サラの鍵 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900830

作品紹介・あらすじ

パリで平穏に暮らす45歳のアメリカ人記者ジュリアは戦時中にこの街で起きたユダヤ人迫害事件を取材することに。しかしその事件が彼女の、そして家族の人生を深く、大きくゆさぶりはじめる…。

感想・レビュー・書評

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  • 1942年7月16日、パリでフランス警察によってユダヤ人の一斉検挙が行われたことを、私は知らなかった。
    物語は、当時を生きるユダヤ人少女サラと、60年後にその歴史的事実を取材するフランス在住のアメリカ人女性ジュリアの視点で交互に進んでいく。

    サラが連行され、収容される様子はやはり読んでいて辛い。心臓が冷えていくような感じがして、深く入り込んでしまわないように無意識に防衛していた。
    そしてパリ市民はどうだったんだろうかと想像すると、それも苦しい。
    後になって何を思ってももう遅く、ただずっと自分の心に残り続ける。きっとそれまでと同じではいられないんじゃないだろうか。

    過去の事実を直視するのは勇気がいることだと思うし、当時の話をしたがらない人がいるのも分かる。
    だからこそ、サラの足跡を追い続けたジュリアの行動と、その結果がとても胸に刺さった。
    なぜ知りたいのか、知ってどうするのか。過去をほじくり返して、傷付く人がいるかもしれないという意見も尤もだ。
    それでも、知らないままで生きていくより、意味のあることだと思う。

  • 読んでから2、3日心にずしんとくる作品でした。
    映画で見ているから大丈夫だろうと思ったのですが、映画とはまたちょっと違いより、リアルで、重たく感じるシーンも…。
    やはり活字で読むと想像力が働くので、そちらの方が生々しいのかもしれません。

    色々考えさせられる本です。
    あえて多くを語るのではなく、一人一人が読んでみてどう感じるかが大事な本なのかなと思いました。

  • この本は途中まで2つの時代の2人の女性を中心に交互に描かれています。
    1つは1942年。パリでのユダヤ人一斉検挙で自身が捕らえられながら、置いて来た弟を思い「助けに行かなければ」と切迫した思いを抱えている10歳の少女サラのストーリー。収容された状況がリアルに描かれ、実際に起きていたことだけに恐ろしいし、読んでる間は他のことをしていてもサラのことが気になり続けていました。
    もう一つは現代のジャーナリスト女性がこの検挙事件についての取材する中で、サラの足跡に近づいていくストーリー。

    フランスでもこんな形でユダヤ人を捕らえていたことを知らなかった。辛い部分もあるけどストーリーに引き込まれて、読み終わっても気持ちが離れません。この時代や歴史をもっと知りたくなりました。



  • 第二次大戦中、フランス警察により行われたユダヤ人迫害をテーマにしながら、その事件が直接間接に今を生きる人達に記憶として引き継がれて、生き方を左右するという、ホロコースト体験を描いたものとしては斬新なスタイルの作品。映画化もされている。非常に強烈な読後感がある。

  • 過去を過去として忘れ去ることなく、真摯なまなざしで見つめとおしたジャーナリスト。女性としてもまっすぐな姿勢が美しい。

    ユダヤ人迫害を歴史の上でみたときに関わってくるのはナチスだけではなかったという衝撃。実際の出来事としてすべて受け入れるのはあまりにも切ない。

    1942年の少女の目から見た悲劇が今も痛いほどに感じ取れます。
    久しぶりに号泣・・・。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「すべて受け入れるのはあまりにも切ない」
      誰がそうさせたのか判りませんが、何時の世でも身代わりや生贄が必要で、そのために日頃から卑しい者と言...
      「すべて受け入れるのはあまりにも切ない」
      誰がそうさせたのか判りませんが、何時の世でも身代わりや生贄が必要で、そのために日頃から卑しい者と言う地位を与えられたユダヤ人。本当に怖いコトです。
      この先、天変地異等で飢饉のようなコトが起こったら、、、生贄を差し出さずに人類は生き延びるコトが出来るのだろうか?
      2012/07/07
  •  今年の東京国際映画祭のポスターで、まず映画版を知り、そして原作の小説がある事を知った。
     それまで、フランス警察によって行われたユダヤ人一斉検挙の事は知らなかったけれど、あったと聞いても驚きはしなかった。そしてその事を、殆どのフランス人が知らない事も。

     テーマがそれだから、勿論重い内容。サラの絶望や苦しみは、私などには計り知れない。想像する事は出来ても、理解出来るなどとはとても言えない。
     だからだと思うが、現代の語り部であるジュリアの、サラに対する入れ込み方に反発を覚える。実生活で彼女自身が苦しんでいる時に、たまたまサラに“出会った”からといって、あんなに簡単に、我が事のように苦しんでいいものなのだろうか。余りにもサラの悲劇と比べて、ジュリアのそれは軽くないだろうか。何が人を苦しめるかはその人それぞれではあるけれど、ジュリアはサラの苦しみを、そのまま自分自身の苦しみに摩り替えているように思えて仕方なかった。
     ジュリアがサラの過去について調べた事は間違っているとは思わないけれど、そしてサラの事を決して忘れないという考えには賛成するけれど、それならば何故彼女はあのアパルトマンから、そしてフランスから逃げ出したのか。
     過去について知ったウィリアムのその後については、全く想像の通りだった。残念な事に。
     ユダヤ人やホロコーストの問題は、所詮日本人の私には分からない事だと言われてしまえばそれまでだけれど、自分が直接受けた傷でもない事で、さも自分は悲劇の星の元に生まれたような顔をする人は、正直好きではない。

     ジュリアがアメリカ人である事に、作者は何か深い意味を込めたのではないかと思ってしまうが、それは考え過ぎだろうか。

  • 映画がよかったので、原作にあたりたいと思い手に取った。過去の物語と現代の物語という二重構造になっていて、本筋のヴェルディヴ事件についてはもちろんだけれど、現代におけるアメリカとフランスの恋愛や結婚観の違いなどがわかったのも興味深かった。フランスでは meetoo運動が盛り上がらなかったと聞くけれど、なるほどね、という感じ。さまざまなタイミングでジュリアが大きな選択を迫られ、揺れるところがよい。夫のベルトランも、わりとダメなんだけど、ダメなりに誠実だし葛藤しているのですよね。見限らずそこを推し量るジュリアの誠実さと優しさもすごいと思った。一方で、優しくされても流されない強さもあって。こういう、ダメ男が女性に甘やかされるのもフランスっぽい気がした。
    真実を知らされてからのウィリアムの心の動きは映画より繊細な描写で心動かされた。映画でも最後の場面は泣いたけど。
    自国に都合の悪い真実には蓋をしてしまうというのは、どこの国でも起こりうるのね。フランスは戦勝国側だったから、検証することも裁かれることも無くてドイツだけが矢面に立たされていたのだろうけれど、1995年にシラクさんがこの事件について現役大統領として初めて言及したというのは、ほんとに英断だったと思う。
    ジュリアがフランス警察や、ユダヤ人輸送に携わった運転手など、加害者側の取材をしなかったことを上司に指摘される箇所は意外に重要な気がした。物語としては流れてしまうけれど、明らかにそこでちゃんと問題提起がなされているという印象だった。今の人権意識からすると、勝った方も負けた方もどの国も相当な酷いことをしている。それが戦争。「戦争中の話だし、もう昔のこと」というセリフが何度も出てくる。けれど、その過去は現在に繋がっていて、決して無関係ではないことをおしえてくれる、良書でした。

  • 読んでいて本当にしんどかった。

    戦争も差別も、よくない。

    本文より
    「真実は無知より辛い。」

  • 二人の女性の物語。
    どちらも自らの選択によって自分自身を壊され、
    がらんどうの自分を抱えることになる。
    そこからの再生への物語。

    そのためには向き合わなければならない。
    守るために沈黙することは、
    苦しみを引き延ばすだけで、
    その絶対量は変わらない。

    そして自分の力で変わり切れないとき、
    思いもかけない方向から変革者はやってくる。
    それはその者の姿を借りた、
    運命そのものなのではというほど圧倒的な力で来る。

    大事なことがもうひとつ。
    片方の主人公が当事者ではないこと。
    その彼女が人生をやり直すことの意味。
    それは読者である私たち自身にも
    同じ「人間」たちとして無関係と逃げることは
    許されないということなのではないだうか。


  • 数年前に読んだ本ですが記録しておきたくて。

    なんとも言えない悲しさ。むなしさ。

    フランスでもユダ人迫害してたのだという驚き。

    逃走後温かい人達に育てられにもかかわらず心の傷は消えない。良かれとした事が悲劇になってしまった。

    読後は心が重くなるかもです。 

    映画も良かった。

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