いちばんここに似合う人 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900854

作品紹介・あらすじ

水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 今の安定していない自分にとって天から降りてきたような短編集だった。
    とても、勇気づけられたし、もっと、この本に浸りたかった。
    けど、読み終わった瞬間自分は現実逃避をしていることに気づかされ、目が覚めたような気がする。
    この短編集に出てくる人々はいつも孤独で不器用にみんなとつながって生きていくことがベースになっているだろうけど。
    世の中に対して腐るほど不満があっても、自分の思い通りにならないけど、強く、たくましく、生きていくよう教えられた気がする。

    2013.9.8 (1回目)

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    『いちばんここに似合う人』読了。
    孤独な魂がお互いを必要としあい共鳴しているかのような短編集。
    以前読んだ時もこの作品にその当時の自分は救われた。本当に孤独で寂しかった。けど、その寂しさも今となっては種類が違う寂しさとなっていて。人間は一生孤独と付き合っていくものなんだと思った。
    不器用な人たちの歩み寄りがとてつもなく不器用。
    妄想も少し混じりつつもあるけど、嫌いではない。それくらいの許容が許されるといいなと願わずにはいられない。
    「あー、そういうことあるわ…」と、腑に落ちる瞬間が何度かあった。人を愛するとどんなことが起きるのか。様々な形があって面白かった。
    この本を知るきっかけになったブログの引用から「自分が孤独なことを あっさり認めよう。誰かとつながりたい という気持ちに素直になったとき、きっと不器用であることが武器になる」とあって、まさにその通りだなと読んで思った。
    結果はどうあれ、自分の気持ちを大事にしたいね。

    2021.6.8 (2回目)

  • 半泣きのような、半笑いのような。一編を読むごとに、きっとヘンな顔になっている。
    ゾクゾク、ゾワゾワして、しんとする。僕の中の埃が溜まったへこみを押し開けて、入り組んで届きにくいカーブに指をぴたっと添わせてグイグイ突いてくる。
    なんともイタ気持ちいい読後感。しばらく動けない。

    ギュッと腕を身体に巻き付けて、バラバラに解けてしまいそうな自分の形を保つのに必死なとき。一緒にベッドに潜り混んでいる人の寝顔が、見知らぬ他人だと思うとき。バスタブの中で息を止めて、「ねぇ、私は悪くないよね」って呟くとき。
    そんな危うい瞬間を潜り抜けて、残念な今日とウンザリな明日を生きていく誰かさんに、奇妙な回線で、接続してしまった。

    『水泳チーム』
    “朝起きるとわたしはまず思った。ー きょうは水泳の練習の日。それ以外の日は、朝起きると思ったー きょうは水泳の練習のない日。”
    圧倒的な孤独の中に消失してしまいそうな自我をかろうじて繋ぎ止めるために、わたしは「水泳コーチ」という役割を進んで引き受ける。
    教え子の老人達もまた、何もないちっぽけな町の中で耐え難く老いていく自分に抗うように、水泳の練習に打ち込んでゆく。
    例えそれが、水を張った洗面器に顔を沈めて、手足を床の上でバタバタさせるだけだとしても。

    アスリート特有のピュアで滑稽な真剣さを共有した素晴らしいチームを、後年に彼女はジョークにできない。
    “もしあなたがこの話をおもしろがるような人だったら、わたしだってとっくに話してただろうし今もまだあなたと付き合っていたかもしれない”

    悲しみと共に、アパートで泳ぐ老人のイメージが心に焼き付く。一番大好きな物語だ。


  • たまの例え話にハッとする、訳がすごいのかもしれない。原文も気になる。
    悲惨さの中にもユーモアがあったり、ひたすら現実味だけがあったりして、大半が口でしか笑えない雰囲気だった。何がなんだかわからなかった作品も、少し経つとなんとなく記憶から立ち昇ってきてしまう。

  • 黄色な装丁がもう素晴らしく素敵なのです。
    この色とデザインにふらふら惹かれて手にとってすぐに読みました。

    ああ好き、この感じ。
    16のお話それぞれに孤独な人がいて、その孤独さはけれども決して特別なものなんかじゃなくて日々の暮らしにふっと過る誰しもが感じるものであって、でもとても奇妙なもの。
    孤独を埋めるために誰かと一緒にいて寄り添っているのに、繋がることがより一層の孤独を生む。
    寂しさがずっとずっと増していくばかりの何とも切ない感じ。
    その感覚が自分の抱える冷たい部分と妙に合わさって心地良かった。
    訳者の岸本さんの感性がもう素晴らしくて、とても感じ入って物語の世界に浸れました。

    孤独だけど、孤独ゆえに誰かと繋がったという事実が仄かであっても光を生むのだなぁ。
    「水泳チーム」「階段の男」「あざ」がお気に入りです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ああ好き、この感じ。」
      最初に読んだ時、まさにソレでした。。。
      クレスト・ブックスの創刊15周年PR誌によると、この冬に新刊が出るそうで、...
      「ああ好き、この感じ。」
      最初に読んだ時、まさにソレでした。。。
      クレスト・ブックスの創刊15周年PR誌によると、この冬に新刊が出るそうで、待ち遠しい~
      2013/09/19
    • かりささん
      こんにちは♪コメントありがとうございます(*^-^*)
      本当に!読み始めてすごく世界観が素敵でとても心地よく読んだのを覚えています。
      クレス...
      こんにちは♪コメントありがとうございます(*^-^*)
      本当に!読み始めてすごく世界観が素敵でとても心地よく読んだのを覚えています。
      クレスト・ブックス創刊15周年PR誌、お手元にあるんですね!
      私まだ未入手なのでこの週末フェア開催の書店にいってみようと思っています。
      次作が読めるなんて!嬉しいですね(*^-^*)
      2013/09/20
  • 孤独を抱えた16人の物語。
    どのお話の主人公も孤独を感じていて、独特な妄想癖があって、誰かと繋がりたいと望んでいる。
    それは私も同じなのに、なぜかあんまり好きになれなかった。私だけじゃないんだ!っていう安心感はあるんだけども、独特すぎる世界観のせいか入り込めなかった。
    頻繁に登場する性描写もちょっと生々しすぎるというか。苦手な訳ではないんだけど、村上春樹くらいの塩梅が好きかな。再読したいと思うような作品ではないけど、たぶんずっと覚えてるだろうなというインパクトがある。

  • とてもよかった。性別に関わらない濃い関係性の描写と、言葉選びが好き。でも救いを求めてしまう

  • 読書会の課題図書。
    ジャームッシュの初期の映画を見ているような。
    エイドリアン・トミネの「サマーブロンド」とか、映画で言うと「ゴーストワールド」を彷彿とさせる。
    一時期の村上春樹さんもちょっとこういう感じだった。
    レーモンド・カーヴァーを初めて村上さんの訳で読んだときと似た感覚。
    だが、それから21世紀になり、よりより閉鎖的な気分になってるんだなあ、と。
    その中でも泥の中の蓮、という気分にさせてくれるものもあれば、そうでもないものも…。

  • 再読

    1番短いものだと見開き1Pの16編。
    これだけ数があると圧倒されてしまうし、合わない人がいるのも頷ける。
    「最初の悪い男」の何コレ!?私今何読んでるの!?
    という衝撃が何しろ強烈だったので、
    それ程ではなかったがいやはやミランダ・ジュライ。

    岸本さんの訳者あとがきにあるように
    孤独で不器用で時に奇妙な試みに走り、
    報われる事は少なく、再び孤独と向き合う。
    けれど絶望ではなく、つながりかけた瞬間の火花、だ。

    「コト」が起きる時の気配というか空気というか
    目に見えないアレ、良く知ってる筈なのに、説明も出来ないし捕まえておけないあの瞬間、
    アレを書いているものにやはり注目してしまう。
    紹介される架空の妹との微エロティックだった筈の「妹」
    とあるセッションの合間「ロマンスだった」
    インチキ会計士とその妻と裁縫クラス「十の本当のこと」

    わからないのにわかる、
    自分だけは対象としないボーイッシュな女の子と
    Mr.ピープスの店「何も必要としない何か」
    父から教わる「動き」
    エキストラとしての芝居が実情を浮かび上がらせてしまう「モン・プレジール」
    消した筈の「あざ」
    シルバーの平たいボタンのきれいなブルーのウールのコートを
    実際に見たような気がしてしまう「わたしはドアにキスをする」

    一方、最初の〜でも出てくる
    まだ出会わぬ運命の何か、は全然ピンと来ないんだよね。
    「2003年のメイクラブ」の黒いもの、スティーヴのような。

  • 日本の現代作家さんにも言えることだけど、
    おしゃれ風に書けばいいと言うものではない。
    とにかく救いがない話を連ねているが、
    どこにも重みがなく、薄っぺらい。
    途中で気分が悪くなった。
    救いがなくても構わないが、
    突拍子もない話を作ればいいと言うものではないのでは?

  • 読んでるうちにどんどん感情が湧き出ててきて心が引き裂かれる思いがした。でも読み終わった後に「でもあまりに寂しい。確かにこれが人間だが、私はこれだけの人間を見たくない。」もうお腹いっぱいしばらく結構。と感じたのは何故か?
    何故ならこれは私たちが目にしたくない部分だからだと感じた。ここに私自身見ないふりしていた「痛み」があったから。私は、Mr.ピープスにいたあの女の子であると同時に、そんな世界はまるでないかのように暮らす男でもあるのだ。
    見ないふりはもうやめようかなあ。例え頭痛が絶えなくても、この痛みは私のものなんだから。

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著者プロフィール

ミランダ・ジュライ(Miranda July)
1974年、バーモント州バリー生まれのアーティスト、作家、女優、映画監督。本名はミランダ・ジェニファー・グロッシンガー。
バークレーで育ち、16歳から舞台の脚本、監督を務めている。カリフォルニア大学サンタクルーズ校に入学するが2年目に中退、ポートランドに引越してパフォーマンス・アートを始める。1996年に短編映画集製作のプロジェクトを始め、2005年に映画「君とボクの虹色の世界」を監督・主演。非常に高い評価を得る。
2005年から小説の執筆を始めている。代表作に『いちばんここに似合う人』。ほか、『あなたを選んでくれるもの』『最初の悪い男』など。

ミランダ・ジュライの作品

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