本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784105900946
感想・レビュー・書評
-
仕事もせず酔っぱらってばかりの父親一族と暮らした日々を振り返る、連作短編集。
前半の非常に残念な状況の描写には飲みすぎた次の日のように口のなかがざらざらしてくるが(基本的な生活動作ができないとこんなカオスが待っているのか...)、語り手のディメトリーの視線は澄んでいて、良い水を飲むようにその世界に入っていける。ひどい状況なのに清澄な私小説という点で、尾崎一雄を思い出す。
このまま歯が腐ったチャーミングな一族についての話が続くのかと思いきや、後半の話はどれもこれも淡々とえぐってくる。ディメトリーが成長するにつれて知った彼のいる底辺、身をひきはがすようにしてそこから抜け出したであろう語られない数年間。愛している人たちと同じ世界にいられない苦しみを抱えながら何とかバランスを取って生きている今の彼が、それでも少年時代の記憶をあのように保てたことに、生きていて大丈夫だ、と勇気づけられた。他の作品の翻訳が待たれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ベルギー・フランダース地方で子ども時代を過ごした著者。
「毎晩のように幸福と不幸の区別がなくなるレベルまで酒を飲む」「度重なる警察や財産差し押さえ人の訪問」・・底辺に貧乏な生活を送る父と叔父たち、母代りを兼ねる祖母(ばーちゃんスゲー!)と過ごす少年時代。
・・・と、後半「主人公が大人になってから。」の自伝的連作短編集。
前半の貧しさと汚描写(主にユーモラスに、時にしんどい)が、後半に活きてきます。
家族と少年時代を恥じ・・・けれど叔父を、祖母を父を愛しているのが伝わってきます。(そして父や叔父が主人公を愛していたことも行間から滲みでています。でも、酒は貧しさは・・・。・・・。)
特に、祖母への思いが。息子への気持ちが。・・・描かずにはいられなかったんだろうなぁ。
あとがきによると、著者は中学生のとき学校で自ら家庭の事情を打ち明け、里親の家で暮らすことに。ナイフ・フォークの使い方にはじまり、生活のすべてをそこで学び直さなくてはいけなかったそうです。
「しあわせであることは自らの務め。」・・・この本は、前半・後半、あとがきまで全て読んで、
ひとつの素晴らしい「彼の」人生を読むことができます。 -
行ってくれ。一人でやらなきゃならないんだ
-
これは好き。「自伝的物語」であるならば、客観的に見てデタラメでヒドい。母親がいない子供が大酒飲みで困窮する父と叔父らと暮らしている。大人になってから、ゲロや生ミンチの中から救済されたことを感謝している。但しそのメチャクチャさにはユーモアがあり一家の団結と愛があり、前半のフェルフスト家のおそるべき鯨飲ぶりを読んでいると酒を飲みたくなる。父親はアルコール依存症が深刻化するのでそれどころではないにしても、美味しそうなんだから仕方がない。
少年は大人になり、標準語を喋り教養を身に着け、叔父たちと違う階級になって戻ってくる。兄のように思っていた叔父たちとのギャップを埋められない切なさ。私もいなかで彼らの方言を喋ることがもうできない。程度の差はあれ、故郷を離れ家族と違う道を歩んだ人にとってこういう感覚は普遍的だと思う。
「収集家」の最後のくだりもなかなか衝撃的。作家のストーリーテリングのうまさが光る。 -
連作短編12編
作者の分身のようなディメトリーの子供の頃の物語。アルコールに溺れる父や叔父たち4人と祖母の貧乏暮らし。宵越しの金を持つのは犯罪のよう。そんな一風変わったプライドで飲んで飲んで飲みまくる。ツールドフランスに見立てた酒飲みレースには驚いた。
そんなはちゃめちゃな一家だが、家族の強い絆、お互いを大切に思う気持ちが暖かい。最後は現在に近づいてきて人間関係も僕の中で変わってしまったところもあるが、叔父たちの変わらぬ駄目さと愛にグッとくるものがある。 -
水泡に帰す
-
さりげなく醜悪な世界に涙ぽっちゃり。戦争体験もの震災ものなど読む前からげんなりするのは「これ書いてる俺世の中見据えてる。読まないお前ら意識低ーい」「そういうエンタメっていうか読みやすい本読んでるようじゃ、読書家って言わないんじゃない?」うがー。うるさい。うっとおしい。ほっとけ。この筆者は↑こういうやつらが「まーお下劣」と目を背ける下半身ネタを歪むことのない冷静なまなざしで見つめ暖かく包み込み上品に執筆していらっしゃる。田舎の人は下品よ。しかも年とってから備わった下品さはどうにもならん。それが悲しゅうて。
-
文学
-
-
嘔吐や糞尿にまみれたアル中の与太話を書き連ねた連作集。野蛮で粗野な男女たちの物語は、アウトロー賛歌ではなくむしろ汎人類的な業の在り処を掘り出している。巻末で豊崎由美が賛美するように、ここにあるのは反教養主義の称揚ではなく、詩情の屹立だということに納得する。
呑みくらべを耐久レース化した酒場の話「ツール・ド・フランス」が出色の出来。 -
大笑いしながら読んだけど、読むほどに切なさがつのる。「ツール・ド・フランス」はもうサイコー!「収集家」は紋切り型の対立と最後の一文がちょっとあざといかな。
-
くそったれな家族の、くそったれな愛すべき日常の物語。
でも「陰部の歌」は歌ってみたい。 -
ときめくタイトルですね
-
ディミトリフェルフルスト「残念な日々」/新潮クレスト 読んだ http://www.shinchosha.co.jp/book/590094/ しみじみとよかった。でもその読後心境に行き着くまでには怒濤の猥雑下劣な描写と汚穢をくぐり抜けねばならない。書かれている内容に比べたら猥雑という言葉すら上品に感じるな(つづく
穀潰しアル中の男どもの破天荒エピソードに隠れて目立たないけど、この一家、というかこの本の中心はおばあちゃん。息子がアル中で重篤な状態にあることを知らせに来た警察をど迫力で追い返したり、家財差押中にどうやってかお金を工面して新品の自転車を買ってきたり。ボケても主張は強い(つづく
育ちがいいというのはこういうことだとつくづく思う。無学で下品でも家族に愛があり気に掛け合う。いやこれだと貧しくても絆があれば!というバカな話のようだけど全然違う、全然酷い家の悲惨な話。自転車ツールの話とTVを観に他人の家へ押し掛ける話と離婚後の息子の面会日の話がとてもいい(おわり -
子供のころの親戚たちに囲まれた、貧しいどん底の生活が、誇らしくユーモラスに描かれている。
主人公が村を出て、大人になって、「いい暮らし」を手に入れるにつれて、ちょっぴりダークな心情描写になっていく。
村を出てしまった後ろめたさを感じつつも、親戚のもとに時々は、帰らずにはいられない。
叔父たちの態度は、変わることはない。いつまでも自分たちの一員の「チビ」として、受け入れてくれる。
家族である、残念な人々への深い深い愛情を感じる。 -
翻訳の話し言葉が秀逸で、なんと関西弁なのです。最初は何やってんだこの翻訳?と思いながら読んでいたのですが、ベルギーには3つの公用語があるという実情を、日本で表現するにはうまい解決策なのかもしれません。
読み始めて、とんでもない小汚い話が関西弁の会話とともに、続々と出てくるので、なんだよ、これ、でした。最後まで付き合えるか心配になるお話で始まります(最初のエピソードの落ちは秀逸ですが)。
読み進んでいく途中には、私にはくだらないと思えるエピソードがあったりして、中盤あたりでは、さっさとこれは終わりにして、次行こうと思いながら読み進んでいました。最後の方になって、じっくり味わいながら読まなければいけない話になってくるのですが、それにしても、小汚さは、最後までさりげなくまぶされています。読んでいるうちにその小汚さも、愛すべきエピソードになって私の中に入り込んできます。最後の最後、読み終わってみて、私は、家族というもののあり方に、深く考えさせてくれるこの作家に感謝していました。私には、よい小説でした。 -
世に人有る所クズ人間有り。ベルギー出身の著者が少年期を回顧した自伝的短編集。金もなく生活や言動はどうしようもなく粗野、毎日をチキンレースの如く飲んだくれることで過ごす父と祖父達の元で過ごした日々は糞ったれで最低なのに、ここには決して奪われない絆と笑いが刻まれているのだからたまらない。作者はやがて距離を置き、文化的に洗練される事でこの小説を書き上げたのだが、それはこの共同体から切り離されることを必然的に意味していた。だからこそ本書は葛藤や自己嫌悪に苛まれながらも、家族に対しての愛おしさが滲み出てるのだろう。
著者プロフィール
長山さきの作品
本棚登録 :
感想 :
