「密息」で身体が変わる (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
3.65
  • (10)
  • (25)
  • (27)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 232
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035630

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 密息という、元来人間がしてきた呼吸法により、人間の本来の健やかさが得られる…
    呼吸というのは、無意識に無数に繰り返す行動なので、ぜひ習得してみたい…!と思いました。

  • 虚無僧尺八の海童道祖の呼吸法「密息」。それは座禅の呼吸法でもあり、床に座る日本人が古来から行っていた呼吸法だとの気づき。
    腰を落とし骨盤を後ろに倒すことで、お腹に息を入れやすくする。
    息を吸うときも吐くときも腹をやや張り出したまま。それは和服の帯に腹を張るのと同じ動作。
    この密息の呼吸法で、腰が据わり、身体が安定することによって、視点のフォーカスイン/アウトや倍音による音楽の従構造の音量と音質の重みなど、日本人独特の感性が説明できるとする。
    腹式呼吸ではなく、腹を張ったまま息を吐きだす呼吸法は、馴染みがあるというよりは、やはり新鮮だが、個人的には水泳に使えそうだと感じた。
    16-139

  • 筆者は尺八奏者

    ■密息
    尺八に伝わる呼吸方法
    日本の身体意識・身体文化に密接に結びついている

    尺八の音に魅せられて海外の音楽大学、大学院へ進学
    胸式呼吸、腹式呼吸、逆腹式呼吸、循環呼吸とマスターするも、
    尺八の演奏にはどの呼吸法もそぐわない

    尺八は菅内の容量が非常に大きく、
    世界的にも稀なほど大量の息が必要な楽器
    虚無僧寺にて教わった奏法が密息

    秘密の技法という意味ではなく、
    「息をひそめる」、息を自他にわからせないようにするという意味

    ■密息の特徴
    ・大量に息が吸える
    骨盤を後ろに倒すほど、吸える量が増える

    ・一瞬で吸える
    鼻から吸うのが楽で、しかも音もなくできる

    ・強い安定感
    骨盤が後ろに倒れているため、安定感がある
    身体が動かず、安定し、吸う音がしないため静止感がある

    ・着物文化とのつながり
    着物を着ると自然とできる呼吸
    着物は着崩れないために、常に腹を張るようにしている必要がある
    その状態での呼吸法が密息

    ・昔の日本人はみんな密息だった
    密息でなければ演奏が難しい尺八の曲が非常に多い

    ■密息の方法
    ・腹を張り出したまま、吐いて、吸う
    腹を張り出してその形を変えないこと
    外の筋肉を動かさず、横隔膜だけを動かす

    ・力を抜く
    へその下、下腹のみに力を入れること

    ・呼吸をしながら周囲に注意を向けてみる
    身体は動かない、世界が静止したように見える
    感覚が鋭敏になる、音・ものの動きを明瞭に感じられる

    ・骨盤を後ろに倒す(上級)
    椅子に座って、腰を背もたれにつける感じ
    首の付け根をやや前に出す感じ
    力を入れないこと

    ・鼻の奥を広げて、目頭から吸う

    ■骨盤の位置と日本人
    ・日本人はかつて骨盤が後ろに倒れていた
    日本の伝統的な家屋、農作業では後ろに倒れている方が自然な動作
    現在は西洋風の家屋、生活で骨盤が立ち気味であるが、
    西洋人ほどに立ちきってはいないため、精神的にも不安定となる

    日本では国風文化ができた頃から床座の文化
    立ち座りを繰り返すことで足腰が鍛えられた
    椅子が普及した現在でも、お酒を飲むときなど床座が落ち着く

    帯の文化は、腹部を抑え密息と深い結びつきがある
    密息ができれば着崩れることがない

    西洋人は身体の外側の筋肉が発達していて、骨盤も立っている
    腹式呼吸は本来西洋人のための呼吸法

    伊東浩二「日本人は他の人種と比べて、
    最も骨盤が後ろに倒れている民族」
    黒人の骨盤は前傾していて、
    それがスプリントのスピードを生み出している

    ナンバ歩きは加速には向いていないが、
    山道・田んぼの多い悪路では安定する歩法
    重心の上下動がない

    骨盤が後ろに倒れているため、のこぎりなどを"引く"文化である
    "しゃがむ"文化、西洋人はしゃがむことができない

  • 尺八の呼吸法と後半は脱線気味のエッセイ。
    胸式・腹式・逆腹式・密息
    図書館。

著者プロフィール

尺八演奏家。作曲家。
虚無僧に伝わる尺八音楽の採集・分析・演奏をライフワークとしつつ、ロック、ジャズ、クラシック、現代音楽、等に幅広く活躍。世界30ヶ国余150都市以上で公演。世界40局余の放送局に出演。NHK大河ドラマ「天地人」の音楽などの尺八演奏を担当。
倍音奏法、多重奏法、また自ら捜しあて極めた日本古来の呼吸法「密息」と、独自に開発した方法による循環呼吸(吹きながら同時に息を吸い、息継ぎなしに吹き続ける技術)を駆使した演奏法を確立。
世界各国で「日本音楽の構造」、「倍音」、「密息」の講義を行う。
CD「虚無僧尺八の世界」シリーズは文化庁芸術祭優秀賞を2回受賞。第19回松尾芸能賞、ほか作品にて第18回文化庁舞台芸術創作奨励賞など受賞多数。
自らの極めた呼吸法から日本文化を論じた著書「『密息』で身体が変わる」(新潮社)で年間売上第2位(2010年、新潮選書日本論部門)。2010年10月には『倍音』(春秋社)を上梓。

「2023年 『日本人の呼吸術 深く・鋭く・美しく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村明一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×