日露戦争、資金調達の戦い (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106036996

作品紹介・あらすじ

「戦費調達」の絶対使命を帯び欧米に向かった高橋是清と深井英五。彼らを待ち受けていたのは、金本位制を元に為替レースを安定させ急速に進化した20世紀初頭の国際金融市場であった。未だ二流の日本国債発行を二人はいかに可能にしたのか?当時の証券価格の動きをたどることで外債募集譚を詳細に再現し、全く新たな日露戦争像を示す-金融版「坂の上の雲」。

感想・レビュー・書評

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  • 金融史を学びたく手に取った一冊だが、長編と言う事で読み始めるまでに時間がかかっていた。しかし、読み始めるととてつもなく面白く一気に読み切ってしまった。戦争をするためには資金が必要で、新興国日本が資金調達のため奔走し、日露戦争後には先進国の仲間入りを果たしていく姿は、明治と言う激動の時代を感じる。今ではなくなった金本位制が先進国の証だったり、国を超えた人とのリレーションが世界を動かして行くと言った世界観が日露戦争の裏側では存在していた。

  • すげえ面白かった。日露戦争における資金調達の模様を、当時日銀副総裁としてロンドンで実際に調達に奔走した高橋是清の動きを中心に紐解いていく。当時の国際金融市場の様子、日本の立ち位置、いかにして絶望的な状況から資金調達に成功し日露戦争勝利へ向かっていくのか、証券価格の推移と戦況を絡めてリアリティのある考察がなされている。具体的なお金の動きが絡むとすごく物事がビビットになるんやなと思った。単純に現存する資料をまとめているに留まらず、時節筆者の鋭い推論が展開されてて歴史の解釈ってのはこういうもんなのかと感心した。一流の登場人物たちはそれぞれ魅力的だが、ユニークな経歴と高いリレーション能力で日本の土台(資金)を土壇場で支えた高橋是清にはもっと辿りたい興味が湧いた。

  • 戦争するのってめちゃくちゃお金がかかる。銃弾一発もタダではない。当時の日本は明らかに資金不足で戦争を続けるには外国からの外貨調達が必須だった。政府から命じられて欧米に向かった高橋是清氏と深井英五氏。日本の財政事情に止まらず、英ポンド中心の国際金融市場、ユダヤ人たちの思い、モルガン家の勃興など様々な視点から全く新たな日露戦争像を示す、金融版「坂の上の雲」。最後までドキドキしっぱなしで読み応え抜群の良書。

  • 名著すぎる。日本の財政事情に止まらず、英ポンド中心の国際金融市場、ユダヤ人たちの思い、モルガン家の勃興などなど、視点はとても広く、日本の立ち位置がとてもよく分かる。当時の時代の空気感が、市況データ、手記、電報、内外の新聞記事をもとに丁寧に描かれていて、資金調達なんていう一見味気ない切り口ながら、日露英米の人間模様が生々しく炙り出されている。もっと早く読めばよかったー!

  • 【「坂の上」までの物入り】日本にとっては文字通りの総力を費やすこととなった日露戦争。しかし、工業化も道半ばの日本にとって、もっとも重要な「金」の工面の見通しが立たなかったことから、高橋是清と深井英五は欧米バンカーとの交渉を通じて日本国債の発行を行うよう政府から指令を受ける。いかにして彼らは魅力に乏しかった日本国債の市場を開拓していったのか。金融という新鮮な観点から、日露戦争を鋭く切り取った話題の一冊です。著者は、投資顧問会社を2006年に設立した板谷敏彦。


    名著。戦地からはほど遠い国債金融市場を舞台として繰り広げられたもう一つの熱い(されど極めて静かな)戦いに、読者の知的好奇心がぐらぐら揺さぶられること間違いなし。しっかりと20世紀初頭の国債金融がどのような状況にあったかまでも記述されていますので、読んでいて置いてけぼりを喰らうようなこともないかと。かなりの大著ですが、その厚みが120%意味を持つものですので、ぜひ手に取って読んでいただきたい作品です。


    著者が高橋是清の公債募集談から汲み取った3点の教訓はまことに明確でありながら、同時に見落とされがちな点として顧みておく必要が十分にあるものだと思います(この教訓は本書を読み進めると本当になるほどと思わざるを得ません)。歴史についての新たな視点が獲得でき、国債金融に関する知識も身に付く、それでいて単純に面白い人間ドラマも味わえるというのですから、こういう本を名著と言わずしてなんと呼べばいいのでしょう。

    〜東京市場での株式の暴騰ぶりとロンドン市場での公債価格の変化を比べれば、日本国民の戦勝に対する価値判断が欧州の金融市場と少し乖離し始めた状態が見てとれる。これまでバルチック艦隊に圧迫されていた日本の世論が明らかに増長し始めていたのである。〜

    ☆10があれば☆10にしたい☆5つ

  • めちゃくちゃ面白かった。そしてすごい勉強になった。日露戦争はホントに奥深い。

    ・日露戦争近くの頃、ロシアのGDPは日本の3倍だったが、1人あたりGDPは日本と略同水準。
    ・日本の金本位制導入後の初めての外債発行は失敗だった、IR不足、リスクプレミアムの不足、有力マーチャントバンクに頼ってなかったこと等。
    ・東京、ロンドン、NY、何も金融は狭い所で営業していたが、昔は証券の受渡しが手渡しだったから。
    ・19世紀のイギリス、シティではなくもっと狭い「ロンバード街」
    ・19世紀のイギリスの発展は、中産階級の増加で民間資本が形成→銀行を通して産業資本として貸出に回った。
    ・金本位制はデフレ、金の供給量が限られるから。
    ・ヤコブ・シフ(クーンローブ商会)は、日露戦争の戦費調達で日本(高橋是清)の救世主。
    ・日露戦争は、黄色人種且つ非キリスト教徒のアジアの国が白人キリスト教国と堂々と戦う初めて(?)の戦争
    ・日露戦争当時、先進国は期待収益率が低下→新興国、日本は有力な投資対象先。
    憲法と議会を持つ立憲君主制、金本位制、教育制度の急速な整備、産業が少し興りはじめた日本は良い投資対象国。
    ・日露戦争が発生直後、ロシアの公債利回り下落/日本の公債利回り上昇→ロシアが勝つ予想。
    ・日本は戦費調達の目処が立たないうちに開戦。
    ・ロシアは当時、アレクサンドルⅢ世、ニコライ2世、国内の不満をそらす為にユダヤ人を迫害→多くのユダヤ人がアメリカに逃避(ポグロム)。
    ・ロシアは開戦前にすでに多額の借金、42億ルーブル、うち3/4がフランスからの借入。
    ・8億ルーブルの見積り。日本の国家予算3億ルーブル、ロシアの国家予算20億ルーブル。
    ・陸軍の戦費は12.8億円、海軍の戦費は2.3億円
    ・日露戦争の資金調達に協力した金融機関やバンカーには、勲一等〜勲三等瑞宝章等が与えられた。
    ・血の日曜日事件は、日露戦争のなかでも特に大きなターニングポイント。
    ・奉天会戦後、日本は資金調達ができるが、ロシアは困難となっていった。日本公債の利回り低下
    ・仏と露は開戦前は関係良好だったが、奉天会戦後は、露へのファイナンスを仏がやめた。
    ・奉天会戦後、公債利回り上昇、「東株」も軟化、但し戦争銘柄の日本郵船、鐘紡は上昇。
    ・鉄道抵当法案成立し、兜町は外国語話せる外務員の需要高まる。
    ・バルチック艦隊が勝つと、東株急上昇、日本公債の利回り急落。
    ・ポーツマス条約、小村寿太郎-ウィッテ、日本は賠償金取れず、外交上では露の大勝利と報じられる。
    ・日本は天候不順等で米が不作だと、外米を輸入→正貨流出の恐れがあった。
    ・戦後の整理公債の発行条件が良くて4%.無担保、日本は一流国の末席に仲間入り。
    ・南満州鉄道の株主は、ポーツマス条約で日本と清だけに限定。桂ハリマン覚書は破棄された。株主は実際、100%日本人。
    ・日露戦後、東株はバブルに49円→318円




    レベルストーク卿ベアリング商会、ボーア戦争、ノーザンパシフィック、クーンローブ商会ヤコブ・シフ、末松謙澄、金子謙太郎、クレディ・リヨネ、深井英五、血の日曜日事件、ポリシェヴィキ、マカロフ、ヘンリー・ラミー・ビートン、アーネスト・カッセル卿、黒木為禎、クロパトキン、奥保鞏、HSBCキャメロン卿、パーズ銀行、ハル事件、奉天会戦、大山巌、児玉源太郎、乃木希典、山縣有朋、マックス・ウォーバーグ(ドイツ)、ウィッテ、鈴木久五郎、呉錦堂、麦小鼓、ポチョムキン号、徳富蘇峰、桂ハリマン覚書、後藤新平、

  • 高橋是清自伝によると日露戦争開戦前の戦費の見積もりは4億5千万円だった。戦前の1903年の一般会計歳出は2億5千万円程度、当時の銀行預金残高は7億6千万円ほどである。日露戦争臨時軍事費特別会計の決算額収入17億余りの内外国債で6億9千万、内国債で4億3千万を調達している。金本位制度を守ることは外国で公債発行をするための必須条件であり、例え内国債の発効であっても裏付けとなる準備金つまり金かあるいは金と等価とされるポンドを持ってなければならない。日清戦争を例にとると戦費の1/3が外国に流出しているので同じ比率だと当初の見込みでも1億5千万が流出する。当時の日銀所有正貨は1億1700万円で開戦時に正貨として持てる余力は5200万従って流出分の不足1億円だけではなく準備金も必要になる。政府は開戦前にポンド建て外債2千万ポンド(2億円)の募集枠を閣議決定し、高橋をロンドンに派遣した。

    1900年の国力の比較では人口、GDP、日露戦争当初予算のいずれもロシアは日本の3倍程度で、一人当たりGDPではほぼ並んでいた。日露戦争に関わる諸国の実質GDP/一人当たりGDP(億$)はアメリカ3125/40、イギリス1849/45、ドイツ1623/30、フランス1167/29、ロシア1540/12、日本520/12、中国2182/5であり、ロシアとフランスが同盟関係でイギリスとドイツはロシアを警戒、日英同盟はあるが日露戦争に対してはイギリスは中立、アメリカと日本も当時は比較的良好な関係で英米は微妙だ。清朝の弱体化でロシアは沿海州を取得し、不凍港の旅順を租借し東清鉄道と南満州鉄道の敷設権を手に入れ沿線都市を植民地化していった。日本がロシアの満州権益を認める代わりにロシアは日本の朝鮮半島の権益を認めるよう申し入れるがロシアは相手にせず、アメリカとイギリスは満州権益の門戸開放を求めていた。元々の日露戦争の目的からするとすでに勢力化に置いていた朝鮮半島の確保だったはすで、欲を出して満州鉄道をロシアに成り代わり支配しようとしたことが後の第二次大戦につながっていく。満州人からするとロシアも日本も欧米も迷惑なことには変わりないが清朝はもはや力を持たない。

    ちなみに支出の裏付けでは陸軍が12億8300万円に対し海軍2億2500万円となっていて陸軍が進出するほど財政的には破綻が近づく。公債価格の動きは戦争継続で売り、短期講和で買いとなっていて日本の局地戦の勝利はあまり影響していない。ただしロシア公債価格は下がっていく。

    高橋は第一回の公債発行に苦慮していたがそれを助けたのがクーン・ローブ商会のヤコブ・シフでユダヤ人を迫害するロシアに対しこれまでロシアのファイナンスに協力してきたが一向に改善されずならば日本に協力してロシアを弱体化させる方がましだと開戦前に日本の公債引き受けを密かに決めている。それでも開戦直前の日本公債発行が実施できるかは危ぶまれており、ジャンク債同様だったのでシフも慈善活動をするつもりはない。日本が有利になりそうならそこで恩を売るというのがシフの計算だった様だ。3月31日に高橋がロンドンに到着後一旦公債発行を諦めた高橋が4月22日にイギリスの銀行家カッセル卿配下のビートンに合い「もしも日本が、海戦同様陸上戦でも敵を打ち負かす決心なら、その時まで待った方がいい、ただし待ってる間にもチャンスには備えておるべきだが」と言う手記を残している。公債発行の目論見書準備には時間がかかる。そして24日に公債発行を決意し、26日に銀行団が6%、償還7年、1000万ポンドの部分発行という案を提出しよく27日に政府に打電した。4月30日に鴨緑江の戦いに日本軍が勝ち、政府からは5月2日に条件改善要求が届く。そして3日に晩餐会で高橋はシフに引き合わされた。クーン・ローブ商会の公債参加表明が翌4日なので、シフからすれば鴨緑江の勝利でようやく参加条件に見合う物になったと言える。

    日本の公債利回りは3/31の6.43%からこの勝利で5%台にやや下がったがそれでもロシア公債の4.3%に対して1%以上のスプレッドがついており6/16に一旦0.76%と縮めたが203高地攻略に失敗した10月中旬には1.34%にまで拡がり、旅順要塞攻略に成功した12月末でもまだ0.74%ついている。スプレッドをオッズに例えるとロシアの人気の方がまだ高く、欧米投資家にとっての日本はハイリスク商品のままだった。

    ロシアが売られるきっかけはバルチック艦隊がイギリス近くの北海でにわとり艦隊というイギリスの漁船団を砲撃したハル事件から、日本の幻の水雷艇におびえ戦艦アリョールだけで500発の砲弾を発射し漁船1隻を撃沈し5艘が中破で2名が死亡し6名が負傷した。またこの時誤爆により巡洋艦2隻が被弾し1名が死亡し、数名の負傷者を出している。ついでニコライ二世がデモ隊を武力鎮圧した血の日曜日事件でさらに売られ3月にはとうとうスプレッドがなくなった。3/10の奉天会戦に勝った後も日本国債は売られ投資家の興味はいつ講和するかに移っている。バルチック艦隊は10/15に出航してからわざわざ近海運行用で船足の遅い艦船を随伴させ、マダガスカルで2ヶ月カムラン湾でも3週間停泊し5月末の日本海海戦に現れた。艦隊行動をとるにも遅い艦に合わせることになり敵前回頭がなくてもバルチック艦隊に勝ち目は薄かった様だ。

    ポーツマス講和については「歴史を変えた外交交渉」に詳しく描かれておりロシアのウィッテの見事な交渉と小村寿太郎の決断で賠償金請求と占領していた樺太の北半分を放棄したが戦争の当初目標は全て達成している。しかし旅順攻略の犠牲と多額の戦費をかけたことが満州鉄道で元を取るという発想につながってしまう。高橋はアメリカの鉄道王ハリマンを満州鉄道の経営に引き込むつもりだったが果たされず、ハリマンの娘婿ウィラード・ストレイトが働きかけ桂・タフト密約(アメリカが朝鮮権益を認める代わりに日本はフィリピンには手を出さない)は事実上反古にされる。ポーツマス講和を主導したローズヴェルト大統領はパナマ運河完成までは太平洋で日本を事を構えるつもりはなく満州の門戸開放がされていればまた違った歴史になっていたかも知れない。この辺りは「日米衝突の萌芽」に詳しく描かれている。

    後のデフレ退治でリフレ派がモデルとして讃える高橋是清だが日露戦争当時は財政均衡を重視している。緊急時には禁じ手も辞さないでモラトリアムや金本位制からの脱退もやったがリフレ策の後は軍事費の削減に動いたのが原因で暗殺されてしまった。日露戦争後の軍事費と国債費は一般会計歳出のそれぞれ30%で6割が固定されている。平成22年の国債費は約21兆円、社会保障費が約27兆と一般会計92兆の半分を占める。それでも日露戦争後の政府債務のGDP比率は60%ほどと1995年くらいの水準で第一次大戦の輸出ブームで解決した。第二次大戦後のGDP比率は350%を超えたがこれは厳しいインフレによって解消された。2014年の対GDP比は230%を超えた。これを日本国民の貯金だという人がいるがどうだろう?

  • 日露戦争の際の資金調達に関して、当時日銀副総裁であった高橋是清とそれに随行した深井英五の活躍は多くの人が知るところだが、『是清自伝』などの記述には曖昧で不明な部分も多い。とくに高橋とユダヤ人資本家ヤコブ・シフとの関係はよくわかっていなかった。

    本書は先行研究に依拠しながらも、シフをはじめとする欧米のバンカー達の立ち位置や考え方にも多く言及し、当時の国際的金融市場の中でこの日露戦費調達がどのような形でおこなわれたのか、またそれが日本にとってどのような意味を持ったのかを丁寧に、かつスリリングに叙述している。複雑でわかりにくい部分も図表を多用しながら解説しているので、初心者にもとっつきやすいのではないだろうか。

    今さらながらオススメである。

  • 日露戦争と言えば坂の上の雲のイメージしか持ってない人は読んでおかないとダメといえるテーマ。
    戦争といえば兵隊の話ばかりが目立つがお金がないと話は始まらない。近代戦は以前より格段にお金が重要になるのだが、当時の日本は生産力も資源も不足していたので外貨がなければ戦争どころか国家の維持すら困難。そんな日本政府(高橋是清)が金融面でどのように立ち回っていたのかを当時の資料や状況を調べて書かれている本でした。
    特に当時の国際金融市場の変動から国際社会は日露戦争の行方をどのように見ていたのかを推察しているのは興味深かったです。

    明らかに国力を越えた借り入れをしているのだが、それを公表してしまうと必要な借り入れが行えないので民衆の加熱を抑えることが出来なかったジレンマが和平交渉での失態とあいまってgdgdになる様などを思うと歴史をいろいろな視点から学ぶ必要性をあらためて感じる。

  • 高橋是清による日露戦争時の海外公債発行の模様について、当人の自叙伝や世の中に広まった「通説」によらず、複数の資料を基に、著者が真実と考えるところが書かれている。高橋の苦労話だけでなく、当時のファイナンスの中心であるロンドンやニューヨークの金融プレイヤーの実態なども分かりやすく紹介されていて、興味深い。
    それにしても、国を運営するというのは大変だ。今よりもずっと非民主的だと思われる明治時代においても、正貨が足りないから悪条件でも起債しなければならないのに、新聞には条件が悪いと書かれ、だからといって、資金不足の実態をさらけ出せば、ますます資金が集まらなくなって条件が悪化したり、戦争を止められなかったりする。そんな国民の不満を浴びながら、国の置かれた条件の下でベストを尽くすという明治の男は、高橋にしろ、小村寿太郎にしろ、みんな偉いなと改めて思う。
    また、本書のメインではないが、あの児玉源太郎が、満州に関しては満鉄を使った植民地経営を志向し、「国民の血を流して獲得した」との理由で欧米資本を排除して、後の戦争の遠因を作ったという著者の指摘も、中々興味深く、人物に対する色々な評価があり得ることを思い知らされた。
    高橋是清の自伝など、読みたくなる本が増えるという点でも、読んでよかった一冊。

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著者プロフィール

1955年、兵庫県西宮市生まれ。作家・コラムニスト。関西学院大学経済学部卒業後、石川島播磨重工業入社。その後、日興証券に入社し、ニューヨーク駐在員・国内外の大手証券会社幹部を経て、2006年にヘッジファンドを設立。著書に『日露戦争、資金調達の戦い 高橋是清と欧米バンカーたち』『金融の世界史 バブルと戦争と株式市場』(ともに新潮選書)。

「2020年 『日本人のための第一次世界大戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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