ウインドアイ (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
3.54
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本棚登録 : 292
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901325

作品紹介・あらすじ

妹はどこへ消えたのか。それとも妹などいなかったのか? 『遁走状態』に続く最新短篇集。最愛の人を、目や耳を、記憶を、世界との結びつきを失い、戸惑い苦闘する人びとの姿。かすかな笑いののち、得体の知れない不安と恐怖が、読者の現実をも鮮やかに塗り替えていく――。滑稽でいて切実でもある、知覚と認識をめぐる25の物語。ジャンルを超えて現代アメリカ文学の最前線を更新する作家による、待望の第2短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 「遁走状態」で5つ星を付け2冊目でやや下がっているのは驚きがなかったからかもしれない。文学の歴史の中ではポーの一族に位置づけられるだろう、不気味で怪奇で不穏な世界。エヴンソンワールドでは、幽霊にとりつかれ、異物が身体に侵食され、無碍に傷つけられ、精神障害のレッテルを貼られる。世界を把握する感覚が捩れ、触り感じることができるはずのものが遠く、存在も見えもしないはずのものが生々しくたち現れる。
    世界観は一貫しているが、抽象的・哲学的なものから口語調のリーダブルなものまで、バリエーションに富んでいる。「どう書くか」にこだわる作家らしい表現だ。

  •  全二十五編からなる短編集。
     ブライアン・エブンソン、待望の日本での二冊目。
     僕はブライアンの日本での処女作「遁走状態」を、昨年読んだ中で一番面白い作品だと思っていたので、期待に大きく胸を膨らませて読み始めた。
     そして読み終えた今、期待通り、いや期待以上の面白さに思わず唸ってしまった。
     面白い、とは言っても、決して楽しく爽やかな内容ではない。
     前作同様、きちんとした物語の背景説明がある訳ではなく、どうして登場人物たちがこんな状況に陥っているのかは、想像の範疇を出ることはない。
     そんな「こんな状況」に翻弄される登場人物、あるいは「こんな状況」そのものに、どうしようもない面白さを感じるのだ。
     存在の曖昧な妹や弟を探し出そうと足掻き続けたり、救うべき友人ではない「知らない誰か」を救ってしまったり、自分の死を他の誰かに確かめずにいられない人々がいたり、祖母の皮をかぶった少年(悪魔?)がいたり。
     最後に収録されている「アンスカン・ハウス」のラストなんて、人間の闇の部分をくっきりと浮かび上がらせていて(その闇は自覚されている)、しかもそれが妙に納得が出来る闇であるために、心苦しく思えてしまう。
     本書のアメリカでの出版は2012年であり、今年2016年にも新しい短編集が発表されているとのこと。
     翻訳家の柴田さんには頑張ってもらって、早くその新しい短編集を読んでみたいと、今からウズウズしている。

  • 柴田さんの訳は素晴らしいけれど、英語でそのまま読めたらどんな感じだろうと気になりました。
    「ウインドアイ」「ダップルグリム」「食い違い」「もうひとつの耳」「アンスカン・ハウス」が楽しめました。
    同じ作者による短編なのに、全く頭に入ってこない物語もありました。
    「食い違い」のマークの台詞がとてもツボにハマり、通勤の電車でニヤニヤしてしまいました。
    Altmann's Tongueも読んでみたいなぁ。

  • 硬い。存在を証明するのは意識なのか身体なのか

  • 独特だな~~~
    柴田元幸氏翻訳といえばクセの強いホラーと相場が決まっているが、これも独特

  • いずれかの書評本からのチョイスだったかな。柴田元幸訳ってこともあって、読んでみようと思ったんだろう。しかしこれは、ただ辛かった。内容が辛いってこともあるけど、それ以上に自分的に苦行だった。ひたすら不条理な目に合わされる短編集なんだけど、これを読んで何を思うんだろう。世間とは、残酷的なまでに不条理なものだ。然り。ただそんなこと、日常生活の中で味わうだけでも十分じゃね?よほど途中で止めようと思ったけど、上記のごとく、苦行と思って耐え抜きました。他の作品は読まない。

  • 久しぶりに読み終わるのに難儀した本。
    すごく質が高くておもしろいのに、なぜなの、この疲労感。げっそり。

    読んでいると、めちゃくちゃHP(=ヒットポイントね)を削られる。
    読みながら、ふぅふぅぜいぜい。
    ああ、本を読むのが苦手な人ってこういう感じなのかも、と思った。
    誤解のないように言いますが、話はおもしろいのよ! とってもおもしろいの! でも、1ページ1ページがべらぼーに重たいのよー。
    ページをめくる、というただそれだけの行為が、雨と泥の中を行軍しているイメージと重なる。

    収録されている25作品のうち、おとぎ話風のものは比較的読みやすく、怖さもシンプルでなかなか楽しい。「二番目の少年」とかすっごくおもしろい。「ウインドアイ」「グロットー」もこの類で、そこはかとないユーモアもあったりして、けっこう楽しんで読んだ。
    だがしかし。
    徐々に「狂人の夢」みたいな作品が増えてくると、ページがずっしり重たくなってくる。
    地の文章がなんともいえないしつこさで絡みついてくるというか・・・ちょっと涙目になる私。
    映画「シャイニング」でジャック・ニコルソンがずっと何かをタイプしているシーンを思い出す。
    これ、もしかしてあの狂った作家が書いてる日記なんじゃないかしら、なんて気がしてくる。

    作家のプロフィールを読んで仰天した。元モルモン教徒でブリガム・ヤング大学の元先生!?
    作風からは思いもよらない経歴に、がぜん作家本人に興味がわいてくる。
    いやぁ、世間ってほんとおもしろい。本人の肩書や経歴と書いたものの印象がかなりかけ離れている作家って意外に多いよなぁ、と思う。(そのまんまな人も多いけど)

    一つだけ、他と作風が全く異なるものが含まれていた。ノンフィクション?で、ロックバンドAC/DCの元ボーカルで謎の死を遂げたボン・スコットについて書かれたもの。
    私はこの作品がかなり好き。
    事実そのものが非常に興味深いというのもあるけれど、同じことを別の人が書いてもこんな風には書けないんじゃないかと思った。

    村上春樹もそうだけど、普段、シュールな作品を描くような人が、たまにノンフィクションを書くとすごく巧みでおもしろい。(そう言えば画家もそう)
    まったくの想像の世界を作って描き出すことが、逆に事実を見る目を研ぎ澄ませるのかもしれないなと思う。

  • 短編集。
    『波』2016.12にて。

  • 岸本佐知子編の『居心地の悪い部屋』で知った作家。読み進めながら違和感。『ささやき』の著者と勘違いしてた!『ヘベはジャリを殺す』『父、まばたきもせず』の著者か!「よくわかんないや」アーンド「えっ、オチは?」な話が満載。俺的には”奇妙な味わい”を通り越して、”頭ン中、どないなっとんねん!”系に認定。一気に一冊読むのはしんどかったけど、クセになりそう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。現代アメリカを代表する作家の一人。ブラウン大学文芸科教授。邦訳に、『遁走状態』(新潮クレスト・ブックス)などがある。

「2015年 『居心地の悪い部屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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