- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106021312
作品紹介・あらすじ
川端康成をして"昭和の夢二"と言わしめた稀代の抒情画家・谷内六郎。「絵が描きたくて仕方なかった」少年の日々、そして、旺盛な創作活動を支えてきた家族たち。愛とユーモアに満ちた絵の世界と、その人生をふりかえる。日本人の原風景を描き続けた画家・谷内六郎のすべて。
感想・レビュー・書評
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谷内六郎さんの色んな事がたまった本ですね。
六郎さんの作品やエッセイ、ご家族の思い出話、携わった人たちの谷内六郎さんへのオマージュ、谷内六郎さんの評伝、作品の評論、谷内六郎さんの人となり、とにかく六郎さんのあらゆる事がつまった本です。
私も六郎さんの絵を観たのは「芸術新潮」でしたが、不思議な絵に心を奪われました。雑誌の表紙として感慨深い魅せられる絵だったからです。
六郎さんの個人の事はあまり知りませんでしたし、ただ絵を見つめるだけで心がいっぱいになりましたから。
この本を読むと六郎さんの事が沢山わかりますが、六郎さんの絵は六郎さんのすべてで、ご本人の想いを完全にはわかり得ないだろうなと改めて感じました。
観る人の感性で感じればそれで良いのだと思います。
橋本治さんも、メルヘンだとか幻想的だとか、シュールレアリスム、あるいはファンタジーとか限定されるものではないと語られいます。
六郎さんの現実と内面の融和のなせる物語なのかな。だから作品は六郎さんのすべてなのだと思いました。
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谷内六郎の描く絵が好きです。幼き日の心象風景、あるいは妄想風景とみごとにかぶります。それが激しい郷愁と不思議にも畏れを呼び起こします。
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谷内さんの作品ってのは
どんな形でも楽しめるのですねぇ
「絵」はむろんのこと
「絵」にまつわる文章もたっぷりと
ただ
もう少し
大きいサイズで
楽しみたいものです -
谷内六郎は1956年から26年間『週刊新潮』の表紙を描いていた。当時は雑誌の中身は自分の関心と違っていたが、表紙の絵に惹かれた。自宅にも額に入れたポスターがいくつか置いてある。新潮文庫で季節別イラストが発行されているが、とりあえずこちらを登録する。懐かしく温かい絵が多いが、時に不安を感じさせるものもある。そういうときは描き手の心理状態が表れたのだなと思うと、さらに親近感が持てる。
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図書館の面陳で見かけて、借りてきた。『芸術新潮』の谷内六郎の特集号を仕立て直したもの。作品や文章、妻の話、想い出の地や家族の写真のほか、橋本治が選んだ「表紙絵ベスト10」などがまとめられている。谷内六郎といえば、『週刊新潮』の表紙である。亡くなるまでに表紙絵を1335枚描いたそうだ。
若いころの話や、『週刊新潮』の表紙絵の話もよかったが、最後の章の「子守しながら筆をとる家庭の中の谷内六郎」にある絵や写真が実によかった。いい顔をしたお父ちゃんやなあと思う。113ページには、娘を抱っこしながら絵を描く写真があり、そういうのが「普通のスタイル」だったとある。手製のおもちゃの写真にはそそられる。
妻の語る六郎は、子どもが好きで、子どもの食事の世話も、手製のおもちゃで遊んだり、即興のおとぎ話を聞かせて寝かしつけるのも六郎の役目だったという。そして写真にあったように、仕事をするときも子どもと一緒、普段食事をするのと同じテーブルで子どもや犬の相手をしながら描いていたそうだ。子どもが小学校にあがったらお弁当を作って届けることもしていて、2人の子どもで前後10年、近所の学校へ六郎も通ったのだという。
ひどい喘息もちだった谷内六郎は、激しい発作のため59歳で急死。川端康成はこの人を"昭和の夢二"と呼んだそうである。 -
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