官僚たちの縄張り (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106005589

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  • (新潮選書 川北隆雄著)を読む。
    だから、変わらない変われない読めば読むほど腹が立つ官僚組織のAからZ
    霞が関のエリート官僚はなぜ、いつも失敗し、腐敗するのか。政策を誤って日本経済を衰退させただけではない。大蔵、厚生省汚職、防衛庁事件、そのほか官僚腐敗の実例は、限りがない。それは、官僚機構の本質的な無責任性に起因する。官僚たちは事実上の政策決定、つまり政治を執り行いながら、最後は、「われわれは役人にすぎない」と逃げるのだ。本書は数多くのデータを示しながら、霞が関の行動原理をあらゆる角度から解剖した。(1999年刊)
    第1章 政と官
    第2章 行革は権力闘争
    第3章 日本の官僚機構
    第4章 官僚とは何か
    第5章 官僚たちのキャリア
    第6章 官僚たちの縄張り
    第7章 構造腐敗を生む大蔵支配体制
    第8章 「橋本行革」の行方
    第9章 官僚の病理は克服できるか

    著者は「政」が「官」を制御するというあたり前のことをするために政治のリーダーシップを求めており、官僚に対して辛口の内容となっている。元新聞記者(大蔵省担当)らしいリアリティーのある分りやすい著述は説得力があるが、本書が官僚批判を目的としている分、割引いて読む必要がある。
    第1章では、細川内閣の国民福祉税騒動を事例に大蔵官僚の暴走であったとしているが、その見方は一面過ぎると思う。この騒動、政治側の対立(細川首相、武村官房長官、小沢幹事長)があったことを見過ごすとバランスを欠く。武村は官が暴走してしまったと回想しているそうであるが、政治側の内紛に目をつぶり、原因を官に押し付けている部分がありはしないかと邪推してしまう。
    著者は、政治がリーダーシップを発揮するため人事権を行使しろというが、戦前の二大政党期において官僚人事が党利党略に左右された弊害には触れていない。戦後の官僚機構が政治の人事介入を警戒するのは、戦前の教訓という部分もあるのではないか。現代においても外国では政治任用が行われており、長所だけではなく、短所もあると思うが論じられていない。また、一部上場企業の社長と事務次官と給料を比較し公務員は安月給ではないとしているが、職責は考慮していない。
    第6章では、大部屋主義と稟議制の功罪を述べている。大部屋主義と稟議制により責任の所在があいまいになっているとする。辻清明教授の著書を元に論じているが、辻論文への批判(井上誠一、大森彌)には触れられておらず片手落ちと言える。

    本書の内容は、橋本行革による省庁再編前のものであり、内容は古びているが、時代の空気を感じる事が出来て面白い。論旨は偏っているが、読み手が留意して読めば問題はなかろう。確かに官僚制度にはいろいろな問題がある。政治家やマスコミは官僚を批判することにより、国民の支持を得ようとしており、日本を覆っている閉塞感の原因を官僚に求めたくなる気持ちは理解できる。しかしながら、いかに官僚を批判しようと問題は解決しない。避けて通れない問題がある。国家の方針(大きい政府を選ぶのか小さな政府を選ぶのか、事前規制型の社会を選ぶのか事後解決型の社会を選ぶのか等。)は国民が選挙によって間接的に決めるしかない。選択の結果によっては不利益を被ることも甘受する覚悟が必要と言える。

  • エリート官僚たちの実態について、数多くのデータを示しながら、あらゆる角度から解剖した一冊。

著者プロフィール

川北隆雄(かわきた たかお)
1948年、大阪市に生まれる。東京大学法学部卒業後、中日新聞社入社。同東京本社(東京新聞)経済部記者、同デスク、編集委員、論説委員、政府税制調査会専門委員などを務める。現在、ジャーナリスト、専修大学非常勤講師。著書に『日本国はいくら借金できるのか』(文春新書)、『財界の正体』『通産省』『大蔵省』(以上講談社現代新書)、『経済論戦』『日本銀行』(以上岩波新書)、『図解でカンタン!日本経済100のキーワード』(講談社+α文庫)、『「財務省」で何が変わるか』(講談社+α新書)、『国売りたまふことなかれ』(新潮社)、『官僚たちの縄張り』(新潮選書)『データベース早わかり』『通産・郵政戦争』(以上教育社)

「2014年 『「失敗」の経済政策史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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