私説 広告五千年史 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035319

感想・レビュー・書評

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  •  西荻の古本屋でふと見かけて手に取ってみた。
     天野さんは朝日新聞の「CM天気図」~「CMウォッチ」の連載をずっと楽しみに読んでいた。晩年はけっこう時代に物申すの論調が強まって、それでも変わらぬ優しい口調が良かったなぁ。2014年に過去の発言、文書などを纏めた『天野祐吉 経済大国に、野次を』で一本、筋の通った氏の論調が楽しめる。
     そんな天野さん、鬼籍に入られる10年前の著作。文体に懐かしさも感じながら読んだ。

     内容としては、天野さんが書いたのじゃなけりゃ、ひょっとしてトンでも本?!というシロモノ!? 歴史を振り返り、有名な史実、歴史上の人物の偉業を、広告という切り口で見てみたらという痛快なもの。
     まずは先史時代。呪術者の行いも広告だった。シャーマニズムの不思議な力を広告することで、彼らはなにを売ったか? 

    「人々の恐怖や不安を取り払う”安心”を売っていたんじゃないかと、ぼくは思います。」

     イエス・キリストが人々の眼の前で奇跡を起こして見せるのは、出勤途上のサラリーマンを捕まえてヒゲをそらせる「ブラウン・モーニング・リポート」に受けつがれる広告手法。
     日本の例では平安時代の仏教家は「地獄」キャンペーンを張って、

    ”みごとに「極楽浄土」という「商品」をヒットさせ、仏教を大衆化することに成功”

     と記す。ここに見られる広告手法は、「恐怖アプローチ」(恐怖心をかきたてて商品を売る)と、「使用前・使用後」の方式だそうだ。
     とまぁ、列挙されるこれら珍説を、例えばネットの記事なんかで読んだら単なるおふざけとしか思えないかもしれない。

     ただ、やはりそこは、天野さんのお人柄が出てるのかな、眉唾感がない。「ぼくは思います」「ぼくは思っています」、いろんな説をブチあげるけど文末が言い切りでない、大上段でないところが信憑性をかえって高めている。
     それこそ天野氏の広告マンとしてのゆるぎない手腕に、こちらがまんまと騙されているのかもしれないけど。
     
     もちろん語り口調だけでなく、歴史の雑学、広告界の知識、多くの情報の豊富さに裏打ちされた、氏独自の分析も面白い。 呪術師の仕事にしても、ものごとに名前を付ける役割があったと推測し、

     「こういう”ネーミング(命名)”も広告の主要な仕事の一つですが、木や草のように手で触れる物の名前は別として、雷とか風とか夕焼けといったようなものにネーミング」

     見えないものに名前を付けることで、それこそ神憑りな人知の及ばない訳のわからない畏怖の対象でしかなかったものを身近に感じさせることで人々を安心させたのだろう(まさに”安心”を売っていた)。

    「そんな言葉の呪力を出発点にして、やがて宗教広告が生まれ、政治広告が生まれ、そして商業広告が生まれていったのだと、ぼくは思っています。」

     と、人類五千年史を、広告という視点から俯瞰した、一本、筋の通ったトンでも本!(いい意味で・笑)

  • 歴史上の覇者たち。彼らの活躍を広報戦略の成功という切り口で。新たな視点で見られておもしろい。それにしても武骨、すごい。

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