鮭の一生

  • 新潮社 (1985年5月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784106019272

感想・レビュー・書評

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  •  普段なにげなく食している鮭であるが、その実態はあまり知らなかった。本書はその意外と知られていない生態にいての写真集および随筆集である。
     鮭の習性として生まれ育った川に戻って産卵するというものがあるが、実は現在の日本で川の上流でちゃんと産卵できるものはほぼいないのだという。鮭が遡上する川では、ほとんどウグイとよばれる堤防が途中に設けられ、捕獲されるのだという。そのあと卵が回収されて海にかえされるものの、自然な鮭の生態が日本全土でほとんど実現していないというのは衝撃であった。写真家の稗田氏は命がけで北海道の人さと離れ、開発を免れた川で鮭の遡上を捉える。そこにうつされた鮭の生と死は感動的である。
     その川のある北海道。そこはかつてアイヌ人が住まう土地であり、アイヌは鮭とともに暮らしていた。しかし江戸、また明治に和人が入り、鮭漁は禁止されてしまう。アイヌ人史上唯一の国会議員となった萱野茂氏の文は哀切である。
     鮭という魚ひとつで生死、開発、アイヌという問題をかんがえさせてくれる本。ただし絶版。

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著者プロフィール

 NPO法人地域学習センターゆーらっぷ理事/カメラマン

「2006年 『ヒグマ学入門 自然史・文化・現代社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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