科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036958

作品紹介・あらすじ

世界に君臨する二大科学誌「ネイチャー」「サイエンス」を舞台に、科学者たちは国家の興亡を賭けて、熾烈なる競争を繰り広げてきた。なぜ米国が「科学の覇権」を握ったのか?一流科学者が嵌った盗用・捏造・擬似科学の罠とは?福島原発事故を世界の科学者はどう見ているのか?知られざる"科学戦争"の最前線から、科学立国ニッポンの未来を読みとく。

感想・レビュー・書評

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  • jpn 日本

  • 2016/02/15

    The winner takes all
    ロングテール

    ダークレディ: ロザリンド・フランクリン

  • サクッと読める本。
    ネイチャーとサイエンスで比較するとこんな違うのかーと改めて実感。
    ちなみに私はネイチャー派。
    ネイチャーダイジェストは愛読してます。自分の専門分野以外とか、科学関連のニュースなんかも分かりやすく楽しく読めるから。

    高校生向けのネイチャーダイジェストとかあったら、もっと科学に興味持つ学生が増えるんじゃなかろうかとか思った。
    あと、女子向けとか。
    作るの楽しそう。

    エネルギー問題もグループワーク的なもので勉強したから親近感あったな。
    超電導の先生とかも概ね同じようなこと言ってたけど、風力発電に携わる先生はもっと現実的に前向きだったような。。。

  • 著者はこの本で「文系の一般読者でも読めるように書いている」とし、「科学好きが少しでも増えますように!」と結んでいるけど、十分読めるし、楽しめます。
    最近敷居の高くない科学の本を何冊か読んでくうちに好きになりつつあるなぁ。専門的なことも少しだけかじれるし。科学を定期的に学んで行こうという気になります。

    お国柄からネイチャーとサイエンスとか、ノーベル賞の受賞傾向の分析とかをしてる。

    今の仕事に系統立てたものの考え方が必須だし、今までどんだけそういうことしてこなかったんだ自分、と思うと同時に、そういうことができる人が多い理系の皆様に敬意を表したいですね。

    ・科学技術やエネルギーという土台の上で政治や経済が動くことを知っているアメリカ⇔短期的な視野で、世界から見ると宝である科学技術を捨ててしまう日本
    ・日本の強みは常に安くて品質のいい製品を作ることだった
    ・ノーベル賞は1分野につき受賞できるのは3人まで。というのが悲劇を生んでいる
    ・アンドレガイムはノーベル賞とイグノーベル賞を同時に受賞している。研究時間の10%は役に立つかわからないが、好きなものの研究らしい。(似てることをしてるIT企業を聞いたことがあります。)
    ・原発利権を叫ぶ団体と事故報道によってまともな議論が阻害されてきた
    ・火力や原子力は濃いエネルギー(原子力の燃料は薄いけどね)だが、太陽光や風力は薄いエネルギー
    ・酸素は本来毒
    ・地軸の傾きが23.4度。これが四季を生んでいる
    ・科学と工学は、両方物理や数学などを用いるが、境目は探求か実際的な目的か。でもこれらを使って人間よりはるかに大きなものを認識しようとするところが人間のよいところ。
    ・科学が社会の外にあるかのような議論がマスコミでされてる。最終判断は自己責任(at your own risk)でしなきゃね。
    ・悪いときだけ批判するのはバランスがとれていない

    最後に。「ある分野のエキスパートとは、その分野で何回失敗しているかだ」。この言葉とても好きです。

  • 【読書中のコメント】2012/11/15
    昨日読み始めた。同じ著者の「ネイチャーを英語で読む」を読んだので、今度はどんな違いがあるのか期待。現代日本の教育への提言とかだろうか。

  • 俗世と科学

    以前、理系と文系の比較を書いていた著者で、その新書の感想も書きたい放題書いたけど笑
    本書もはじめから首を傾げる所が多々あったにも関わらず、読んでしまった。
    おそらくこの手の本を私が他に知らないためだろう。

    ともかく、
    本書はネイチャーとサイエンスの比較、科学誌の(いい意味ではない)事件、日本世論と科学の付き合い方の3本構成。
    色々突っ込みどころはあるものの(比較する時代が異なっている、とか。南方を持ち上げて種明かしで落とす、とか。)、読みやすくてよかった。
    こういう専門分野を分かり易く書くってありがたい!著者としては大変かもしれないが。
    科学誌を揺るがす大発見(理論の発見ももちろん含む)は意外にも前述二誌以外が結構あったり、ピアレビューがダメダメでも編集部の独断で載せたものが大穴だったり、学問の世界も理論通りには行かない。
    もちろん、システムとして整備するのは大事だけど、そのシステムを構成するのは人だからセオリー通りに行かないことは多々ある訳で、当たり前な訳で。
    そういう「例外」も科学のカンフル剤の一つなんだろう(広い意味で捉えると)。

  •  科学に興味のある人はもちろん、科学嫌いの方にも是非読んでもらいたい一冊です。難しい数式はなく、平易な文章で書かれていますので、読みやすかったです。

     本書は世界を代表する2大科学雑誌「ネイチャー」と「サイエンス」の比較を通じて、科学を正しく、わかりやすく伝えるということの重要性を問いかけているように思えます。特に東北大震災後の原発事故の報道や、トンデモさんのデマを見ると強く感じます。

     トンデモさんといえば、本書でも疑似科学の話題にも触れています。筆者は「人類の科学レベルでは解明できないことは無数にある。超能力や超常現象だって、100年後には反証可能となり、ふつうの能力や現象として、学校で科学の時間に教わるようになるかもしれない。」と述べています。確かに科学で解明できないことはありますが、疑似科学の多くは、ちゃんとした論理の組立もなく、ずさんな実験方法が多いので、100年後に反証可能となることはないでしょう。

     疑似科学は論文として掲載されるだけならまだいいですが、多くの疑似科学は、本やネットを通じて伝わり、詐欺まがいのことや健康被害といった社会問題になりやすいのです。疑似科学ではこういう問題が起こりやすいので、私は筆者ほど寛容にはなれません。
     

  • 日本では科学雑誌はあまりメジャーではないけれど、英国では「ネイチャー」は商業誌として十分に成り立っているし、「サイエンス」を発行している米国では科学に対する信仰が厚いそうだ。

    それに比べると、日本は科学の恩恵を十分に受けているものの、あまり科学に対しての信仰は熱くないし、科学リテラシーは高くないだろう。資源のなく、科学や技術を磨くしかない日本にとっては、日頃から興味をもっていけないだろうな。

    原発と科学にも、言及をしていて、納得することが多かった。科学の借りは科学で返さないとね。

  • 凄く読みやすい文章。雑学の宝庫でもありました。

  • ・第Ⅰ部…ネイチャーとサイエンスの違い
    ・第Ⅱ部…2誌を巻き込んだ科学史上の事件
    ・第Ⅲ部…日本の科学のあるべき姿とは
    ・特別鼎談…(天文学)中川貴雄・(生物学)中垣俊之・著者

    「新潮45」に連載された「科学の興亡 ネイチャーVS.サイエンス」を加筆修正したもの。メッセージ性の強い書名で少し腰が引けてしまうが、実際のところ評論と言うより科学エッセイに近い。
    読者自身に科学的な視点で物事を考えてもらうことを目標に据え、常に中立的立場から率直な物言いがなされているところが評価できる。

    私は幼少時代に「子供の科学」を買い与えられていたものの、結局ほとんど手をつけなかったような科学嫌いだが、本書は抵抗なく読めた。全篇を通じて科学ネタが満載で、「実現可能なタイムマシン」や「粘菌レーダー」の件には興味をそそられた。また、鼎談で生の研究者の声を聞けるのもよい。「科学は(もしくは自分の研究は)何の役に立つか?」という問いに対する各人の回答が興味深い。
    本書の白眉は、2誌の違いを歴史から運営方針まで丁寧に解説した第Ⅰ部だと思う。私は仕事上「ネイチャー」や「サイエンス」を扱うが2誌の違いはわからなかったので、第Ⅰ部は非常に役立った。第Ⅰ部・第Ⅱ部は、とくに理系学生に強くお薦めしたい。

    <メモ>
    『ネイチャー』
    英・商業誌
    発行元:出版大手のマクラミン社→独・ホルツブリンク社(サイエンティフィック・アメリカン誌の親会社)の傘下へ
    編集長:個性的
    特色:批判的主張やニュース記事など、ジャーナリズム色が強い
       日本語コンテンツ→ネイチャー・ジャパン社「ネイチャー月刊ダイジェスト」
    態度:寛容・余裕

    『サイエンス』
    米・会員誌→同人誌的色彩
    発行元:科学振興団体のAAAS
    編集長:優等生
    特色:アメリカの科学政策を導くという壮大な理念
    態度:合理性

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著者プロフィール

たけうち・かおる サイエンス作家。1960年生まれ。東京大学教養学部教養学科、同大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻、理学博士)。フリースクール「YES International School」校長も務める。著書に『99・9%は仮説』(光文社新書)、訳書に『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ポール・ナース著、ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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