あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

  • 新潮社
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本棚登録 : 350
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901264

作品紹介・あらすじ

初めての息子の誕生から、ホロコーストを生き延びた父の死まで。七年の万感を綴る、自伝的エッセイ集。戦闘の続くテルアビブに生まれ、たくさんの笑いを運んできた幼い息子。常に希望に満ちあふれ、がん宣告に「理想的な状況だ」と勢い込んだ父。現代イスラエルに生きる一家に訪れた激動の日々を、深い悲嘆と類い稀なユーモア、静かな祈りを込めて綴った36篇。世界中で人気を集める掌篇作家による、家族と人生をめぐるエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • イスラエルの作家ケレットのエッセイ集。
    これまた評判どおりすばらしかった。
    両親がホロコーストの生き残り(本人は1967年生まれ)で、住んでいるイスラエルのテルアビブは、テロや戦闘でしばしばおびやかされるのだけど、そういう現実から目をそらすことなく、でも日常をしっかりと生きてユーモアを忘れない。
    いま、コロナ禍の中で世界中の人々が「いつになったら元の生活が送れるのか」と思っているわけだけれど、イスラエルやパレスチナに暮らす人々にとっては、もっと気の抜けない状態が生まれてこの方の日常なわけで。そんな中でも日々のささやかなことに怒ったり喜んだり泣いたり笑ったりして人生を送る作者の姿はなんだかはげみになるのだった。

  • イスラエルの作家、エトガル・ケレットによるエッセイ集。

    テロや戦争が日常として存在する生活の中で、それでもユーモアと優しさをもって人生と付き合っていく作者や周囲の人々の姿が印象的。上質なジョークと見事なストーリー展開に笑わせられながら、現実のままならなさに目を開かされ、しかしむしろそれ故に、この世界で生きていくことに価値があると、言葉なく諭されるような気持ちにもなる。

    作者の優しく、力強い目線は、エッセイ「長い目で眺める」で書かれた以下の言葉へ端的に示されているように思う。

    「どんなに見込みの低そうな場所でもなにかいいものを見つけんとする、ほとんど狂おしいまでの人間の渇望についての何か。現実を美化してしまうのではなく、醜さにもっとよい光を当ててその傷だらけの顔のイボや皺のひとつひとつに至るまで愛情や思いやりを抱かせるような、そういう角度を探すのをあきらめない、ということについての何か。」

    その「何か」を持ち続けることの困難さを知りながら、それぞれの生活を生き続けることの大切さを教えられるような、本質的で美しいエッセイ集。

  • 2020年12月7日読了

  • 【展示用コメント】
    やるせない思いと強靭なユーモア、そして静かな祈りを込めて(カバーより)

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001673547

  • 2016年発行のリアルな生活エッセイというか、掌編小説というかごく短い話36編で構成されている。
    子どもが生まれて7歳になるまで、一年ごとを区切りにして、作者ケレットの日常や出来事を、暖かいというかヤッタネ!というかユーモアと機知溢れる文章で綴っている。テーマは、息子が生まれて育っていく過程の微笑ましい出来事、それを解決する両親が愛情溢れる言葉で息子の持ってくる問題をしなやかに答えながら育てている、子どもが外の世界に触れて帰ってくると、両親は童話のような言葉の中に隠された教えや智恵で、温かく包んで微笑ましい。

    作者は、問題のイスラエルの首都テルアビブに住んでいる。遠く近く戦闘の音が響く中での暮らしが、実感として感じられる。他国から見れば常に内乱の中にされされている暮らしだが、住民としては渦中にいる状況をユーモアを交えて語っている、そうであっても外から見るとなにか危険な臭いを感じてしまうが。
    「戦時下のぼくら」にはそういったに日常に触れている。

    7年間にわたる家族の話には両親と兄と姉の暮らしにも触れ、生き方を異にした2人も理解して受け入れている。仲がいい。姉は正統派ユダヤ教徒になって生まれ変わった「亡き姉」
    ユダヤ人の両親がワルシャワゲットーで迫害され逃げ続けた話も書く。
    小説を書いて世界で読まれるようになったが、原文はヘブライ語で書かれていてそれから訳されているそうだ。
    そういった家族や両親、息子を交えた家族の話が殆ど、失敗談や、おかしなエピソードや外国の変わった風習に戸惑ったことや、ちょっとした心温まる生活など、とても危険な国の人には思えない。

    父親は癌になるが前向きで勇気を与える。「父の足あと」

    妻のシーラが言った。
    「心配いらないわよ。私たち二人がなんとかやり過ごさなきゃいけないことが何であろうとも、それはきっと一瞬のことよ。どんなにいひどくったって、残りの人生のたった一日に過ぎないわ」

    私は何度も緊急入院して、ベッドで思った、手術といっても長い人生のたった一時間か半日、そうすればまた生きていける。
    それは、思いがけず堕ちた穴で希望を失わずにいられる呪文のような言葉でシーラの言葉ににうなずいた。


    この夫妻は「ジェリーイッシュ」という映画を作った。みた記憶がある実にいい映画で、これがこの作者で登場人物だとは知らなかった、カンヌ国際映画祭で新人監督に与えられるカメラ・ドールを受賞している。


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  • 先日イスラエル人ご夫婦をおもてなししたばかりなので(ホームビジット)イスラエルという国に興味津々。で、手に取った本。歴史的な出来事だけでなく、今イスラエルに暮らす実際の同世代の人たちがどんなことを考え、どんなふうに暮らしているのかが綴られているのがとても新鮮で興味深かった。歴史について書かれた本では、人々の心情なんかはまったくわからないから。
    ホームビジットのときも思ったけど、文化や環境が違っても、感じることなんかはわたしたちと同じなんだよね、とも思った。

    (訳者あとがきより。)
    息子のレヴが大きくなったら兵役に就かせるのかどうかをめぐる一篇は、イスラエルで親たちが不可避的に抱える苦悩を描く。ユダヤ人国家の歴史を考えれば軍の必要性を簡単に否定できるわけはないし、皆がその負担を担わなければならない時に一人わが子をそこから除外することを正当化するのは難しい。それでもケレットの妻は母親として、息子の命を危険にさらしたくないというシンプルな思いから断固兵役に反対し、その行為こそが今ある政治を変えるのだと主張する。両者の話し合いに白か黒かの明白な解はない。
    そしてそこでわれわれは、特殊だと思っていたイスラエルという国のなかにむしろ普遍性を発見するのだろう。そこで暮らしている人々は、当たり前ではあるが、われわれと同じように日常に一喜一憂する普通の人々であり、あらゆる国家は決して一枚岩ではないし、そこには多様性が存在する。ケレット自身はイスラエルの「愛国的」言説に対して勇気あるノーを突きつけているが(2014年のイスラエルのガザ侵攻の際に、ケレット夫妻は亡くなったパレスチナの子どもたちへの哀悼の意を示したことで自国民からバッシングされ脅迫まで受けている)、それでも国外では時としてイスラエルという国家を代表せざるを得ないし、それを避けようとはしない。ケレット自身の言葉によれば、「国内では裏切り者として、そして国外ではイスラエル人としてボイコットされ」てもだ。
    だから、本書およびケレットをイスラエルの作品や作家としてだけ読むのは、おそれくあまり豊かな読み方ではない。未知の世界を訪問するというよりはむしろ、今ここと地続きの世界として読む方が、たぶんいい。それこそが本書が世界各国で読まれている理由でもあろう。

  • ミサイルが飛んでこようが、そこには人々がいて家族が生まれ死んでいく。日々の苦難を笑い飛ばしながら。

    イスラエルに生きる小説家のエッセイ。

    始めて書いた小説のコピーを兄に読んでもらったら、兄が読み終えたあと、それで犬のウ◯コを拾ったのには笑った。

  • 図書館で借りて読んだけれど面白すぎたため購入決定。ひとつの話が5ページ前後の短いエッセイ集。著者はイスラエル人で、日常生活の中にテロや紛争や空爆がある日々を送っている。その一方で、電話勧誘の人とケンカしたり飛行機でモメて泣いたり、しょぼい現実もすくいとって上手くブレンドする。読みながら「エッセイって、人に伝えるための文章って、きっとこうあるべき」って何度も思ってしまった。勝手に自分の教科書にすることにした。この人の作品があまり日本語訳で出ていないのが本当にもったいない。

  • 超キュートなおっさんエドガルケレットが主役のノンフィクションエッセイ。奥さんも子供も家族も素敵だ。自分の話をします(またか)。正月に田舎に帰り大晦日の夕食を待っていた。父に座って酒を飲めと言われる。グラスなどがない。最近リフォームして何がどこにあるのかさっぱりわからない。促す父。めんどくさいので目の前にあった、お客様用コーヒーカップに日本酒を入れて飲んだ。そのうち誰かがまともな容器を出してくれるだろう。そんなことはなかった。次の日からはご飯の横にそのカップが毎回用意されてるのだった。おかしいやろ!この家!

  • 文学

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