時のかさなり (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社
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本棚登録 : 150
感想 : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900717

作品紹介・あらすじ

2004年のカリフォルニア、豊かな家庭で甘やかされながら育つソル。1982年、レバノン戦争ただ中のハイファに移り住み、アラブ人の美少女との初恋に苦悩するランダル。1962年のトロントが祖父母に育てられ、自由奔放で輝くばかりの魅力に溢れる母に憧れる多感なセイディ。1944〜45年ナチス統制下のミュンヘンで、歌を愛し、実の兄亡きあと一家に引き取られた"新しい兄"と運命の出会いを果たすクリスティーナ-。世代ごとに、六歳の少年少女の曇りない眼を通して語られる、ある一族の六十年。血の絆をたどり、絡まりあう過去をときほぐしたとき明かされた真実は…魂を揺さぶってやまない傑作長篇。フランス・フェミナ賞、Prix France T'el'evision賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 4人の6歳の子供の視点で物語が現在から過去へと遡っていく。
    ある女性のひ孫から始まり、その子の父親、母親、その母親へ。
    最後に行き着くのはナチスの「生命の泉」と呼ばれる
    欧州の子供誘拐・ゲルマン化計画。

    どういう経路で登場人物たちの人格が形成され、
    ある時の行動をとるに至ったかがだんだんと解明されていく。
    いろんな伏線が張り巡らせてあって、とても読むのが楽しい。

    人間の日常的な傷つきや、子供ながらの無邪気で危険な欲望をしっかり書くので、途中で読むのがつらい場面もあったけれど、
    本の最後の数ページは最高。

    感動もでき、歴史も学べる秀作。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「歴史も学べる秀作」
      確かにそうですよね、でも歴史に重ねて語られているのは、どんな状況にあっても、人との繋がりによって築かれていく、日常の大...
      「歴史も学べる秀作」
      確かにそうですよね、でも歴史に重ねて語られているのは、どんな状況にあっても、人との繋がりによって築かれていく、日常の大切さみたいなモノですよね。
      ナンシー・ヒューストンの邦訳では「暗闇の楽器」もお薦めします。
      2012/09/19
  • 母親に溺愛され、カリフォルニアで何一つ不自由なく暮らす、悪魔的な性癖をひそかに持つ6歳の少年・ソルの物語からはじまる。
    彼にはどうやら複雑な過去を持つ祖母、曾祖母がいるらしく、それはユダヤの血に関係があるらしい。
    物語は4つの章から構成され、ソルの次は彼の父ランダル、その母、またその母、と四世代の6歳の日々が遡るように語られる。前の章では親だった人間の理不尽さが、次の章で子供に立ち返り、やはり親(や、まわりの保護者)から理不尽な仕打ちを受けているのが哀しい。
    少しずつ謎を解き明かしながら時は巻き戻っていく。
    自由の象徴である国で王様のように振舞う少年からわずか四世代遡るだけで、血は拠り所のない不確かなものに変化してしまう様が怖い。人間のアイデンティティなんて簡単に覆されるものなのだと思う。
    ナチスの恐ろしい計画をはじめて知った。
    もちろんナチスに対する非難の意志も感じるが、この著者のいいな、と思う点は、その後イスラエルに紛争の種をまいたユダヤ人や、我が物顔で自由を他国に振りかざすアメリカにも同様に批判的な視点を持っていることだと思う。
    ニュートラルなまなざしで追った一家族の歴史は、途方もなく哀しい。

  • 桙フかさなり (新潮クレスト・ブックス)

  • 歴史って学生の頃から、得意じゃなかったし…
    たまに観る戦争映画って、
    ベトナムだったり、
    ドイツナチス題材だったり、
    ニッポン悲劇テーマだったりして。
    そんなこんなで第二次世界大戦のことを
    知っちゃったりしてた気分でいた。

    で、このくらいのお話だけでも
    知らない事がいーっぱいあった気分。
    もう、なんか知らなくてごめんなさい
    って気分。

    でも、生きて繋いでいって今なんだよね。
    ありがとね、とも想う。

    6歳って繊細だったんだね。

  • 6歳という設定がすばらしい。

  • 友人のオススメと、まあ新潮クレストなら基本的にハズレは無いだろうという軽い気持ちで読み始めたのだが、あまりの面白さにほとんど一気読み。物語は6歳の子供 4人がナレーターとなって 1編ずつを語る 4編構成。それぞれ、ソル(2004年、米国)、その父ランダル(1982年 イスラエル)、その母セイディ(1962年、カナダ)、その母クリスティーナ(1944年、ドイツ)の 4人で、子供の目から見た両親や祖母の謎が、物語が世代を溯るにつれて明らかになっていく。

    物語の端々には 9.11 航空機テロ、パレスチナ紛争と難民キャンプの大量虐殺、ドレスデン大空襲など様々な歴史的な悲劇が折り込まれていて、中でもメインとなっているのはナチスによるレーベンボルン(生命の泉)拉致事件。当時のナチス政権は戦争で減ったドイツ人口を補うために 25万人もの子供を拉致したとのことで、著者がこの事件を知ったことが本書執筆のきっかけだったそうだ。この社会的な告発を、こういう凝った小説として構成できるナンシー・ヒューストンは、まさに物語の魔術師と言えよう。しかも、この本で描かれる様々なエピソードは、必ずしもナチスだけを(あるいはユダヤ人だけを)悪と決めつけるものではなく、普遍的な人間の愚かさと残虐性を明らかにしている。

    痣、人形、歌、「ドイツ語のアルファベットを後から読んでいた」などなど世代を越えた呼応も芸が細かく、再読、再々読に耐える。訳者解説も的確で素晴しい。

  • 主人公は、2004年のアメリカのソル、1982年のイスラエルのランダル(ソルの父)、1962年のカナダのセイディ(ソルの祖母)、1944~45年のドイツのクリスティーナ(ソルの曾祖母)。時代を遡り、6歳の子どもの視点で語られる、ある一族の物語です。
    家族の日常、とくに母親との関係を描きながらも、数々の戦争や政治的問題に触れていて、アイデンティティーとは何かと考えさせられます。
    また、子どもの視点であるからこそ、小さな謎があちこちに残されたまま話が進んでいき、それがすべて解き明かされたときクリスティーナのたどった過酷な運命を知ることとなります。その構成が見事です。
    読み終わるとまた初めから読み返したくなるのですが、いちばん初めのソルの章でしばしば気分が悪くなってしまうのが難点。これから読む方、ここで読むのをやめないでほしいです。

  • akemi ‏@akemiq 28 Jul
    ナンシーヒューストン「時のかさなり」/新潮クレスト、読んだ。 http://www.shinchosha.co.jp/book/590071/ ううむなるほど。。一族譚という情報のみで読み始め、家系の業や血筋みたいなことについて書かれているのかと思いきや、このジャンルだったか、油断していた。業は業なんだけど(つづく

    前半は断片的でしかない事柄を何故それが出てくるのかも判らずやや不思議な感じで読み進め、終盤で情報のダムが開かれ全てが明かされたとき最初から答え合わせをしたくなる。判ると今度はやはり「業」について考えてしまう。この一族の業。ソルの心の闇、セイディを脅迫し続ける「悪」(つづく


    よくできている。なるほどね、という感じ。でもやっぱりどこか他人事というか小説というか、いや小説なんだけど。うまいとは思うけど好きではない。わたしは人の褌で相撲を取る人が嫌いなんだ。当事者だけが語るべきとは言わないけれど、借りて良い物とそうでない物とがあると思うんだよな。。(おわり

  • 遡っていく物語。
    なるほどー、と。
    急いで読んでしまったけど、たまに良い文章に出会えた。

    生命の泉ってのを恥ずかしながら初めて知った。

  • 現代から過去へ、同じ年頃の子供を常に視点におきながら一族の来歴を紐解いていく。何度も前のページを繰りなおしては全てのピースがはまった瞬間は心が震えた。読者に思考停止を許さず、歴史の大きなうねりとそれに翻弄されたある家族の歴史を追体験させる。良い作品でした。

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