- Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106006357
感想・レビュー・書評
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最近の大阪、君が代・教員の話にいろいろうんざりしていたとき、このほんのことを思い出した。実家の書棚にあったのだが、子供のぼくは旧仮名遣いの文体にビビって結局読まずじまい。まあ、読まなくてよかったけど。子供にはわからん、、、
今回買おうとしたら絶版、、、丸谷才一の本ってほとんど残ってないんですね。びっくり。ま、ぼくも読んでないのであれですが。
旧仮名遣いは全然気にならない。むしろすごく読みやすい。大変面白い小説だ。想起したのは、チャンドラーの「ロング・グッドバイ」と村上春樹の「ねじまき鳥」と羊3部作。歴史と、友情と、ハードボイルドなのだ。そして、国家。そして、君が代。読んでよかったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ほとんど主人公を中心とした会話で構成されていて、劇的な出来事があるわけでなくて、ましてやいま流行の癒しでも恋愛ものでもないけれど、いや逆にそうではないだけに、とても読みやすいのにもかかわらず、どっこいしっかり一本芯が入っていて、知的好奇心(国家、国家と自我、いまの政治、衆愚政治、一党独裁とはなど)を掻き立ててくれ、昭和57年に1,900円とその当時の自分の初任給を考えるとそこそこ高い書籍だったのだから、今すぐにでも読みたかったのではないのかと思ったのだが、この前まで本棚に眠っていたのだ。Good Job!
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朝日新聞でもおなじみの丸山才一さんの長編小説です。
500ページもありかなりの読み応えでした。
中国なのか?独立国家なのか?
揺れる台湾問題を背景に、漠然とした「国」の枠組みが浮き彫りになってきます。
日本の国を象徴するものといえば「君が代」と「日の丸」があります。でも、この二つ、原初をたどると恋歌と農耕文化。実はイデオロギー的主張は薄いものなんだそうです。
欧州ではこの主張は明確で、EUの効率的運営を定めたリスボン条約締結の際には、EU各国の統一感を高めようとEU歌やEU旗を設置する動きがありましたが、各国の反対で結局除外されました。それだけ、欧州諸国の国旗、国家に込められた主義主張は重く明確だということなんです。
小説からは、この曖昧とした日本の近代国家として主張、枠組みへの歯がゆさが伝わってきます。
でも、ここが救いでもある。
国家観には「理想」と「現実」の2面性があります。この理想を実際に現実にすると国は暴走する。ナチスドイツや共産主義などのように。日本もかつて太平洋戦争の時におなじ過ちを犯しました。
曖昧な形できた日本の国家観、とくに今の時代、世代間、個人間で国家観はバラバラなような気がします。
「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」(寺山修司)
今この時代にどのような国家観を持つべきなのか。この小説を読んで考えてみるのも一興です。