謎解き ヒエロニムス・ボス (とんぼの本)

著者 :
  • 新潮社
3.78
  • (5)
  • (15)
  • (12)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 142
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106022586

作品紹介・あらすじ

異形の生き物、不思議な建築。大画家はなぜ、こんな奇想天外な絵を描いたのか!? 偽りの楽園で快楽に耽る男女。阿鼻叫喚の地獄を跋扈する怪物たち。聖人と魔物の息詰まる戦い。500年前に描かれた人類の罪と罰の一大パノラマは、一体誰のために、何の目的でつくられたもの? そして謎多き画家の素顔は――? プラド美術館の《快楽の園》を始め、最新研究にもとづき真作とされた全20点を徹底解剖。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 以前読んだブリューゲルの本に、ヒエロニムス・ボスの「快楽の園」が載っていてすっかり魅了された。
    それでもっと細部を見たいと思い本書を手に取った。

    とくに「楽器地獄」が大好きなのだけれど、拡大して見れば見るほどにこの奔放な想像力に圧倒される。

    ハープに串刺しにされる男、リュートに縛り付けられる男、耳元でラッパを吹かれている男。もう、奔放すぎて笑ってしまうこと多々。

    中央パネルの「地上の楽園」のイメージもやばい。なんだこれは!の連続。メルヘンなのか、グロテスクなのか、コミカルなのか、感情が引っ掻き回される。

    裸の人たちが巨大なイチゴを取り囲んでいたり、巨大な鳥の上にまたがっていたり、貝殻に挟まれていたりとシュルレアリストが喜びそうなイメージ満載。

    「快楽の園」と同じ、トリプティクである「最後の審判」も愉快すぎる。本書のキャプションからの引用。

    「世界は魔物で溢れ、人々があらゆる手段で責め立てられている。救われる者はほとんどいない。」

    とあるように、3分の2は地獄(笑)これまた魔物たちの多様性がすごくて見飽きない。

    このイメージの源泉はいったいどこにあるのだろうと思ったら、どうも中世の彩色写本などに多くを負っているらしい。そうした目で本書に掲載されている写本を眺めてみると、なるほどボスの絵と通底するものがある。ハマりそうこれ。

    そうだ、ボスの聖人画もすばらしく、「聖アントニウスの誘惑」なんて、まさにボスにうってつけの主題(フロベールもこの絵、見たのかな?)。
    悪魔の誘惑と闘った聖アントニウスが、魔物たちからこれでもかと責め苛まれている。不憫になるくらいに。

    (ミシェル・トゥルニエの小説『魔王』の主題でもある「幼児キリストを担う聖クリストフォロス」もボスは描いている。これは残念ながら拡大されていない。とはいえ解説に興味深い情報が。クリストフォロスはビザンティン美術においては「犬の顔」(!)で描かれることが多かったとのこと。レプロブスという犬頭人身の種族がキリスト教の洗礼を受けてクリストフォロスと呼ばれるのようになったのだという。映画版「魔王」では、だからそこまで考慮して面長のジョン・マルコヴィッチをキャスティングしていたわけか!)

    「快楽の園」と「最後の審判」と「聖アントニウスの誘惑」、ぜひ誰かにアニメーション映画にしてほしい。ぜったい面白いと思う。

  • ボスの真作と断定された20の作品群を、その周囲の絵も注釈を入れながら丹念に読んでいく本。

    「快楽の園」の植物や異形のものや透明性を帯びた構造物など、まるで未来を幻視していたのではとぼんやりと想像していたが、
    実は当時の別の絵画やスケッチに、いまでも驚嘆するほど異様なイメージがあふれており、それをまた異様な想像力とコラージュ能力で組み合わせたものであることがわかった。
    つまり私は、ルネサンス以降や印象派などの常識に浸されている。
    だからこそ、ボス、ブリューゲル、ファン・エイクなどに眼を奪われてしまうのだ。

    とまれボスの描く異形たちはどことなく愛らしい。
    飽きない。

  • ボスの快楽の園を小さい時に鑑賞してからずっと細かく見てみたいと思っていたのでとても面白く読めた。
    左パネルのエデンの園では神がエヴァに命が宿ったことを脈をとることで表しているのがユーモラス
    中央パネルの地上の楽園では空飛ぶ魚に半魚人、猫みたいな一角獣?鳥に餌付けされる人間など珍妙なモチーフが目白押し
    右パネル右パネルの地獄には楽器に苛まれる人々!ハープに串刺しリュートに縛られる人など。楽器が登場する地獄は何だか面白かった。

  • ボスの絵は細かい部分をクローズアップして、その寓意を読み解く面白さがありますが、本書はまさにそんなニーズにバッチリ答えてくれる本です。やや解説が感想的で浅いところがあるのですが、鑑賞者が気になると思われる部分をしっかり引き延ばして掲載しつつ、見どころの説明をつけているので、少しでもボスの絵に関心を惹かれた方には、痒い所に手が届く一冊だと思います。

  • ボスの描く絵。
    悪魔の様々な形が、人間の想像力の大きさを感じてとても好き。

  • 読み応え抜群でした
    この人の筆の細かさ、発想力はあの時代の中どこから得ていたのか
    今まで画面越しでしか見たことがない絵を紙媒体でじっくり見れてよかった〜!!
    解説もわかりやすくてよきよき◎

  • 表紙はこの世の楽園・・・ら、らくえ・・・ん・・・???????
    とにかくどこを切り取っても狂気が止まらない
    それがヒエロニムス・ボス

  • まあまあかな

  • 奥が深い作家だ。

  • サラっと読み。
    ヒエロニムス・ボス の真作全20点についての解説書。
    コンパクトにまとめられていて、
    美術や宗教、歴史に疎い自分でもなるほどと読めた。
    全編オールカラーなのが嬉しいところ。

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

國學院大學文学部教授/ネーデルラント美術史

「2021年 『天国と地獄、あるいは至福と奈落』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池寿子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×