戦後日本経済史 (新潮選書)

著者 : 野口悠紀雄
  • 新潮社 (2008年1月1日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035968

作品紹介

奇跡的な高度成長を成し遂げ、石油ショックにも対応できた日本が、1990年代以降のグローバル化とITの活用に立ち遅れているのはなぜか?それは、第2次大戦中に構築された「戦時経済体制」が、現在も強固に継続しているからだ。「戦後は戦時と断絶された時代」という常識を否定し、「日本の戦後は戦時体制の上に築かれた」との新しい歴史観を提示する。

戦後日本経済史 (新潮選書)の感想・レビュー・書評

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  • ・仮にあなたが、高校卒の銀行員だったとしよう。出向先の地方銀行で定年を迎えようとしていた矢先に、中堅商社の社長になっている昔の上司から声がかかり、その会社に就職することができた。早朝から深夜まで粉骨砕身で働き続けたのが認められ、専務にまで取り立てられた。
    あるとき、社長が得体のしれない人物を連れてきた。会社の役員にするのだという。そして、その人物が手掛けている得体の知れない事業をあなたが担当するよう命じられた。あなたなら、それを断れるだろうか?(イトマン事件)

    ・なぜ山一だけが破綻したのか。営業特金(法人の資金を一任勘定で預かり、利回りを保証する。自由に売買できるので手数料は稼ぎ放題だった。)を行っていたのは山一だけではない。バブル崩壊によって巨額の損失が発生したことも各社共通の事情である。違ったのは、それへの対処法だ。
    原理的には、
    ①顧客先企業に損を含めて引き取ってもらう。
    ②顧客先企業に引き取ってもらうが、損失は証券会社が補てんする(法で禁じられてからは、訴訟を起こしてもらって裁判所主導で和解する形でこれを行った)。
    ③証券会社が引き取り、損失を償却する。
    ④引き取った後に簿外処理して隠蔽する。
    事が考えられる。大まかに言えば、野村証券は①を、大和と日興は②を中心として解消した。山一だけが④を選択したのである。つまり、各社とも同じ問題に直面し、山一以外の会社は何とかそれを表面化させて解消した。山一だけが、ひたすら隠蔽する事を選択したのである。これは、「経営不在」以外の何物でもない。

    ・集中排除法は当初325社を分割の対象として指定していたにも関わらず、実際に分割されたのは日本製鐵、三菱重工業、大日本麦酒、王子製紙などの10数社にとどまった。しかも、分割された企業のほとんどがその後合併して復活した。
    しばしば、「何がなされたか」より「何がなされなかったか」の方が重要である。とくに重要なのは、銀行業に対して集中排除法が適用されなかったことだ。戦後の日本の企業が、銀行を中心とした企業グループを形成したことはよく知られているが、これは、戦時中に作られた仕組みだった。また、中央省庁、マスメディア、教育制度、土地制度なども戦時体制が戦後に残った。そしてこれは戦前から継続されたものでは無い。だから高度成長は一般に信じられているように、戦後の経済民主化改革によってもたらされたのではないのだ。そしてこの戦中体制によって石油ショックへうまく対応できた(企業ごとの労組で賃金上昇圧力を抑えられた)事で、戦中体制が長く維持され、バブルで力尽きた。しかし、日本式経営と呼ばれるものの中に根強くその考えは残り、組織体は変革されていない。

  • たぶん5年くらい前に買った本をようやく読了。本が出たのは10年くらい前みたい。
    戦後日本の経済史を「戦時経済体制」をそのまま引き継いでいるとした本。戦時中に成長した企業が、戦時日本経済の中心となった。「戦後にできた企業はソニーとホンダだけ」。最後に、「日本は社会主義国家だ」とまで言っている。勉強になりました。

    キーワード:日本独特の大企業の資金調達=株式発行ではなく銀行融資(間接金融)、株式は銀行や一族等で保有する(資本と経営の分離/公的性格)、日本人の土地神話は株式投資する風習がなかったから(預金の投資対象が土地しかない)、株主に影響されない経営=経営者と従業員が一体で利益ではなく規模拡大をひたすら追求(従業員が出世して役員に)、経営者と従業員の一体による石油ショックからの他国に比しての早期回復→国際的な経済優位による際限なき発展への期待→バブルへ、バブルによる企業の銀行からの資金調達不要に、銀行業務の変質、含み損「隠蔽」による各破綻、戦時中に作られた統制色の強い旧日本銀行法は1998年まで存続し日本の基本的な経済法であり続けた

  • ライフネット岩瀬さんの一年目の教科書に書いてあったので購入。自分が知らない歴史的背景などを色々勉強できてよかった。

  • 本書は、「戦後の日本経済は、千時期に確立された経済制度の上に築かれた」という著者の歴史観(1940年体制論)に沿って描かれた戦後日本経済史である。本書を読んで、その歴史像は概ね妥当であると感じた。元大蔵官僚としての著者の実体験によるエピソードも盛り込まれていて興味深かった。
    ただ、著者の私見が結構多く、なかでも、戦後日本の平等社会のコストとして、「戦後日本社会は、凡庸・低劣で俗悪極まりない大衆文化しか生み出せなかった」と主張しているが、これは完全に著者の偏見だと感じた。

  • 岩瀬大輔おすすめ

  • バブル崩壊、企業破綻のプロセスは分かりやすかった。

    筆者の経歴を考えると分からなくもないが、アメリカ、ヨーロッパに憧れすぎ。
    他の国も見て、もっと客観的に日本を考えるべき。
    こんな愚論こそ、日本を貶めている。

    日本はそこまで悲観的観測しかできないほどではないでしょ。
    戦後の日本文化を痛烈批判してるけど、それも間違っている。
    何も見えていない。

  • 比類なき高度成長を成し遂げ、石油ショックにも対処できた日本が、バブル崩壊以降、ジリ貧なのはなぜか?

  • 本書は、戦後の日本経済は戦時期に確立された経済制度の上に築かれた、とする歴史観を提示されている。戦時経済の中で、資金を軍需産業に集中させるために間接金融体制がとられた。終戦後、既得権益者の策略とアメリカの日本への無理解と中途半端な経済改革が、このシステムを生き残らさせた。これによって企業は資本の影響や市場の圧力から開放され(ある意味社会主義経済)、高度経済成長を担った。また、この統制力のあるシステムは石油ショックへの対応において優れたパフォーマンスを示し、このシステムの継続が助長された。一方で、1990年代以降の技術体系に本質的な変化(量から質)が生じ、このシステムは機能不全に陥った。依然、日本企業は閉鎖的であり、市場の要請が経営に影響を与えにくい状態が続いている。以上の認識を読者に示し、事の深刻さについて理解を求めているのが本書の意図。安易な解答は書かれず、冒頭に記載した歴史観を軸に事実を連ねられた良書だと思います。歴史を振り返りかえることによって日本人の典型的な思考体系を理解でき、新しい技術体系への適応について考えさせられる興味深い1冊。

  • 戦前の経済について何一つ知らない事に気付かされる

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