21世紀のための三島由紀夫入門 (とんぼの本)

  • 新潮社 (2025年2月27日発売)
3.80
  • (3)
  • (3)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 136
感想 : 8
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784106023088

作品紹介・あらすじ

その作品と人生を今あらためて読み直す。ミシマ入門の最新版にして決定版! 平野啓一郎が小説、戯曲、日記などから選び抜いた15篇を濃密に解説。井上隆史は衝撃的な死に至る人生をつまびらかにし、四方田犬彦は映画俳優としての姿を追う。美輪明宏、横尾忠則、高橋睦郎、坂東玉三郎――生前の三島由紀夫と親交があった人たちの証言も掲載。「昭和」と共に歩んだ作家は、こんにちどう読まれ得るのか?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 芸術新潮の特集が売り切れで、あちこち探したがどこにも在庫が無く歯噛みしていたが、とんぼの本として出版された。
    満を持しての読書。

    平野啓一郎の三島由紀夫の小説の解説が特に素晴らしく、読んでみたくなった小説数々。「金閣寺」「仮面の告白」は大人になってどう読めるか、すぐにでも再読したくなった。解説により、読まなくても済みそうなものも。
    「豊饒の海」は今まで全く興味がなかったが、面白そうだなと思った。平野啓一郎は小説の出来としては今ひとつという評価ではあるが。

    三島由紀夫の負の部分も分析され、そこがまた魅力として受け止められる。
    いやー、面白かったです。謎の多い、振り切った人生を送った三島由紀夫。ぞわぞわします。
    保存版です。

  • 三島由紀夫を読んだことが実はないがキャラクター性には興味があった。そういう人は割と多いと思う。
    評論だけでなく、作品のナビゲートや本人の歴史、写真なども多く、あらすじも記載されてあるので作品を読んでみようか、と思わせる一冊

  • 三島由紀夫が生きた時代は、傑物同士がどこかで混じり合いながら特別なコミュニティをつくってきた時代であったとの印象を持った。誰でも情報発信の手段を持つ現代社会では、社会が平準化され良くも悪くもフラットになり、軽薄化が進んでいるように感じた。「命を燃やす」あるいは「心を焦がす」ような世界は、どこかに残っているのだろうか。

  • 1. 三島由紀夫の自伝的要素と文学的活動
    - 自伝的作品の発表: 三島は自伝的な書籍を1963年に発表し、新進作家としての地位を確立した。
    - 写真シリーズの制作: 三島は自らの美学をテーマにした写真シリーズを制作し、自己のアイデンティティを探求した。

    2. 三島由紀夫の文学と美学
    - 美と愛国心: 三島は戦前の日本の美を誇りに思い、文学や美術を通じて日本の文化を愛した。
    - ノーベル賞についての見解: 彼は右傾化がノーベル文学賞にふさわしくないという意見に対して、賞を得られなかったことに失望を感じていた。

    3. 右傾化の背景
    - 戦前の価値観: 三島の右傾化は、戦前の「美しく正しく」という価値観を受け継いだ結果である。
    - 文化的影響: 彼は能、狂言、歌舞伎などの日本文化に深い愛着を持っていたことが強調されている。

    4. 三島由紀夫の死とその影響
    - 自決の前兆: 三島は自らの死を予感し、周囲との会話の中でその意図を示していた。
    - 死の美学: 彼の死は、彼の文学や美学に対する深い考察の一環として位置づけられており、彼の作品の中にもその影響が見られる。

    5. 三島の人間関係と影響
    - 関係者との交流: 三島は多くの著名人との交流があり、特に文化的な対話を通じて自己を形成していた。
    - 芸術と政治的意見: 彼は政治的な発言をすることに慎重であったが、次第にその立場が変わっていった。

    6. 三島由紀夫の作品と主題
    - 主要作品の分析: 「仮面の告白」や「金閣寺」は、彼の内面的な葛藤や社会への批判を描いた重要な作品である。
    - 生の表現と死のテーマ: 彼の作品には、生と死、愛と美、虚無といったテーマが織り交ぜられている。

    7. 三島の文化的影響
    - 文学界への足跡: 三島は日本の現代文学において独特の地位を占めており、彼の美学は後世の作家にも影響を与え続けている。
    - 文化的遺産: 彼の作品は今なお多くの人々に読まれ、議論されており、その文化的意義は評価され続けている。

  • 著者の1人である平野は、政治的には三島と対立したかんがえをもつとのこと。
    彼の政治的考え、ひいては分人について深く知りたいと思った。


    【英霊の声】
    ・"このまま行ったら「日本」はなくなって(中略)その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう>という、よく引用される一節がありますが、「あいまいな」という形容は、ここに出てくる「ニュートラルな」や「中間色の」と同様に、三島が戦後社会を批判する場合に使う言葉です。"
    ・昭和30年代後半の小説がアイディア豊富なわりにやや集中力を欠いていたのに比べて、「英霊の声」は書きたくて書いた筆の力が蘇っている感じがします。特に後半、訓練の日々を終えた特攻隊員たちがいよいよ出撃し、敵空母に体当たりするまでの描写のみごとさは、美しさといい、緊迫感といい、悲痛さといい、ちょっと比類のないものです。しかしだからこそ、特攻隊のそのような神聖化は、政治的には問題です。三島文学に強い影響を受けながら、政治思想的に対立する僕が批判的に読む箇所です。

    ・特攻隊を美化する背後には、三島のいわば太平洋戦争史観があるでしょう。アメリカとの戦争での敗北による被害者意識が強すぎて、真珠湾攻撃以前の日中戦争が意識の中に存在しない。当然、帝国主義の加害者としての認識にも立たない。そして被害者意識の中で特攻隊を美化してしまう。これは、彼に限ったことではなく、今日の日本でも蔓延している問題であるわけですが。
    ・サバイバーズ・ギルトの側面もあるでしょう。戦争や大災害から生還した人が、死者に対して感じる心理的な負い目のことですが、自分は大江さんのような遅れてきた青年"ではなく、間に合っていたにもかかわらず戦地に行くことがなく、生き残ってしまったという意識を三島は持っていた。「英霊の声」はそうした点も含めて、特に三島の思想を批評的に検討する上では必ず読むべき作品だと思います。大きな転換点ですね。

    【小説とは何か】
    ・作家にとって一番怖ろしいのは、文学については、いよいよよくわかるようになっていながら、作品がその反映とはならないこと。勉強しない人はそれはそれで確実に行き詰まりますが、勉強もよくしていて理解は深まっているのに、だからこそかえって基くことが困難になってゆくという難しさは、作家にあると思います。谷崎潤一郎が関西に移住したみたいに、何か思い切った工夫がないと乗り越えられないのかもしれない。

  • 三島由紀夫の人生をカラーで振り返る本。平野啓一郎の選ぶ15作品の他、美輪明宏のように存命中に関わった人間たちのインタビューや原稿など

  • 三島由紀夫の小説を読む前にちょっと解説してほしいなと思ったところ、この本を見つけた。
    幼少期、小説のこと以外の内容も書かれていて人としても興味が出てきた。
    原稿の写真もあり、字もきれいで読みやすいなと思った。
    写真も多く、読みやすかった。

  • 三島由起夫生誕100年に読むべき必須の一冊かと。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒業。1999年、在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』で、第120回「芥川賞」を受賞する。
主な著書に、『葬送』『透明な迷宮』『マチネの終わりに』『ある男』等がある。

平野啓一郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×