オープン・シティ (新潮クレスト・ブックス)

制作 : Teju Cole  小磯 洋光 
  • 新潮社
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本棚登録 : 165
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901387

感想・レビュー・書評

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  • 主人公のいけ好かなさにうんざりしながら、第二部の「私は私自身を探った」というエピグラフを頼みに読み進んだけれど、彼は最後までいけ好かなかったしそのまま生きていくようだった。どうぞそのまま自分の縄張りの中で教養と知性に満ちた暮らしを続けてくださいという気持ちになった。

    なにがいけ好かないかというと、いい年をして謎の万能感に基づいて他者をジャッジするところ。自省のなさも気味が悪いが、彼が明らかに間抜けに見える描写は数か所あるので、彼が自分自身を覗き込む要素は意図的に作品から除外されているのかもしれない、とも思う。でもそれって作者はどういう効果を狙っているんだろうか?そこを描かないのって怠慢なのでは?特段に魅力的でないキャラについていろいろ考察する義理は自分にはないので、もう考えないけれど。

    土地の歴史や悲しみについて、排除される人たちの言葉について、21世紀の狭くて混乱した世界について美しい文章で書いてある。でもわれわれに不足しているものがさらにごっそり抜けていそうな語り手のすてきな言葉をどう受け止めたらいいんだろう。「せめて自分のお尻を拭こうと試みてから言ってくんないか」とは思った。反対に「中途半端な自分語りは抜きでお願いします」でもいいかもわからない。

    リセ=アンが彼女になった研究者の人、「友人」とだけ呼ばれるのって何か意味があったのかな?これから感想書く人だれかお願いします。

  • 表題はアメリカ合衆国のことだと思う。表紙に描かれている鳥のように様々な地域から人間がこの地にやってくる。主人公は夕暮れを好んで散策する。偶然に出会った、同じ肌の色のアフリカ系の他人に「今私がここにいる理由」を告白される。実にうまい構成だと思う。その国に産まれたというだけで、理由なく迫害されたり内戦で住む場所を失ったり。読んでいて結構しんどい内容だ。これを前面に押し出した書き方の場合、自分は手に取りたくないと思うが、そこはうまいことケンタッキーのチキンポットパイのように加工して作ってある。

  • 主人公がグダグダと精神的マスターベーションをしながら散歩するところに共感した。自分もそれをよくやるので。自分に対して自分をよく見せようとする語りがいけすかなくて心地よい。

    主人公にまつわるある事実が明らかになってからが、ますますおもしろく、それもう少し早い段階で明かしてもらえたらもっとおもしろく読めたのにと思った。
    自分の過去をいいように改ざんしながら生きている人間の哀れさや惨めさに、同様に生きる人間として救われる思いがした。

  • ニューヨークの徒然草もしくは枕草子。社会問題や文化的要素などニューヨークを散歩しながら、色々と言及。

  • https://unleash.tokyo/2018/04/25/opencity/

    ナイジェリア出身のアメリカ人精神科医が、街をそぞろ歩きながら博学的な事柄を述べ続ける。
    話題は主に黒人に対する差別やアメリカの迫害の歴史などに及ぶ。
    もっともなことを述べ続けるのでとても退屈である。(楽しいという人もいる)主人公はさぞかしまともな人物なのだろうなと思いながら読む。
    しかし後半で非常に重大な事実が明かされる。主人公は知人のナイジェリア人女性を子供の頃に暴行したという。
    主人公はまるでそのことがなかったかのようにまともなことを述べ続けていたわけである。
    つまり読者はもっともで退屈な内容と見せかけて、主人公が自分の罪悪感などの感情を覆い隠す行為を読まされていたわけである。
    読書体験としては斬新だが、騙されたという印象が強い。
    こんな本ばかりになっては困る。

    ちゃんと読めていない部分ではあるが、主人公が散歩を始めたタイミングが、友人にレイプを告発された後なのだろうか?

    オープンシティとは無防備都市のこと。
    ベルギーのブリュッセルがそうであり、感情を放棄した主人公自身がそうであるということか。

  • 読み始めてしばらくして気が付く。独白のみで構成されている。主人公ジュリアンの一人語りが中心で、出会った人々のエピソードも織り込まれるがそれも彼ら彼女らの独白主体。多彩な人々が登場するが、複数人での”会話”は少ない。翻訳でも「」を使っていない。またジュリアンは常に彼らを通り過ぎていく存在だ。
    ナイジェリア系作家とはいえアフリカらしさ(と考えるのは間違っているのだろうが)はなく、ジュリアンはアメリカのインテリである。カーネギーホールでのマーラーのコンサートで周囲が白人の年配者であることを意識しつつも、郵便局で「やあブラザー」と声をかけられると「ジュリアンです」と答えこの郵便局は今後避けようと思う。
    強烈にハイコンテキストな小説で、文学哲学クラシック音楽美術の高い素養を持った主人公(と作家自身)である。父親の死にグレコとクールベが重なり、自身へのとある告発にカミュの日記が持ち出される。
    ここまで来るとハイコンテキストぶりも作為か?告発に対するコメントもないまま、ジュリアンはただ放浪する無害なインテリというだけではなかったのか?珍しいタイプのキャラだ。答えがないまま幕を閉じる。
    優れた小説ではあるが乗り切れなかった。

  • NY マンハッタンを主な舞台とした「遊歩者」の小説。ドイツ人の母、少年時代のナイジェリアが心の影にある。街を歩きながら思うこと、記憶、情景から歴史やについて考えること。
    少々退屈で読むのを止めようと思いつつ結局読了。去来する想いが何処かへ静かに向かう。読了してもしかとどことは言えないのだけれども。

  • 精神科の研修医ジュリアンが、街を歩き回りながら見た光景、感じた思い、過去の記憶などが次々と語られていく作品です。
    大きなストーリーがあるわけではありませんが、ジュリアンが彷徨うように、読者もそれぞれのペースで物語の中を彷徨うことを楽しめる作品だと思いました。

  • アフリカ系の若き精神科医が、ニューヨークの街を彷徨う。
    自分の心身を落ち着かせようとするかのように、日々歩き進める。家族との確執、過去と現在、アメリカの歴史的背景などが交錯する。
    アイデンティティや世界の多様性について考えてしまう。

    面白かった。

  • 前半の街歩きの章は好きだけど、後半は不穏な気配多くてあまり好きになれなかった。

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