戦後日本経済史 (新潮選書)

  • 新潮社 (2008年1月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784106035968

みんなの感想まとめ

戦後日本経済の変遷を深く掘り下げたこの作品は、占領期から高度経済成長、そしてバブル崩壊に至るまでの流れを、戦時経済体制との関連性を通じて解説しています。筆者の個人的な体験やエピソードが交えられており、...

感想・レビュー・書評

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  • ・仮にあなたが、高校卒の銀行員だったとしよう。出向先の地方銀行で定年を迎えようとしていた矢先に、中堅商社の社長になっている昔の上司から声がかかり、その会社に就職することができた。早朝から深夜まで粉骨砕身で働き続けたのが認められ、専務にまで取り立てられた。
    あるとき、社長が得体のしれない人物を連れてきた。会社の役員にするのだという。そして、その人物が手掛けている得体の知れない事業をあなたが担当するよう命じられた。あなたなら、それを断れるだろうか?(イトマン事件)

    ・なぜ山一だけが破綻したのか。営業特金(法人の資金を一任勘定で預かり、利回りを保証する。自由に売買できるので手数料は稼ぎ放題だった。)を行っていたのは山一だけではない。バブル崩壊によって巨額の損失が発生したことも各社共通の事情である。違ったのは、それへの対処法だ。
    原理的には、
    ①顧客先企業に損を含めて引き取ってもらう。
    ②顧客先企業に引き取ってもらうが、損失は証券会社が補てんする(法で禁じられてからは、訴訟を起こしてもらって裁判所主導で和解する形でこれを行った)。
    ③証券会社が引き取り、損失を償却する。
    ④引き取った後に簿外処理して隠蔽する。
    事が考えられる。大まかに言えば、野村証券は①を、大和と日興は②を中心として解消した。山一だけが④を選択したのである。つまり、各社とも同じ問題に直面し、山一以外の会社は何とかそれを表面化させて解消した。山一だけが、ひたすら隠蔽する事を選択したのである。これは、「経営不在」以外の何物でもない。

    ・集中排除法は当初325社を分割の対象として指定していたにも関わらず、実際に分割されたのは日本製鐵、三菱重工業、大日本麦酒、王子製紙などの10数社にとどまった。しかも、分割された企業のほとんどがその後合併して復活した。
    しばしば、「何がなされたか」より「何がなされなかったか」の方が重要である。とくに重要なのは、銀行業に対して集中排除法が適用されなかったことだ。戦後の日本の企業が、銀行を中心とした企業グループを形成したことはよく知られているが、これは、戦時中に作られた仕組みだった。また、中央省庁、マスメディア、教育制度、土地制度なども戦時体制が戦後に残った。そしてこれは戦前から継続されたものでは無い。だから高度成長は一般に信じられているように、戦後の経済民主化改革によってもたらされたのではないのだ。そしてこの戦中体制によって石油ショックへうまく対応できた(企業ごとの労組で賃金上昇圧力を抑えられた)事で、戦中体制が長く維持され、バブルで力尽きた。しかし、日本式経営と呼ばれるものの中に根強くその考えは残り、組織体は変革されていない。

  • 再読中

  • 意外なこと、知らなかったことも多く、面白く読めた。

  • 戦後に、B円が流通することを阻止した。B円はごく一部と沖縄で流通した。
    銀行に対しては、集中排除法の適用がなく、銀行を中心にした企業グループが残った。
    アメリカの猟官制の弊害を排除するため、公務員の職階性、人事院設置などが採用された。
    シャウプ勧告で直接税中心の税体系を作った。戦前は間接税を中心とするもの。シャウプ勧告より前に、40年度税制改革で法人税親切、源泉税制度ができた=戦費調達のため。

    財政投融資はうまくできている。一般会計の負担がない。国会の承認なしに融資ができる。
    高度成長は、外需依存ではなく国内市場の拡大。
    比較優位があった繊維産業ではなく、重工業に力を入れた先見の明のおかげ。耐久消費財の需要は所得弾力性が高く、お互いを高める高度成長になりやすい。繊維や食品とは違う展開になる。
    戦前の世界企業は鐘ヶ淵紡績。戦後は政府の規制と保護によって鉄鋼自動車電機が成長した。

    安保闘争、バブル、郵政民営化、はいずれも根拠なき熱狂。
    労使協調路線は日本型企業の本質。戦後の経営者は内部昇進者であり、経営者と労働者が未分離、企業内組合。
    法人税課税の退職給与引当金と社宅の建設費によって、正社員を増やすことの促進が働いた。

    戦後は、額面発行が主だった。企業は銀行にたよった。
    株式会社は利益よりも拡大を求める組織になった。
    日本列島改造論が地価上昇の原因ではない。その前から工業化と都市化により上昇していた。

    田中角栄による2兆円減税。給与所得控除を大幅に増やした。社会福祉元年。
    予算書は、対数表の次に誤植が少ない書籍。

    欧米諸国では物価スライド条項を含む賃金協定が一般的=インフレなら自動的に賃金が上昇する。不況でも同じ。これがスタグフレーション。
    日本では、企業内組合のために、不況時に賃金上昇を抑えることができた。石油ショックの時にいち早く乗り切れた一因。
    田中角栄のときの道路整備特定財源制度と給与所得控除拡大は日本経済に大きな影響があった。

    戦時経済から始まった農地解放、財閥解体、借地借家法は資産家を直撃し、平等な社会づくりに寄与した。


    20260216再読
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    戦後の日本経済は、戦時期の経済制度の上に築かれた。占領軍によって作られたものではない。
    現代では日本型システムは機能していない。経団連は戦時中の統制会の名残り。

    軍需省は戦後、以前の名称である商工省に真苗を変えた。その後通商産業省になった。
    B円の阻止=軍票を作らない。これは沖縄に運ばれて流通した。
    ドイツは、占領政策で中央政府を完全に解体したが、日本は戦時体制を引き継いだ。戦前期ではなく戦時体制を利用して、経済復興を図った。傾斜生産方式、復興金融公庫、価格差補填など。
    マルクス主義的な資本対労働ではなく、資産保有者対事業者の対立。戦後経済は、資産保有者から搾取して、事業者、ひいては国民全体を潤した。
    復興金融公庫は日本興業銀行の一部として戦後作られた。
    地主の地位が低下、農地改革で地主層が没落(太宰治の斜陽)。
    農地改革は戦時中に用意されて、戦後の占領下で実現した。零細土地保有社を増やしただけで生産性の向上を阻害する要因。
    財閥解体=三井、三菱、住友、安田、富士産業(中島飛行機)の解体。銀行業に対しては集中排除法が適用されなかったため、戦時中に強化された間接金融が生き残った。
    日本の官僚制は、アメリカの猟官制の反省から作られたが、官僚の本質までは見抜けなかった。
    軍事費調達のため、ドイツに見習って源泉徴収制度が始まった。当時最先端。

    重工業化対傾構業維持、長期発展対現状前提、池田対一萬田。
    日本の高度成長は外需依存というより国内市場の拡大のおかげ。耐久消費財は、所得弾力性が高い=所得の伸びを超えて増加する。食料、繊維とは異なる。
    労使協調路線は日本型企業の本質。労働者と資本家のみ分離、企業内組合、社宅、退職給与引当金などの税制が企業一家を支えた。
    東海道新幹線には世界銀行の融資が使われた。
    戦前は額面増資が一般的。時価増資は証券業界が株価の下落要因となるとして反対した。その結果、直接金融が育たなかった。個人の株主比率が低下し、銀行の比率が上昇。

    食管制度は税制資金によって米農家に補助金を配るもの。
    農地解放で小規模地主が増え、借地借家法で借地人のちいが向上し、平等社会が誕生した。

  • 占領期の経済政策から高度経済成長、バブル、金融機関の破綻までの戦後日本経済史を、戦時経済体制との連続性という観点から解説する本
    筆者の個人的体験なども交えられていて読みやすい

  • おもしろい。
    日本の戦後経済は終戦後に形成されたのでなく、戦時経済の延長でしかないという。大蔵省に勤務していた経歴をもつ筆者ならではの分析や意見、そして自己の体験談も踏まえた熱い一冊。
    1945年8月15日。第二次世界大戦が終わった。
    その後、10日あまりで軍需省は商工省に名を変えた。
    そして、焦土からの復興。
    日本の行動経済成長がはじまる。
    そして突然訪れた石油ショック。
    やがてバブルになり、土地は使うもの、住むものから、投機の対象になった。
    バブルが崩壊し、企業の不祥事が次々と明るみに出る。
    大蔵省のスキャンダルや、金融危機が訪れる。
    現在、バブルが懐かしいなどという人もいるが、バブルのために銀行の破綻なども起こり、そのツケは国民が支払ったのだ。
    日本の経済は戦時中の、国家のために一丸となって戦うという姿勢を崩していない。当時の体制がそのまま生き延びている。

  • 日本経済の行き詰まりが、なぜ起こっているのか。その理由として、戦時体制が戦後も継続していることを筆者は指摘する。銀行や企業の資金調達方法など、各種の問題がある。

    先進国にキャッチアップする時期は、もう終わった。生活必需品は国民に行き渡り、新たな大きな需要はない。高度経済成長期のような成長率は望めなくなった。

    しかし、全ての市場が伸びていないわけではない。AIなどの新しい市場もあれば、既存の市場に打って出るディスラプター企業もある。

    だから、個人が生きていく上では、市場をうまく選んでいくことが大事だ。

  • 1

  • 実は官民ともに第二次大戦中の挙国一致体制が温存されており、戦後(特に朝鮮戦争後)の高度経済成長は戦時体制だからこそなし得た、という著者の史観が書かれている。

    憲法や教育制度の場合は「米国に押し付けられた」という整理が納得感があるが、大蔵省や通産省の官僚は「うまいこと看板架け替えでGHQをやり過ごすことが出来た」と考えていることがわかった。また、その主張は説得力があった。

    昭和を理解するための良書。

  • たぶん5年くらい前に買った本をようやく読了。本が出たのは10年くらい前みたい。
    戦後日本の経済史を「戦時経済体制」をそのまま引き継いでいるとした本。戦時中に成長した企業が、戦時日本経済の中心となった。「戦後にできた企業はソニーとホンダだけ」。最後に、「日本は社会主義国家だ」とまで言っている。勉強になりました。

    キーワード:日本独特の大企業の資金調達=株式発行ではなく銀行融資(間接金融)、株式は銀行や一族等で保有する(資本と経営の分離/公的性格)、日本人の土地神話は株式投資する風習がなかったから(預金の投資対象が土地しかない)、株主に影響されない経営=経営者と従業員が一体で利益ではなく規模拡大をひたすら追求(従業員が出世して役員に)、経営者と従業員の一体による石油ショックからの他国に比しての早期回復→国際的な経済優位による際限なき発展への期待→バブルへ、バブルによる企業の銀行からの資金調達不要に、銀行業務の変質、含み損「隠蔽」による各破綻、戦時中に作られた統制色の強い旧日本銀行法は1998年まで存続し日本の基本的な経済法であり続けた

  • ライフネット岩瀬さんの一年目の教科書に書いてあったので購入。自分が知らない歴史的背景などを色々勉強できてよかった。

  • 本書は、「戦後の日本経済は、千時期に確立された経済制度の上に築かれた」という著者の歴史観(1940年体制論)に沿って描かれた戦後日本経済史である。本書を読んで、その歴史像は概ね妥当であると感じた。元大蔵官僚としての著者の実体験によるエピソードも盛り込まれていて興味深かった。
    ただ、著者の私見が結構多く、なかでも、戦後日本の平等社会のコストとして、「戦後日本社会は、凡庸・低劣で俗悪極まりない大衆文化しか生み出せなかった」と主張しているが、これは完全に著者の偏見だと感じた。

  • 150509 中央図書館
    通産省は、敗戦直後、マッカーサーが乗り込んでくる前に、「軍需省」の看板をさっさと「商工省」に書き換えることで、占領下においても従前の人的体制で生き延びた。大蔵省は巧みな交渉で占領軍の軍票発行を阻止し、通貨発行権を守った。・・という二つのエピソードを冒頭に置き、戦時体制が、少なくとも経済官僚たちにとっては、そのまま戦後に接続して、高度経済成長に至った。(ただしバブル以降の崩壊予兆もそのときに内包することになった)との見立てを示す。
    野口自身が、通産省にも試験を受けに行って、佐橋や川原(『官僚たちの夏』の風越と鮎川)の面接を受けていたというのは、おもしろいエピソードだが、全体には、野口の自慢話のようなところもある。

  • 岩瀬大輔おすすめ

  • バブル崩壊、企業破綻のプロセスは分かりやすかった。

    筆者の経歴を考えると分からなくもないが、アメリカ、ヨーロッパに憧れすぎ。
    他の国も見て、もっと客観的に日本を考えるべき。
    こんな愚論こそ、日本を貶めている。

    日本はそこまで悲観的観測しかできないほどではないでしょ。
    戦後の日本文化を痛烈批判してるけど、それも間違っている。
    何も見えていない。

  • 比類なき高度成長を成し遂げ、石油ショックにも対処できた日本が、バブル崩壊以降、ジリ貧なのはなぜか?

  • 本書は、戦後の日本経済は戦時期に確立された経済制度の上に築かれた、とする歴史観を提示されている。戦時経済の中で、資金を軍需産業に集中させるために間接金融体制がとられた。終戦後、既得権益者の策略とアメリカの日本への無理解と中途半端な経済改革が、このシステムを生き残らさせた。これによって企業は資本の影響や市場の圧力から開放され(ある意味社会主義経済)、高度経済成長を担った。また、この統制力のあるシステムは石油ショックへの対応において優れたパフォーマンスを示し、このシステムの継続が助長された。一方で、1990年代以降の技術体系に本質的な変化(量から質)が生じ、このシステムは機能不全に陥った。依然、日本企業は閉鎖的であり、市場の要請が経営に影響を与えにくい状態が続いている。以上の認識を読者に示し、事の深刻さについて理解を求めているのが本書の意図。安易な解答は書かれず、冒頭に記載した歴史観を軸に事実を連ねられた良書だと思います。歴史を振り返りかえることによって日本人の典型的な思考体系を理解でき、新しい技術体系への適応について考えさせられる興味深い1冊。

  • 戦前の経済について何一つ知らない事に気付かされる

  • 予想以上の面白さ。間接主体の金融は、額面発行増資の時代に、利益、株価重視ではなく、トップライン重視になり、間接主体になったとの弁に納得。買ってもいい本。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

「2023年 『「超」整理手帳 スケジュール・シート スタンダード2024』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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