渋滞学 (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035708

感想・レビュー・書評

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  • 書評などで見て買いたいと思いながら、買いそびれていた本。図書館で借りて読み出したのだけれど、おもしろすぎて即購入。渋滞についての研究。しかしそれは何も自動車の渋滞だけではない。緊急避難時の人間の動きであったり、アリの行動パターンであったり、コンピュータのネットワークだったり、血液の循環の話だったり。とにかく、渋滞を発端に、いろいろな話に広がっていく。しかしモデルとして出てくるのは、本当に単純な箱と○。本当に簡単なルール。そこから、次々に新しい動きが見つかってくる。少しルールを変えるだけで新たなことが分かる。どんなモデルを作るか、それが研究者のカンの働かせどころ。安全学など新しい学問との融合も期待できる新しい領域だと思う。

  • 交通の渋滞から、人の渋滞、アリ、ネットワークの渋滞まで色々な渋滞があり、様々な分野の問題を単純化して画一的に捉える面白さ。締めに、理学と工学を横断的に理解のある人が今後必要だと作者は説いている。

  • ●『渋滞学』(西成活裕/新潮選書)
     渋滞というのは、目の前にあれば不快だし、どっから始まるかもわかんないし、なんだか正体がわからない「ぬえ」のようなモノという認識だった。ところが、近年ではこの「ぬえ」のしっぽをつかまえているっぽいつーか、ちゃんと「学問」になってるっぽい。
     具体的には、簡単なモデルをつくって、それを動かしながら検証していくと。そのモデルというのは、こんなの。

    □□●●□●□□●□□□

     四角い箱□の1コマに、●は1個だけ入ることができる。で、1コマ先が空いてれば移動できる。こんなふうに。

    1)□□●●●□●□□●□□□

    2)□□●●□●□●□□●□□

    3)□□●□●□●□●□□●□

     もちろん、□を0、●を1として(0010101010010)と表すこともできる。こうして渋滞をモデル化することで、コンピューターにのっけてシミュレーションして……ということができるようになって、渋滞を物理学的に研究できるようになってきた。なるほどね~。

     で、この本では、車の渋滞に限らず、人の渋滞、アリの渋滞、インターネットの渋滞、はては人の細胞の中での渋滞なんかをとりあげて、それがどういうしくみで起きてるのかを明らかにしてる。「渋滞」という不快な現象の裏に、どんな法則があるのかというのがわかってくると、ちょっとなんだか楽しいぞ。

     科学の先端の話というのは、現実生活とどう結びついているのかがわかりにくい話が多い。そこんところ、この「渋滞学」というのは、すぐに役に立つので身近に感じるし、メリットもわかりやすい。最後まで退屈しないで、楽しめる本だった。

  • 車や人を自己駆動粒子をみなしてモデル化・シミュレーションする、待ち行列理論以上のスタンスが渋滞学だということか。インターネット上のパケットの輻輳や生物内のミクロ系で見られる渋滞などの事例も紹介されている。著者の立場は複雑なシステムもできるだけ単純化して見ていこうといった感じで紹介されている数理モデルは離散的なかなり単純なものなが多い。巻末には理学と工学を融合できる人材の必要性なども述べられている。

  • 車だけでなく人の混雑,アリの群れから森林火災やたんぱく質の合成まで,ありとあらゆる渋滞現象の発生原理が分かりやすく解説された名著。あなたが渋滞に直面した際取るべき行動のヒントがここにある。終盤,デジタルコンピュータの限界をカオス理論におけるパイこね変換に基づき紹介し,数学の重要性を説くあたりは秀逸。

    *推薦者 (工教)S.H.
    *所蔵情報
    http://libra.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00324926&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • いつか読んでみたいと思っていた本。
    「渋滞」=車だと思っていたが、色々と他分野に渡って記されていた。
    「渋滞学」というタイトルのとおり総論的な内容だった。

    無意識な渋滞を引き起こさないような運転を心掛けたい。

  • 半分わかったかどうか。全体を通して思ったこと。何故か会社の会議の動員予測について、「うちの会社の会議は微分化し過ぎかとおもう。得られた結果を要素還元的なアプローチで料理できてないなあ、科学的でないな〜」と、しみじみおもってしまいました。

  • 2-4-2 都市工学

  • 世の中で話題になっていた時期に当時の上司に借りて読んだ一冊。
    渋滞を起こさない一番簡単な理由であったり、混雑をどう解消するか、を学問にするだけでこんなに面白くなるのか、という点で目からうろこでした。
    東大の先生が本気になればこんな実験もできるのね、ということで、社会のためにこの学問をもっと効果的に使って欲しいものです。

  • 車の渋滞の他、蟻の行列やパニック状態の人の行動など様々な行列のメカニズムとそれに関する理論の本。

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著者プロフィール

東京大学先端科学技術研究センター教授。専門は数理物理学、渋滞学。
1967年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業、同大大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。その後、ドイツのケルン大学理論物理学研究所などを経て現在に至る。
予備校講師のアルバイトをしていた経験から「わかりやすく教えること」を得意とし、中高生から主婦まで幅広い層に数学や物理を教えており、小学生に微分積分の概念を理解してもらったこともある。
著書『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(小社刊)は全国の数学アレルギーの読者に愛され、20万部突破のベストセラーに。『渋滞学』(新潮社)で講談社科学出版賞などを受賞。『とんでもなく役に立つ数学』(KADOKAWA)、『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』(あさ出版)など著書多数。

「2022年 『東大の先生!文系の私に超わかりやすく物理を教えてください!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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