ソーラー (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105900915

作品紹介・あらすじ

マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界-。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。

感想・レビュー・書評

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  •  学界の住人の日常という個人的にはなじみのない世界が新鮮だったこと、声に出して笑ってしまうジョークの数々のおかげで星印2つを免れたが、短編を集めたようなまとまりのなさはEnduring Loveにも共通した落ち度だと思う。ダメ男が主人公の小説はダメぶりに読者が同情できない場合、ダメさにユニークな救済がない場合、物語に入り込むことも、物語にひっぱられるという読書の愉しみをもつことも読者としては難しいと感じた。マイケル・ビアードの表面的な女好きとは裏腹な、不感症ともいえる人間嫌いがコメディ的要素としっくりこないのもまとまりのなさに寄与しているのかもしれない。コメディ的要素が運動音痴の知的オタクVS肉体派とかイギリス人がアメリカ人の表現の単純明快さに心ひかれてしまうなど類型的なのもカンベンしてほしかった。いいアイデアがたくさんつまった小説だが各所がプロットや人物の説明になってしまっていて不器用さが目立つ。その最たるものは結末に至るまでの伏線の張り方があまりにもしつこいため、終わりから30ページ前で結末が予期できてしまったことだろう。
     薦められない本ではない。軽いエンターテイメントをという人になら躊躇なく薦めるし、映画化してもいいのではと思う。映画化した時にどこをどう端折るかが簡単に思いついてしまうのが悲しいところだが。

  • 主人公のマイケル・ビアードは、パッとしない外見で、好色で、自堕落なイギリス人の中年男。若い頃にノーベル賞を受賞したが、その後は研究よりも講演などで生活している状況。2000年のある日、5人目の妻の浮気に悩むところから話が始まる。米国の大統領選でブッシュとゴアが争っている頃。ちょうど『不都合な真実』が世に出て、エネルギー問題が注目されていた頃。
    その後、2005年に話がとぶのだが、ビアードは、物理学UKというよくわからない委員会の議長となる。理系分野への女性の進出についての議論で、男脳・女脳の話をして社会的に総スカンをくらう。日本では、最近になっても同じような議論が忘れた頃に蒸し返されてがっかりするのだが、海外では15年以上前に、きちんと否定されていたんだと、あらためて思う。
    最後は2009年。太陽エネルギーの利用で特許をとり、大規模な発電施設のための資金集めをするビアード。2010年に書かれた小説だが、今読んでも、それほど古くは感じない。
    面白い話なのだが、好色な主人公が、常に女性を口説くことばかり考えているところが冗長に感じた。そこを面白いと思う人もいるかもしれないけど。

  • マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界-。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。
    原題:Solar
    (2011年)

  • つまんなかったなー
    皮肉を効かせようとしすぎて、失敗した感じ
    翻訳も、Twitterでよく見る文体って感じ

  • イアン・マキューアンの描くノーベル賞受賞科学者(小説)。

  • 文学

  • はじめは「イギリス人はなんてせせこましい小説が好きなんだろう」と思いつつ読んでいたが、そのうちジワジワと面白みが湧いてきた。ノーベル賞受賞者が実はこんなセコイ男で、なんて設定はどちらかというと陳腐な感じすらするものの、細かい話芸で読者を放さない。

    ワタクシのせまい読書経験の範囲での感想を述べてしまえば町田康に似ている気がする。防寒手袋を何度もつけたり外したりするシーンとか、そういう細かい芸風が。

  • 書評の、マキューアンの作品で最も笑えて最も悲しい、というのがまさに。
    どうしようもない男とどうしようもない周囲の人々を描く筆には、たくさんの皮肉とちょっとの同情が込められているように思う。
    科学的な知識があればもっと楽しめるのだろうが、なくても充分面白い。
    誰かの悲劇は誰かの喜劇。
    自分の悲劇も誰かの喜劇。
    やっぱり上手いなぁ、マキューアン。

  • ノーベル賞受賞者である物理学者を主人公にしたブラックなコメディ。けれども物理学をはじめさまざまな科学分野に対する取材が徹底していて舌を巻いた。日本の小説家は果たしてここまでするだろうか。

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著者プロフィール

イアン・マキューアン1948年英国ハンプシャー生まれ。75年デビュー作『最初の恋、最後の儀式』でサマセット・モーム賞受賞後、現代イギリス文学を代表する小説家として不動の地位を保つ。『セメント・ガーデン』『イノセント』、『アムステルダム』『贖罪』『恋するアダム』等邦訳多数。

「2023年 『夢みるピーターの七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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