団地の時代 (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 169
感想 : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036576

作品紹介・あらすじ

高度成長期に先進的な住まいとして憧れの的だった「団地」。その輝かしい歴史と老朽化した現在、ニュータウンやマンションとの比較、団地文化が花開いた西武沿線と一戸建て中心の東急沿線…さまざまな対照から浮かび上がるのは、戦後日本の姿と、少子化・高齢化社会の未来だった。「住まい」や「沿線」を見つめ続ける政治学者と作家による熱い思いに満ちた対話。

感想・レビュー・書評

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  • 政治学者と作家による団地をテーマにした対談本。自身の体験に始まり、地理や政治、そして文化など、様々な観点から団地の歴史を語っていく。

    この手の対談本のいいところは、話題の種類が豊富ということである。団地の好きな二人が語り合うため、話があっちこちに飛び、団地そのものだけでなく周囲の文化にも話が及ぶ。おかげで団地がもてはやされた時代の雰囲気が少し分かる気がする。

    一方で体系的にまとめようとして話しているわけではないから、団地と直接は関係のない話が続くことも多いし、特定の地域の話に終始することもある。団地情報の密度という点では薄い本だと言える。

  • 両対談者は私の11コ上にあたる。私は彼らが体験したような団地の全盛期とはずれているが、ここに取り上げられた話を読むと、私も団地の時代の末流だと感じる。いくばくかの共同体志向があり、団地左翼でもあり、バスで駅まで通い、移動販売も来たり、芝生や植樹の緑を当たり前に享受して、丹沢の眺めを見て育った。小中では一戸建ての子も多かった点は、ニュータウンに比べて捻りも入っていたろう。

    育った団地の今後は気になるなぁ。

  • 1950~1970年代の日本の団地、あるいは団地文化は唯一無二で今後二度と出現しないだろう。
    同じコンクリート製の集合住宅であっても、今のマンションとはちょっと違う。
    いわゆる街づくりなのだ。それまでの歴史から独立した自由で便利なニュータウンが団地だった。しかも、ほとんどが小さな子どもがいる同年代で、収入もほとんど同じ画一的な家族が入居している。
    団地の構造・構成は、その頃強い影響力を持っていたソ連の社会主義の影響を受けており、民間でなく、公営の住環境の提供という、最も成功した社会主義国と言われる日本の面目躍如たる側面だろう。資本主義であるがゆえに、社会主義勢力の批判を意識したと考えられる。
    筆者らは、団地の住人が革新勢力として東京の美濃部革新都政を支えた、画一的な思考が形成された等の考察を行っている。確かにあるかもしれない。総中流社会の形成にも一役買っていた可能性もある。

    当初の団地は、水洗トイレの完備や最新電気製品の生活への憧れから、最先端の住環境であり、新婚の皇太子夫妻や現役の佐藤栄作首相が見学に訪れるほどであったことは、驚きだった。外国の要人にも自慢して見せていたらしいが、そのときに「日本人の住居はウサギ小屋のようだ」という名言?が出たらしい。

    今となっては、間取りの狭さや当時のように旺盛な住宅需要はないことから、高齢化が進む一方であるが、家賃の安さ等から外国人が多く入居する状況もあるようだ。
    団地を作っているときには、建て替えずに何年持つか、とか高齢化が進んだらどうなるかとかは、全く考えていなかったろう。
    ある意味、日本全体が「今」が永遠に続くであろうという「夢」を見ることができた時代だったのかもしれない。あるいは、「終戦」の最悪の状況から抜け出す努力でそれどころでなく、一段落して目先の満足に飛びつくことに忙しかった時代かもしれない。

    最近、日本のデベロパーが東南アジア(マレーシアやベトナム、カンボジア)でニュータウンづくりをしているが、同じ「夢の住居」であっても、当時の日本の団地よりも商売の性格の強いマンションに近い気がする。香港の住宅政策は官主導の団地の匂いがするが、高層住宅群の風景は、画一的な公園や緑のある日本の団地の風景とはちょっと違う。当時の日本の団地とは微妙に違うのだ。

  • 本書は、いわゆる団地について、その来し方行く末を団地にゆかりのある識者の2人が対談形式で論じていくもの。団地がどのような背景で作られ、現在どのような課題があり、将来的にはどうなっていくのかが語られる構成がまずもっておもしろいと思いました。しかし、両者は団地を主として現在のURが建設したものと捉えている点が非常に気になるところであり、公営住宅団地も戦後の住宅不足に貢献してきた歴史があろうと思われるのに、公営住宅にはほとんど触れられていないのは残念でした。

  • 東京郊外で育った政治学者と、西日本から上京した作家が団地を語る。

    かつて団地は憧れであり、天皇陛下がひばりが丘団地の視察もした、というのが印象的。今だと団地はあまりイメージが良くないですが、イメージというのは変わるものですね。今はやりのタマワンのイメージも、きっと数十年たったら変わるのでしょうね。50-60年代、団地は憧れの存在で、その要因の1つは水洗トイレだそうです。

  • 合併だってある面、街の建て替えみたいなものじゃないですか 阪急は何に一番力を入れたかっていうと、エスカレーターやエレベーター、スロープの設置などのバリアフリー化と、自動改札やラガールカードの導入などの自動化カード化なわけですね コミュニケーションに支えられているまなざしは「見守り」になるけど、機械に任せると「見張り」になると思うんですよね

  • 150801 中央図書館
    結局のところ、鉄ちゃん同士の少年時代の思い出談義の会話がメインになっているかな。沿線別の特色なぞ、いわれずともわかる。団地の原風景を懐かしむにはよかろうが。

  • <目次>
    まえがき
    対話の前に 重松清はなぜ『滝山コミューン一九七四』に嫉妬したのか
    対話Ⅰ   東京の団地っ子と「非・東京」の社宅の子
    対話Ⅱ   団地の西武、一戸建ての東急
    対話Ⅲ   左翼と団地妻
    対話Ⅳ   団地と西武が甦る時
    あとがき

    <内容>
    近代政治史の原武史が同年代の作家の重松清との対談。1970年代の団地をキーワードに(原は東京都東久留米にあった「滝山団地」で小学校時代を過ごした)、現代の社会を語っていく。
    面白かったのは、団地のコミュニティの問題と鉄道による思想の違い〈西武と東急という形で紹介されている)。さらに「団地」と民間「マンション」の違い。そこにはコミュニティがあるかないか、プライバシーの濃淡、などの違いが見えること。さらに70年代までに開発された「団地」と80年代以降総合的に開発された「ニュータウン」の比較。バス利用か車かの違いが、町の形成に大きな違いを生んだなど、面白い見解が次々と出てくる。また、団地の再生に話しでも、建て替えるよりも悪いところだけを直していくスタイルの方がいいとか、古い分家賃が安くなると若者が入居して、新しい風が吹いてくることか、団地の従来のコミュニティは「孤独死」を防げるのではないか、なども参考になるのでは…。発刊から5年もたっているので、参考にする人はとっくに参考にしていると思いますが。
    それにしても、自分も小学校低学年で経験していた「団地」も歴史や社会学の研究ジャンルになることに驚いた。

  • 少年時代の思い出を大人に成長してからの視点で検証する。

  • 原武史『レッドアローとスターハウス』『団地の空間政治学』からそんなに変わらない印象で、図書館で借りるので済ませて良かったとは思うものの、対談を通すことで割と瑣末なことだったり、読者として踏み込みたかったことだったりが載っていたのはよい収穫だった。

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著者プロフィール

原武史(はら・たけし)
1962年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。山梨学院大学、明治学院大学を経て、現在、放送大学教授、明治学院大学名誉教授。専門は日本政治思想史。『「民都」大阪対「帝都」東京』(講談社)でサントリー学芸賞、『大正天皇』(朝日新聞社)で毎日出版文化賞、『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞。ほかに『〈出雲〉という思想』、『可視化された帝国』、『皇居前広場』、『団地の空間政治学』、『レッドアローとスターハウス』、『皇后考』、『「昭和天皇実録」を読む』、『平成の終焉』、『 〈女帝〉 の日本史』、『地形の思想史』、『「線」の思考』、『一日一考 日本の政治 』など著書多数。

「2021年 『最終列車』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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