。語り手は旅にそれを携行していた。ドストエフスキーの偏屈ぶりとそれを嘆くアンナ。随所にはさまれるドストエフスキー作品からの挿話。二つの物語が自在に入れ替わる。作者ツィプキンはドストエフスキーが反ユダヤ主義に凝り固まっていることを嘆くが、この小説も旧ソ連では出版されずに埋もれていた。それを古本の山から見出だしたソンタグの文章もよい。

  • フョードル、アンナ夫妻のヨーロッパ旅行は非常に苦しいものだったという話を以前どこかで聞いたことがありましたが、こういうことだったのかと溜飲が下がる思いでした。

    フョードルに関しては、美術館に置かれた椅子の上に立って絵を眺めたり、縁起を担いで賭博場までの歩数を数えたり、アンナのそっけない態度に頗る激昂したりと、奇行ともいえる言動の描写が目立ちます。

    こうした金銭的葛藤や屈辱的立場が彼の猜疑心と内面的矛盾を増長する一因になったのではないかと思われる反面で、所々に彼の作品の核心的なモチーフが散りばめられている点からすると、この旅行が彼の作品に与えた文学的・宗教的着想は計り知れないほど大きかったのだなと感じました。

    なお、本の内容自体には関係しませんが、二人の旅程を地図上に示した資料等があればいいのにと思うことがありました。

  • 冬の真っ只中、レニングラード(サンクトペテルブルク)に向う列車に乗った私(語り手)は、叔母に借りたドストエフスキーの妻の『アンナの日記』を携え、旅に出た。

    自分はレニングラード行きの列車に乗っているが、ドストエフスキー夫妻は新婚旅行でレニングラードから、ドイツへと旅立った。
    ドストエフスキー信者の彼は、ドストエフスキー夫妻のひと夏の足跡を地理的に逆走しつつ、大作家の人間像や作品を鮮やかに浮かび上がらせていく。

    この小説に登場するドストエフスキーの妻のアンナは、ドストエフスキーの二番目の奥さんである。
    アンナと出逢ってからは、ドストエフスキーの作品は、口述筆記という形式がとられた。つまり、アンナという第三者を経てから世の中に送り出されている。

    この小説では、アンナとの生活が、リアルに描かれているが、ドストエフスキーが、バーデン・バーデンの夏にいたるまでの経緯はこうだ。

    彼は、若くして作家の名声を得たものの思想犯として逮捕され、投獄生活を送っている。出獄後、愛した女は既婚の子持ち。ダンナさんは政治犯で拘留されてて、この女性を愛する人は他にもいた。
    ライバルがいるっていうのは燃えるんでしょうね。そうこうしてるうちにダンナさんは死亡。結局、彼女はドストエフスキーと結婚するが、本当はそのライバルの方が好き。
    でもライバルは極貧乏。子持ちの女は貧乏ながらライバルより経済的によいという理由で彼をを選んだ。その彼女の恣意を果たしてドストエフスキーが知っていたかどうか。

    自分のものになったら、新妻への愛情は醒め、ドストは浮気、賭博に走り、元々胸病みだった妻は死んでしまい、連れ子を育てることになった。(この子は兄嫁に預けてバーデン・バーデンに向う)

    先妻が死ぬ前からファムファタールのような女にドストエフスキーはおネツでした。彼女はドストエフスキーを翻弄しまくる。
    ---『賭博者』のポリーナ・アレクサンドロヴナにしても『悪霊』のリザヴェータ(リーザ)・トゥシナにしても、『白痴』のナスターシャにしても、『カラマーゾフの兄弟』のカチェリーナ(カーチャ)、アグラフェーナ(グルーシェンカ)もみな同じ人物でポリーナを原型としている。---

    と、サマセット・モームは書いている。

    そして再婚し彼女と添い遂げる。アンナは、なかなか出来た人である。寛容なのだ。
    実家の家宝を質に入れて長々と新婚旅行にでかけたのに、ドストエフスキーは、寂寥で気難しく、偏屈で、賭博熱に浮かされ、若くもなく、持病のてんかんは悪化傾向にあった。

    アンナは、いわゆる見て見ぬふりができる人だった。上記のファムファタールから手紙が来ても気づかないふりをしている。夫がその女からの手紙をどんな顔をして読むのかっていうのがちゃんと見てる。

    このファムファタールと自分との相違は小説ではこのように描かれている。

    ---マドモワゼル・ポリーナは、もちろん、だれも寄りつけないほどの高みにいる女性で、貴族らしく洗練された物腰、男など洟もひっかけないというおなじみの態度、傷つきやすい病的な自尊心、強い性格の持ち主だったが、それにひきかえ、アンナは、彼に見られるたびに鉛筆が折れそうになり、自分が赤くなるのを感じて中学生がはくようなスカートの襞をぎこちなく直し・・・---

    このようにドストエフスキー夫妻の生活情景や作品のことなどが鮮やかに散りばめられ、ドストエフスキーの死の場面で終焉を迎える。

    レオニード・ツィプキンという作家は、医師であった。抒情詩や掌編、中篇、自伝小説などを書いたが、存命中に作家としての成功はなかった。
    研究者としては成功しており、医学論文を多く発表しているそうだ。

    この作品は、古本のなかから発掘された。 邦訳され、クレストブックスに入れられたことで多くの読者を日本でも得ることだろう。
    人間の深淵を遠慮なく覗き込み、どんなタイプの人間だって社会に存在していて、彼らはどのように生きているのかが描かれているのだから。

  • ドストエフスキー夫妻の夏のドイツ旅行と、語り手のレニングラードへの冬の一人旅が、段落を変えることもほとんどなく進んでいき、読みながらいつの間にか夫妻の話から語り手の話に移行していき、また元に戻り、とついていくのがかなり大変でした。が、後半になってそれらが渦を巻くように混ざり合っていくのが圧巻でした。ドスト氏は学生時代に通り一遍に読んだだけの無知状態なのですがなんとか読めました。それにしても文豪の妻はどこも大変だなあと思いました。著者ツィプキンもまた時代に翻弄された人で、とても関心を持ちました。

  • レオニードの呼吸をぜひ味わいましょう。細くながい、ゆるやかなリズムで物語はすすんでいきます。この作品で呼吸困難に陥らない人は、すこし古い書物ですが、『ドストエーフスキイ夫人 アンナの日記』(1979)をどうぞ。。

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    [ 参考となる書評 ]

  • /?day=20090224

  • ええっ?どこまで本気なの?冗談とか悪乗りとは違うの???
    (200810)

  • ドストエフスキー

  • ドストエフスキーってどんな人だったんだろうなぁ と 思った なんか この本の中では とっても 駄目駄目な 困ったちゃん なんだけど。

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著者プロフィール

1957年生まれ。東京外国語大学名誉教授。ロシア文学、比較文学。著書『ロシア万華鏡』(五柳書院、2020年)、『ロシア文学の食卓』(ちくま文庫、2022年)、共著『アレクシエーヴィチとの対話』(岩波書店、2021年)、共編書『ロシア文化55のキーワード』(ミネルヴァ書房、2021年)、訳書ウリツカヤ『ソーネチカ』(新潮社、2002年)、クルコフ『灰色のミツバチ』(左右社、2024年)など。

「2024年 『ロシアの暮らしと文化を知るための60章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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