五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語 (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035746

作品紹介・あらすじ

古代メソポタミアにも教育パパや非行少年がいた!初めて文字を発明し、最初の都市社会に生きた人々の生活は、どのようなものだったのか?膨大な粘土板に刻まれた楔形文字を読み解き、自意識過剰の王様、赤ん坊に子守歌を作ったお妃、手強い敵を前にして王に泣きつく将軍、夫の家庭内暴力から逃れた妻など、人間くさい古代人の喜怒哀楽を浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • KT7a

  •  今回はシュメルに関わる書籍を4冊連続で読めた。これも図書館さまさまだ。
     紀元前3000年から紀元前1000年までを一気に解説してくれている。著者の仕事としては、是非、この4冊を含む内容を整理し、さらに描ききれていない情報を加えて、この一冊でシュメルの歴史がわかるという著書を描いて欲しい。
     それぞれの本で新たな情報が得られ大変勉強になった。何冊かは購入し、すこし時間をかけて勉強しなおしたい分野だ。

  • 内容は面白かったけどタイトルが合ってない

  • 中公新書のシュメルと比べ、重なるところもあったが、切り口を変えて提示されるとまた興味が増す。特に興味を惹かれたのは「シュメル人の「死生観」には地獄がない一方で、天国や極楽もない。となれば、一度だけの生をよく生きると定めざるをえない。「あの世」よりも「この世」を大切に生きた。」p.154/シュルギ王の「氷室」は北方または東方の山岳地帯から雪や氷を運んできたり、あるいは雹やあられを集めて、地下の室にわらなどで包んで外気から遮断して保管し、飲み物を冷やすためなどに利用したようだ。冷蔵庫のない時代に夏の氷はぜいたくの極みである。p.230

  • 2013 8/15パワー・ブラウジング。司書課程資料室の本。

    図書・図書館史授業用。著者は『シュメル』と同じ方、こちらはより個々のシュメルでのエピソードに踏み込んだ内容。
    以下、気になった点のメモ。

    ・余剰生産物の増加/社会的な役割文化の話・・・
     ⇒・つまるところ「とりひき」が行われるようになる⇒その記録が文字

    ・p.37 王自身文字を読めないのになぜ王は碑文を作るのか⇒神に捧げるため

    ・p.33 メソポタミア・・・2つの川が運んでくる肥沃な土壌
     ⇒・降水量は少ないので灌漑設備は必要
     ⇒・生産力向上の努力の結果、前2300年頃には収量倍率=1粒の麦からとれる麦の量は76.1倍!
      ⇔・9世紀北フランスの荘園は約2倍
     ⇒・麦いっぱい、パンにビールに羊の餌にも麦・・・
      ⇒・この豊穣な状況が背景にある

    ・p.148・・・シュメル語の「書記」=ドウブ(粘土) サル(植える)=「粘土板に文字を植える人」

    ・p.168 シュメルに鋳造貨幣はない・・・銀の量をはかって支払う
     ⇒・鋳造貨幣発明は前7世紀リディアなので、だいぶ後

    ・p.194にエブラの文書館の想像図あり・・・授業で使える?

    ・p.204・・・文字によって遠隔地ともやりとりができる、が・・・
     ⇒・実際は差出人も受取人も文字は読めない/書けない場合が多い
     ⇒・使者は手紙の内容を暗記⇒手紙を渡しつつ、内容は暗唱
      ←・命令を伝える目的で手紙は出される・・・が、意味あるのかそれ・・・

    ・p.216 中島敦が楔形文字に関する小説を書いている?
     ⇒・資料も入手し難ければ日本に研究者も少ない時代にどうやって?
      ←・あとで現物を読んでみる

  • ウンナムル法典(?)の条文とか色々載ってて面白かったです。

    古代の人の価値観というのは今の価値観とは当たり前に違うので、例えば「もし人が人の処女である奴隷身分の妻に暴力を及んで、犯したならば銀5ギンを量るべきである。」とか、その1条文あったのだと知るだけで、ちょっとでもその違いがわかるような気がしました。

  • シュメル学者、小林登志子氏によるシュメル人の暮らしぶりについての解説書。
    小林氏が「はじめに」で語るように、タイム・マシンで4500年ほど(!)遡る旅である。
    ティグリス・ユーフラテス川の流域にはパピルスは生育していなかったのだろうか
    。エジプト人がパピルスに文字を書き付けた代わりに、シュメル人は粘土板に楔形文字を書き付けた。それらの粘土板や円筒印象(印鑑の周囲に文字を刻み込んだもの)を読み解いてゆく。

    ティグリス・ユーフラテス川とナイル川の流域に最初に古代文明が栄えたのは、偏にこれらの《母なる川》の大いなる恵みのお陰に他ならない。
    ティグリス・ユーフラテス川流域の都市国家ラガシュ市では、大麦の収量倍率が76.1倍であったという。九世紀初めのフランス荘園で麦の収量倍率が僅か2倍であったというから(P33)、その豊かさたるや目を見張るものがある。ちなみに九世紀のフランスはまだ小氷期が訪れる前で比較的温暖だったと思われ、それでもこの倍率の低さは驚きである。

    さて、豊かな土地というのは誰もが欲するところであり、そこに土地争いが生じる。小国が争いを繰り返し、様々な王朝が生まれては消え、消えてはまた生まれる。
    ときに王自ら武器を取って前線で戦い、ある王はその負傷が元で亡くなっている(P104)。
    冑は身につけたようだが、布を巻き付けただけの軽装にサンダルという出で立ちでの戦いはどれほど恐怖を感じただろう。
    戦いが終わると、自軍の負傷者や戦死者の数は公表せず、敵方のそれのみを数えて戦勝碑に刻んで神に報告する(P100)。
    この辺りの《大本営発表》的なやり方は古代も現代も変わらない。

    そう、読んでいて感じるのは現代日本人と古代シュメル人との類似性である。
    《母なる川》に抱かれて豊かな穀倉地帯を持ち、祭祀王を元首として暮らすシュメルの人々。
    雨量に恵まれ、小麦の数倍から数十倍の収量倍率を誇るジャポニカ米を栽培し、祭祀王天皇を頂く日本人。
    生真面目で筆まめ、記録好きなのも似ているかもしれない。
    古代の王が臣下と交わした書簡が学校の教科書として書写され、それらが現存して私たちにシュメル人の暮らしを教えてくれるのである。

    しかしながら、記録されているのは主に王族の暮らしであって、庶民の暮らし(識字率、平均寿命など)については殆ど知られていないという。
    いつの時代も民草は知られずに生き、知られずに死んでゆくのだ。

    小林氏の平明な文章と豊かな見識に誘われての古代シュメルへの時間旅行は大変楽しく有意義なものだった。
    だが、駆け足で有名な見所を一通り巡る観光ツアーのような味気なさを感じるのも事実であった。
    この遙か遠く、どこか懐かしい人びとの息吹を感じてみたくなった。

    本著には出てこなかったが、「近頃の若い者はなってない」と嘆いたのはシュメル人であったと聞いた。
    その呟きをもう少し追いかけてみたい。

    彼らが使った楔形文字は、メソポタミア全域でおよそ3000年にわたって使われた。そして、楔形文字による最後の記録は紀元75年の天文学上の記録であるという(wikiによる)。
    我らが日本語はいつまでこの地球に生き続けるだろうか…?

  • [ 内容 ]
    古代メソポタミアにも教育パパや非行少年がいた!
    初めて文字を発明し、最初の都市社会に生きた人々の生活は、どのようなものだったのか?
    膨大な粘土板に刻まれた楔形文字を読み解き、自意識過剰の王様、赤ん坊に子守歌を作ったお妃、手強い敵を前にして王に泣きつく将軍、夫の家庭内暴力から逃れた妻など、人間くさい古代人の喜怒哀楽を浮き彫りにする。

    [ 目次 ]
    1 シュメルの父と息子―ウルナンシェ王の「奉納額」(ウルナンシェ王の「奉納額」;都市国家ラガシュ市 ほか)
    2 ラガシュ王奮戦記(二方面の宿敵;「正史」の始まり ほか)
    3 后妃のお葬式―シュメルの女性たち(葬儀は語る;シュメルの女性群像 ほか)
    4 商人が往来する世界―シュメル人の交易活動(古代人の商売繁盛;瑠璃に魅せられて ほか)
    5 星になったシュルギ王(帝王の佇まい;ウル第三王朝の最盛期 ほか)

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著者プロフィール

小林登志子
1949年、千葉県生まれ。中央大学文学部史学科卒業、同大学大学院修士課程修了。古代オリエント博物館非常勤研究員、立正大学文学部講師等をへて、現在、中近東文化センター評議員。日本オリエント学会奨励賞受賞。専攻・シュメル学。
主著『シュメル―人類最古の文明』(中公新書、2005)、『シュメル神話の世界』(共著、中公新書、2008)、『文明の誕生』(中公新書、2015)、『人物世界史4 東洋編』(共著、山川出版社、1995)、『古代メソポタミアの神々』(共著、集英社、2000)、『5000年前の日常―シュメル人たちの物語』(新潮選書、2007)、『楔形文字がむすぶ古代オリエント都市の旅』(日本放送出版協会、2009)ほか

「2022年 『古代オリエント全史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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